3.舞踏会
公爵家主催の夜会。
あたしはもちろん外待ち
まあ、いいけど勝手に忍ぶからさ
口煩いオッ・・・ウィリアム氏もいないしぃ~。にひひ、
腹が立つのはウィリアム氏は一応あれでも貴族だから、お嬢様の護衛として一緒に会場に入っていることだ。
ほんとムカつく
館の中ではまたお嬢様囲まれてるんだろうな
これじゃあ女子のお友達も出来ないなぁ。女の子とお茶会、出来る位仲良くなるの楽しみに毎回出かけるのになぁ~。
淡い光が窓から漏れる
月光と相まって儚い風情の外庭
豪華な馬車のある一角からは外れてるから
色ごとに夢中のカップル様しかいない
いやあ、元気だね皆。
「ケイン氏もそう思わない?」
「はぁ?」
背後から素っ頓狂な商会ケインの声
「こんなとこまで出張って来るなんて、ケイン氏は仕事熱心だね。今日の売れ筋は媚薬かなぁ」
ため息をついてケインが横に並ぶ。
あたしはずっと姫様のいる場所を見ているけど、ケイン氏が呆れた顔をしているのはわかる
「お前、勘がいいよな、ホント。俺だっていつ分かった?」
「庭の様子に興味なさげに歩いてたから」
「人のことなんか興味無いだろ。普通」
「ウィリアム氏なら『おおっ』って、あたしの目を塞ぐかな」
「塞いでやろうか?」
にやついたのすらわかる
「そこは、耳じゃね?と、つっこむ所」
あ~はいはいとぞんざいに返事される
ふいに、明かりがゆらりと揺れて、次の瞬間
『きゃああ~!』
部屋から悲鳴が複数届いた
「何だ?・・って、山猿、どこ行った!」
会場は中央の空間を開けて人が息をひそめる様にしていた。
音楽は無い。
数名がその中央に居る。
悲鳴の元凶だろう。
中央、天井の光が不穏に揺れている。ゆらゆら淡い影を落として。
シャンデリアに突き刺さる短剣。
やらかしたか王子様!!
中央のいかにもな空間にいたのは王子と・・・。
どんな出来事があったかは後、聞くとして
(お嬢様!)
意外に早く見つかった
ウィリアム氏が膝をついて抱きかかえているのが、お嬢様ダァアアアアアーーーーーーー!
駆け寄りたいのを我慢。
なぜかお嬢様は事態の起こった中心の一人らしい。
開いた舞踏空間に、王子筆頭婚約者
(王子の婚約者は筆頭。次席、三位、候補との名称の元四人いる。選ばれるのは一人だが、予備は必要だからなぁ。)
とりあえず。今、王子と共にいるのは、筆頭の人だ。彼女は茫然自失で立ち尽くしている
短剣は多分王子と令嬢の間に立つ(将来の)近衛騎士殿の物だろう。鞘だけ腰に残っているから。
ついでに、王子も走る前みたいな体勢で固まっている
推理1
令嬢貧血
騎士酔っぱらって短剣飛ばす
王子なんか身構えてるから突っ込み待ち
家のお嬢様びっくりして転倒、庇うウィリアム氏
推理2
モテモテお嬢様に嫉妬した令嬢、お嬢様に襲い掛かる
王子助けようとしたが間に合わず
騎士君。剣を抜いちゃう?
ウィリアム氏転んでるお嬢様確保
何で剣が天井シャンデリア刺さるの?
ガラスが飛び散って危ないなあ、ああ!
ウイリアム氏が降りかからないよう庇ってるね。
後で褒めて上げよう
推理は置いといて、
今日のホストが表れて、王子に耳打ちする
王子が項垂れる
(将来の)近衛騎士が声をかけようとして、逆に固まる
王子退場
急いで追う(将来の)近衛騎士様。何故か距離を置いて居るわけで。
(心の距離あり)
令嬢のご友人らしき方が彼女の肩を抱いて、また退場
?
泣き崩れていらっしゃる姿がチラと見えた。
目がいいんだあたしは。
そっと話しかけるウィリアム氏にコクコク頷くお嬢様。
立ち上がろうとして、へにゃっと崩れる。・・・・腰ぬけてら。
おや?ウィリアム氏機転がきくぞ!
お嬢様をお姫様のように横抱きに担いで颯爽と退場だ。
後で話を聞こ~っと。
うわ、やべっ!ウイリアム氏に見つかった。
さっさとトンずらするでござる。