表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

騎士氏

残酷描写あり。サクッと人がやられています。注意。

伯爵は軍人で北方の将軍をしていた。

争いに一応の決着がつき、軍から離れ私邸に戻る際私兵を許されたのは将軍一人だった。


未だに北方の彼の国は将軍に恨みを持っている。

残党とはいえ、侮ることは出来ない。


そんな将軍の王都の屋敷に一人の子供。


血みどろの子供はお嬢様によって助けられた。


というか、怪しい。


子供とはいえ強固な守りの中をどうやって?

その時居合わせた兵士に聞く


いつの間にかそこに居た、といった。


とにかく。

様子を見る。

上官の意志も同じ。


子供はお嬢様に懐いた。お嬢様は誰もが認める美少女で、性格も優しい方だ。だから子供が慕うのは当然。無邪気に見えた子供は、ゆくゆくは屋敷で雇う事になるのだろうと、俺としてはため息がでた。

厄介事は勘弁願いたい。


子供を拾って数日後。

お嬢様が王立の図書館に行くため、馬車に乗り外に出た、その瞬間に狙われた。

暴漢数名。


護衛は俺と後一人だったが、奴らは人数だけを見て襲ったんだろう。二人とも剣は師範級だと自負している。直ぐに片が付く。


が、簡単にかたが付きそうで、油断した。

一人が馬車の扉に向かう・・・。死角に入ってしまう。

急いで向かうも、その前に悲鳴が・・・。


「ぎゃあぁあぁ!」


ガッッ!という木を裂く音と一緒に悲鳴。

切り捨て取り押さえた男らをもう一人に任せ、馬車の正面に駆け付ける。


黒尽くめで、眼だけ出した男の頭部に取り付く『子供』が見えた。


後ろ向きに受け身もなく倒れた男。

顔を覗き込む『子供』の表情は見えない。


ただ、その男の頭からは大量の血が流れていた。

ふと、この現状を見せる訳にはいかないと扉をみると、取っ手に男のモノだろう指が短剣で縫い付けられていた。

おかげで扉は壊れ、開かなそうで・・・なにより?

ちょっと気が遠くなりそうだ。子供がもう一本短剣を持っていたらしい。男に刺さっている。

どことは言うまい。


ひゅっと『子供』が立ち上がった、すぅと伸びた背筋。

扉を背に剣を構える。

子供はお嬢様のお見送りをすると言い、横手門に現れたその姿のままだ。

お嬢様が「まだ休んでいていいのよ」と言い、子供は使用人に任せた筈だった。


病み上がりで顔色も悪く、動くのも億劫そうだったはずだが。

綿の白いすとんとしたワンピースは赤く染まっている。

細すぎる手足、汚れた風貌ゆえ、孤児だと思われていたのだが。


・・・返り血が少ない。


子供に敵意があるかどうか判断しなければならない。子供と侮ればやられる事だってある。

 だらんと降ろした四肢は緊張も無ければ弛緩し過ぎてもいない。

目は虚ろにも思えるが、油断なく周りを観察しているようにも見える。


なんだこいつは?


その枯れかけの葉の様な緑から赤茶色のグラデーションのある目は、表情を映さない。

「お、っさん?」

きょと、と壊れた人形みたいに首を傾げた子供。

「ウィル!終わったか!」

「待て!」

子供から目を放さず返事する。

声の調子でヤツには解っただろう。用心して顔を見せる筈だ。


とっっ・・・。子供がふらりと一歩を踏み出す。


剣を構えなおす。子供なんか斬りたくはない。


ぺしゃっと。

「おいっ!」

つぶれた蛙とはこのことか。

子供は俯けて倒れた。

背中の傷が開いて赤い血が服に滲み始めていた。

「馬鹿かお前はっ!」

警戒を忘れて叫んだ。


それから、お嬢様をもう一人の護衛『シン』に頼んで、軽すぎる子供を運んだ。かろうじて心音で生きてると判るが、紙みたいな軽さだった。

屋敷にて治療師を呼んで貰う。

お嬢様は結局外出せず、シンが連れ帰り、死体を見たシンは「やりすぎだ」と渋い顔をする。俺がやったと思ったらしい。違うとは言わなかった。

これは伯爵にしか言わなかった。

言ったら、伯爵直々に子供の『教育係』に任命されてしまった。


不覚。


子供はお嬢様が〈セニア〉と名付けてお嬢様専属の侍女とした。


補足※反対はしたんだが、伯爵はお嬢様に甘い。子供もあざとく子供らしさを装ってまんまと伯爵に自分を実際より危険でないと思わせた。アレを直に見ていない伯爵には子供の危険さはいまいち通じなかったかもしれない。いや、知ってて良い護衛になると傍に置いたんじゃないかと後で思った。



「だから、守るなら殺すな」

「?」

「お前はお嬢様を安全な所に誘導するぐらいでいい。」

こくこく頷く。

「剣は・・・。持つなら気付かれるな。」

「おっす。」

「とにかく流血するな。」

「力、無い。一撃必殺!」

「やめろ。」

「解った!毒を塗 」

「違う!」

無口で大人しいのだと思っていた子供は、過激で動くと手におえない奴だった。


オジサンと子供のほのぼの風景が好き。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ