聖なる夜には
時期外れのクリスマスのおはなしです。
クリスマス、あなたは誰と過ごしましたか?
クリスマスになると町が騒がしくなります。あっちでざわざわ、こっちでざわざわ。
みんな何ををしているんでしょうか?気になりますよね?じゃあ、聞いてみましょうか。
おっと、あそこにいるのは男の子と女の子です。クリスマスの夜に、何をしているんでしょう?
「何をしているの?」と聞くと、男の子は「クリスマスケーキを買いに来たんだ。妹と一緒に」と答えました。
「だけど……」と女の子――男の子の妹は男の子の言葉続けて、「どこにもクリスマスケーキが売ってないんだの。お母さんに『買ってきてあげる!』って言ったのに……」悲しそうな顔でこう答えました。
でも、ぐるっと周りを見渡すとケーキは沢山売っていました。このことを男の子と女の子に教えてあげました。
でも、男の子はううん、と首を振って「お金がね、足りないんだ。買いたいけどお金が足りないから買えないんだ」と言いました。
かわいそうだな、と思ったので男の子と女の子と一緒にクリスマスケーキを買いに行って足りなかった分のお金は代わりに払ってあげました。
男の子と女の子は「「ありがとう!お兄ちゃん!」」と言ってとても喜んでいました。
男の子と女の子と別れた後は他の人に何をしているのか聞きに行きましょう。
おや?クリスマスツリーの下にいるのは女の人がぽつりと1人で立っています。何をしているのでしょうか?
女の人に「ここで何をしているのですか?」と聞くと、「彼氏を待っているの。これから、デートに行くんだ」と可愛らしい笑顔ではにかみながら答えました。
話を聞くと集合時間は夜の7時なんだって。だけどデートが楽しみすぎて15分も早く来ちゃたらしい。
女の人は、クリスマスが誕生日で、今日は誕生日パーティーも合わせたデートなんだそう。彼氏さんとは付き合い始めて今日で、なんと2年目なんだって。だから、今日は今まで以上に豪華なデートにするらしい。
彼氏さんとはあまり会わないから思う存分、遊んで、楽しんでから帰るんだって。
「結婚して、一緒に住んだらいいのに」って言うとまだ彼氏さんのご両親に「彼氏さんと結婚させて下さい」ってお願いしていないからまだ結婚はしないんだって。
だけど、彼氏さんと話をして「そろそろ、結婚しようか」って言われたから、あと2,3ヶ月したら結婚するらしい。ご両親に話をして「いいよ」と言われたらすぐに結婚するんだって。
「おめでとう」って心から祝福したら「あ、ありがとう」と照れながら答えました。
そんなこんなであっという間に時間が過ぎて彼氏さんがやって来たので「ばいばい」と手を振り女の人と別れました。
女の人と別れた後は……ってあれ?あんなところにトナカイがそりを引っ張っているよ?
サンタさんかな?何て思ってそりの中を見てみると、あれれ?誰もいないな。
何でだろう、何かあったのかなと思って、トナカイに話を聞くと「ついさっき、クリスマスプレゼントを配りに行ったんだけどまだ帰ってこない」らしい。
どこに行ったんだろう?と、トナカイと一緒に探していると、サンタさんはなぜか屋根の上に立っていた。
「何をしているの?」とサンタさんに聞くと、
「子供たちがまだ寝てないからプレゼントを靴下に入れらないんじゃ」
と悲しそうな声でそう言いました。
僕にはサンタさんを助ける方法が1つだけあります。
でもそれは使ってはいけないと言われているものなんだ。
でも、サンタさんは困っている。
困っている人は助けなきゃ。
だから、決めました。
魔法を使うって。
腕をひょいと振り上げて
「《広範囲化》《威力増幅》 睡眠魔法『ザ・ミスト・オブ・スリープ』」
と唱えた。
*《広範囲化》……魔法の効果範囲を広くする。
*《威力増幅》……魔法の威力を強くする。
この魔法は人を眠らせる魔法で始めに言った補助魔法で世界中の人たちを眠らせるようになったんだ。
これでサンタさんも靴下の中にプレゼントをいれられるね……ってサンタさんまで寝ちゃったみたいだ。
これじゃクリスマスなのにプレゼントがない、何てことになっちゃうから
僕がやろう
《12月26日》
zzzzzと寝ているサンタさんとトナカイの鼻風船がぱんっ!という威勢のいい音をたてて割れた。
この音でサンタさんもトナカイも起きた。
「ま、眩しい…って朝じゃからか。そういえば昨日、子供たちがまだ起きてるからプレゼントが置けなかった……ってプレゼントを配ってない!!どこじゃ?どこじゃ?プレゼントは?……あれ?ない?」
「僕が全部配っておいたよ」
「そうか…ありがとう。でもあれは世界中の子供たちのプレゼントだったはず。サンタのなかでも熟練のサンタしか配れないような量だったはずじゃ。それを全部配ったのか?」
「うん。全部配ったよ」
「ありがとう…!この恩は必ず返す!ところであなたの名前は?」
「うーん……そうだな。じゃあ、魔法使いで。」
そういい残して僕は指をパチンと鳴らし、帰っていった。
帰った後、両親にこっぴどく怒られたのはご愛嬌ということで……。
え?僕に会いたいって?
君の町にも僕が現れるかもしれないね。
君がいい子にしていたら……だけどね?
じゃあここらへんで、君たちがいい子にしていて僕と会えることができると信じてね?
《後日談》
わし、サンタ・クロースは困っておる。
理由は12月25日に出会ったあの魔法使いを名乗る少年のことじゃ。
早くお礼を言いたいのじゃが、いかんせんどこにいるかわからない人を探すのは不可能に近いことなのじゃ。
それにしても彼、あのような若さで魔法を使えるなんて…。
普通は何十年も練習してやっとできるような感じでとても難しいんじゃが。
すごい。
この言葉しか出てこんのう。
どうすればあのような若さで魔法を使えるようになるんじゃろうか。
ん?魔法?
魔法というのわしの記憶が正しければ――マリエ一族、そうマリエ一族しか使えなかったはずじゃ。
ということは少年はマリエ一族である可能性が高いということじゃ。
そうと分かれば話は早い。
トナカイにマリエ一族が住んでいると言われているマムロット山脈まで連れていってもらい、そこで少年にお礼を言おう。
「やぁい、トナカイさんや」と言ってチリンチリンとベルを鳴らすとわしのトナカイであるローレンスがやって来た。
「トナカイさんや、マムロット山脈まで連れていってくれんかね?あの夜の少年にお礼を言いたいのじゃ」
「分かったよ、じゃあ早く背中にのって?」
トナカイに頼むと快く了承してくれた。
え?今日はそりじゃないのかって?
今日はクリスマスではないからそりは引かないんじゃ。
トナカイがそりを引くのはクリスマスだけなんじゃよ。
それ以外は見つからないようにトナカイの背中に乗っているんじゃ。
トナカイに「ありがとう」とお礼を言ってトナカイの背中に乗った。
うぅむ。相変わらず立派な角があるのう。
いつみても惚れ惚れするほどかっこいいのう。
「じゃあ、行くよ」
そうトナカイに言われてから数十分。もうマムロット山脈に着いていた。
トナカイから降りて、マリエ族の長に挨拶をして、少年を探してもらった。
「あぁ、彼なら今この家にいますよ。クリスマスの日にサンタさんを助けた、と喜んでいましたからね」
「そうなんじゃ。とてもありがたかったのにお礼の1つも言わせてくれなかったからお礼を言いに来たのじゃ。」
「でも、彼は魔法を使ってはいけないという掟を破ったから今、謹慎中なんですよ。あぁ、そうか人助けのために魔法を使ったのは掟に反していないか。じゃあ、ちょっと待っていて下さい。今呼んできますので」
そういい残してマリエ族の長は家の中に入っていった。
少しすると、わしを助けてくれた少年を連れて長はやって来た。
彼を見てハッと立ち上がりすぐに
「少年!クリスマスのとき、ありがとう!」
と言った。
やっと言えたのじゃ。これで悔いはないのじゃ。良かった。
本当にありがとう、少年よ。
お読みいただきありがとうございました。