第一章プロローグ 終焉の世界
―――ただ僕たちは逃げていた。すぐそこに迫る追っ手から。ただひとりの少女を守ろうと。
目的の「結界」めがけて一直線に。あと少し、あと少し。焦る脳を御するようにそう呟いた。
僕たちが向かっている「結界」とは、簡単に言うと世界の中枢を担う重要機関だ。これがなくなると世界、いや宇宙が無くなるレベルの。そんな大事な結界に近づく僕たちは危険人物、そう認識されたようだ。
まあ、実際そうには違いないのだけれども。
そうこうしているうちに結界は僕たちの目の前に姿を現した。僕たちは目を疑った。
なぜなら、結界と呼ばれるものは・・・・・・そこにはもう無かったのだから。
結界というものは程のいいバリアみたいなものではない。バリアというよりも大きな、そして強固なる壁、そう形容したほが良いだろう。
だがその結界は自分たちの前からは葬り去られている。自分たちのほかに侵入者がいたのか、もしくは最初からなかったのか・・・。そんな考えを捨て、結界があった地へと足を進める。
するといきなり彼女が
「おかしい。'私'が入ったはずなのになにも起こらない」
あまりに突然だったので一瞬反応が遅れる。その問いかけに何か返そうとしたその瞬間。彼女は肩まで伸ばした綺麗な金色の髪を揺らし結界のあったであろう場所の奥へと駆けていってしまう。
僕はそれを追った。ただひたすらに追った。しかし彼女との距離が、走っても走っても縮まらない。どれだけ走ろうと、どれだけ叫んでも、どれだけ思っても。
彼女への思いが、叫びが、届かない。
何かが起こっているのだろう。頭でわかっていても、感情がその考えを行動に移させない。彼女とどれだけ苦楽をともにしたか。 彼女とどれだけ言葉を交わしたか。彼女とどれだけ窮地を打破してきたか。彼女とどれだけ、どれだけ、どれだけどれだけどれだけどれだけ・・・・・・。
ふいに僕は頭の中が白くなっていくのを感じた。何がきっかけだったのかはわからない。それを考えることさえできない。白くなったその世界が音も無く崩れていくのを僕は見た。思い出の場所が走馬灯のように次々と頭の中を駆け巡る。楽しかった思い出が、苦い思い出が。彼女との思い出が。
「アリス・・・・」
そう言い残して、世界が、宇宙が――崩壊した。
初投稿です。こんな作者ですがどうぞよろしくお願いします。