1話ー魔導師養成所ー
「ギャハハハハハハハハ」
つい先程敵部隊を壊滅させた青年の耳に、耳を塞ぎたくなるようなうっとうしい笑い声が聞こえた。
「ぼ、僕は天才なんだ…ブハ、ギャハハハ」
「う、うるさいぞカイン!」
青年は顔を赤らめ、誰もいないただのビルに向かって叫び返す。端から見ればこれはただの変人だ。しかし残念ながらこの青年は変人ではない。ここは、魔導師養成所内にある訓練施設の中である。そしてこの風景は最新技術を用いて開発されたものであり、訓練を受ける者の脳内に直接情報を送ることにより、全ての感覚を仮想世界に送ることが出来るという世界で一つしかない施設だった。
やがて青年の、視界はぼやけだし、ゆっくりと現実世界へと戻っていく。そこには、髪を金髪に染めてオールバックにし、耳には蛇の目玉で作られたという趣味の悪いピアスをした友人カインがいた。その隣では、メモを走り書きしている、女性の先生がいる。彼女は、今回のテストの採点者だ。そう、これは訓練でありながら、テストでもあるのだ。そして今回テストを受けた青年の名前はアルビス。生まれは由緒正しきおんぼろ家計。髪は黒のストレートで長さは肩辺りまで伸ばしている。身長は165センチ。青色の瞳が特徴だ。
「お待たせしました。採点の方が終わりましたので結果をお知らせします。アルビスの得点は1256点です。養成所内のランキングは1200人中2位です。集団に対しては時空魔法で動きをとめ、転移魔法でワープさせる。素晴らしい考えです。」
「なっ!?」
隣ではカインがアルビスの得点に驚きを隠せず口をあんぐりとあけている。
無理もない、この養成所内でのテストにおいて1000点を超えることなど滅多にないからだ。割合で言えば 500人に1人程度だ。
「ありがとうございます。今後もこの調子で頑張ります。」
「はい、頑張ってくださいね。天才君?」
「すみませんが、そこは余りふれないで頂けたらありがたいのですが…」
またしても顔を赤らめながら、抗議してみる。 「ごめんなさいね天才君。次からは気をつけますね。」
全く気をつけてくれそうには無いと思ったのは僕だけなのだろうか…?