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生徒会


そこから3週間が経ち、

周囲の好奇の目も冷めてきた。

化学部というのが異常な人材で構成されているのと

活動内容が一切非公開な怪し気な部活という認識には変わらないが

噂は所詮噂でしかなく、それ以上何かで囃したてるのに飽きたのだ。


香織には友達という友達は出来なかったが

黒瀬智香は屈託なく香織に接してくれた。

第一印象から活発そうだと感じていたが

陸上部に所属している傍ら兼部で生徒会にも所属する彼女は

本当に活発な少女だった。


性格もサバサバとしており

最初こそ香織に好奇心丸出しだったが

今となっては香織は普通だということに気付きそれもなくなり

ごく自然と1人のクラスメイトとして接してくれた。


そして、すべての原因である

化学部であるがあれから進展はない。

放課後、一応毎日は化学部に顔を出すが

肝心の化学部の扉は閉まっている。

部活に来いという連絡もない。

まさか、廃部になったのでは。

とも思ってしまう始末だ。


校内で千尋や成海に会うことはあったが

2人とも特に声は掛けてこない。

しかし、この2人がこの学校においての異端者である

というのはこの数日でよく理解出来た。

全て智香から聞いた情報だが

どの情報も大げさに感じるところはあるが

学校から特別扱いを受けているのが分かるものだった。

まぁ、それが何故かまでは智香も知らないようだ。


まぁ、ある程度の校則には寛容のある私立高校とは言っても

県内有数の進学校でもあるのは事実で真面目な校風である。

どういった経緯で2人がこの学校に置かれてるなんて香織の知るよしもない。





5月の中旬。

新しい高校生活にも慣れ

迷うことなく校内を移動することも出来るようになった。

昼食を調達するために購買でパンなどの食糧を買い

ぶらぶらと日当たりの良い中庭を横断している途中だった。


「桃地さん?」


目だけ声の方に向けると

眼鏡で短髪の男の人が立っていた。

見覚えがある。どこかで見た顔だ。


「はい、そうです」


「上手そうなの、持ってるよねソレ」


先程買ってきたパンを指差される。

香織は少し躊躇したがそれを差し出した。


「良かったらいりますか?」


「え、いいの?悪いなぁ」


その口ぶりは少しも罪悪感を感じてはおらず

証拠に躊躇いもなくパンを受け取り食べだした。

1つ食べ終わると落ち着いたようにため息を吐き言った。


「ごめんね、お腹減ってたんだけどお金なくって。

 教室に取りに帰ろうにも仕事があってね」


「仕事?」


「そう、俺が誰だか分かる?」


少し考える。

やっぱりどこかで見た顔なのだ。

名前こそ出てこないけど。


「残念、けっこう有名人のつもりなんだけど。

 俺は吉川隆久。生徒会長だよ。

 入学式で新入生の前でスピーチとかもしたんだけど」


「あ、そうでした!

 すみません、思い出せなくて。

 確かに有名人ですね」


「いや、まぁ。

 桃地さんに比べたらあんまりかな」


「え?」


「知ってるよ、化学部なんでしょ」


「でも、活動とかしてないし・・。

 それに私は、違います」


「違う?」



「依田先輩とか藤本先輩と違って

 ごく一般的な普通の生徒です」


「そうだね、確かに」


隆久はあっさりと認める。

それは2人がどれくらい異常なのか

知ってるかのような口ぶりにも聞こえた。


「あの、2人とはお知り合いですか?」


「まぁ、そうだよね。

 藤本くんは学年が1つ下だからアレだけど

 成海は僕と同じ3年生で学年も同じだし。

 あと、なによりも・・」


「なによりも?」


「僕は生徒会だから」


「え、どういう意味・・」


しかし、隆久はそれには答えず

薄く笑みを浮かべた。


「パンご馳走様でした。

 いつかこのお返しはするつもりだよ。

 じゃあ、俺は仕事があるからね」


そう言い残すと

颯爽と香織の前から姿を消した。

嵐が去った後のように香織が茫然としていると

二次災害と呼べる声が後ろから聞こえた。


「おい、地味女」


千尋だった。

いつからそこにいたのか、と問いただそうとすると

それを言わせないためか凄みのある声で言った。


「今日、化学部だから。

 それ伝えに来た。それだけ」


香織が聞いたのを確認すると

千尋は早々に背を向けた。


「ちょっと・・!」


聞きたいことがたくさんある。

呼びとめようと声を掛けた。


「パンあげたんなら昼飯ねーだろ、馬鹿。

 早く買いに戻らないと購買閉まるぜ」


「え?」


本当にいつからいたんだ?

香織は焦って購買に走った。


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