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そこからは早かった。

成海に促されるまま入部届けを書き

担任の先生に提出させられた。


入部届けを受け取ったとき

担任の先生はあからさまに不審そうな顔をした。

「正気か、桃地」とも尋ねれられた。




帰り道。

駅に向かう途中で千尋に遭った。

遭った、というより完全に待ち伏せされていた。


周りからの視線が痛い。それもそうだ。

千尋は真面目な校風が取り柄の学校なのに

明らかに文字通りのヤンキーだからだ。

なんで、こんなのが停学にもならずにいれるのか。

香織は不思議でたまらない。


「てめーのせいで先輩に殺されかけた」


第一声はそれだった。

それに関して非があるのは千尋だが

そんなことを返せるわけがなかった。


「ごめんなさい」


「・・おい、地味女」


凄みのある声で顔を上げる。

それから自分が無意識に顔を下げてたのに気付いた。

すぐ傍に千尋の顔があった。慌てて逸らす。

千尋が手を上げるのが気配で分かった。

叩かれる、と目を瞑った。


「悪いな、巻き込んで」


わしわしと頭を撫でられた。犬に対する接し方と似てる。

驚いて再び顔を上げると、すでに千尋は香織に背を向けて歩きだしていた。

何なんだ、あの人は。




次の朝、教室に行くと、昨日は空気のような存在だった香織が

クラス中の視線を独占した。


意味は分からないが、みんな香織を指してヒソヒソと話している。

なんとなく居づらくて香織は教室を出た。

私、何かしただろうか。と胸に手を当てるが、悪いことをしたような心当たりはない。


「あれ、香織ちゃん?」


ふと声の方に目をやると成海だった。

どうしたの、と香織の目線に背をかがめてきた。

クラスの事情を拙い言葉で説明すると成海は「ふーん」と棒口調で相槌を打った。


「それ、部活に入ったのがバレたんだね」


「え」


「どっからバレたんだろうね。 

 吉川とかかな、アイツなら言いかねない」


「どういうこと・・・」


「安心してね、部活に入部して悪いことなんて

 1つもないでしょう?

 みんな、好奇心でいっぱいなんだよ」


成海は、よしよしと香織の頭を撫でる。

昨日から撫でられっぱなしだ。


「あの、化学部って好奇心の対象になるんですか」


その言葉に成海は盛大に吹き出した。

腹を抱えるように笑っている。


「ごめんね、まだ説明出来ないんだよ。

 部活については香織ちゃんが【正式】な部員になったら

 ちゃんと伝えるつもり。

 だから、それまで待っといてもらえる?」


そこで急激に不安になった。

自分は得体の知れない部活に入ってしまったのかと。

なんで、説明してもらないのか?

正式な部員とはどういうことか?


成海の口から告げられなかった部活の噂は

皮肉にも初めてクラスメイトと話す種となった。




「桃地さん、部活入ったんだって?」


勝気そうな顔をした短髪の女の子は黒瀬智香と名乗った。

その目は朝に感じた好奇心そのものだった。


「・・・そう」


なんだか自分がイケないことをしたような気分になる。

部活に入ったといってもその部活の趣旨は知らない。

活動もまだ行っていないし、部長に正式な部員とも認められてない。


「部長の依田先輩っているじゃん。

 どんな感じなわけ?

 噂ではさエグい性格って聞いてるよ」


否定出来ない。

香織は素直に頷く。


「あと、副部長の藤本って有名なヤンキーで

 いろいろと問題起こしてヤバいって!」


問題の1つや2つ

彼なら起こしてもおかしくない。

香織は素直に頷く。


「よくそんな部活入ろうと思ったわよね!

 実は桃地さんもそういう系の人なんじゃないって

 みんなそんな思いでいっぱいなのよ」


「あ、それで・・・」


香織は自分が注目を浴びた理由が分かり

同時に大変な誤解を受けているのに泣きそうになる。


「で、どういう部活なわけ?!」


それは香織が1番知りたい。




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