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麗しき死神―始まり―

残酷な程綺麗だった。


死を狩る神様はとても残酷で美しかった。


漆黒の闇のような黒く美しい髪の毛、闇夜のようにくらい青。

闇の全てを支配しているような麗しい死神が舞い降りた。


「ひっ」

「・・・」


ビチャっと地面に何かが落ちるような音が聞こえたと同時に悲鳴が聞こえる。


ゆっくりと振り返った闇はとても悲しそうな暗い青色の瞳が腰が抜けて動けない少女を見る。


「君・・・この子の何?」


ゆっくりと口を開く闇の声は冷たく感情の篭っていないロボットのような声。

だが、女子だと言う事、まだ幼い事が分かる。


「こ・・・恋人同士」


少女は今にも泣きそうな声でゆっくりと答える。


「・・・恋人」


闇を支配する少女の瞳は冷たく見下す。


「!!?」


泣き出しそうな少女の首を掴む。


「そう・・・だったら今から君も殺してあげる」

「い・・・や・・・・助」


闇夜に真っ赤な血が舞う。




「っ!!!!?」


未夜は目を見開く。


「夢・・・?」


体中汗でベタベタだ。

汗で顔にくっついている髪の毛を乱暴に払う。


「でも・・・」


手には少女の首を絞めた感覚がハッキリと残っている。


「未夜?」


ガチャリと扉が開く音が聞こえた。


「未那斗兄さん」


心配そうな顔でこちらを見ている。


「どうしたの?」

「時間になっても降りてこないからどうしたのかなって」


時計を見ると10時を回っていた。

未夜はいつも8時に起きて朝食の支度を手伝うのが日課になっていた。


「土曜日だからって寝すぎたなあ・・・」


未夜はあははと笑う。


「何か怖い夢でも見たの?」


また心を読まれた。

未夜は諦めて頷く。


「とっても怖い夢だよ」


未夜は未那斗に抱きつく。


「!?」


優しい顔つきで未夜の頭を撫でる。


(それは予知夢ってやつだろうな・・・)


未夜の忌み子として授かった力は、死神の力。

夢で誰かが死ぬ夢を見たり、殺す夢を見たり。


死神の力の場合は厄介で、成長する事に力は大きくなり、自分自身が死神になる。

それは、人を殺すと言う事。


「・・・私はいつか誰かを殺してしまうんだろうか」


ポツリと呟く。

自分の力の事だけはちゃんと知っているようだ。

だからこそ辛いのだろう。


何故消えたのが自分じゃなかったのか、忌み子として育てられ、兄には罵倒され続けて。

耐え切れなくなってしまうのではないのかと未那斗は心配していた。


未那斗は最近兄を失ったばかりだが、未夜は幼い時に失っている。

心に空いた大きな穴は誰にも埋められないだろう。


(僕でもきっと無理だ)


未那斗は胸が締め付けられたかのように苦しくなる。


「・・・今日は何処かに遊びに行こうか」

「遊びに?」


未那斗は笑顔で問いかける。


「でも・・・」


未夜は軽く監禁状態にあった為、外に出るのを怖がる。

今もきっと、いない兄の存在にビクついているのだろう。


「大丈夫。守が来れない場所に行こう?」

「兄さんが来れない・・・場所?」


そうして二人は出かけることになった。




「・・・って此処は・・・」


目の前に広がるのは未那斗の父親が経営しているリゾートホテル。


「確かに此処は兄さんが来れるような場所では無いけど・・・」


未那斗は忌み子達の良き理解者である為、守のように忌み子を嫌う者を絶対に出入りさせない。

だから連れて来たのだろう。


「あら?未夜ちゃんじゃない」

「・・・?あ、(れい)さん」


二人の前にピタリと立ち止まり女性がこちらを見ている。


彼女は綾瀬零。

未那斗と未影の母で、未夜の良き理解者。

守の存在をあまり良いとは思ってはいないようだ。


「みーくんったら久しぶりに来たと思えば未夜ちゃんなんか連れてきちゃって・・・」

「その呼び方やめてくれないか?」


零と未那斗が並ぶと凄く似ている。


(未那斗兄さんが女の子だったらこんな感じなんだろうな~)


親子の会話にクスリと笑う。


「む」

「なぁに変な事考えてるの~?」

「別に・・」


頬を軽く引っ張られる。


『死の匂いがする』

「!!?」


ドクンと何かが波打つ。

体の奥底から何か暗いモノが一瞬溢れ出た。


『早くワタシを解放しておくれ』

(もしかして・・・)


すぐに理解する。

自分に問いかけて来るのは体の奥に眠る死神の力。


「未夜ちゃん?・・・こらみーくん!女の子の顔引っ張っちゃダメよ」

「え・・・はい」


流石に母親には勝てないようで。


「あ・・・えと・・・今日はお仕事なの?」

「あ?私??そう、唯世(ただせ)さんに呼ばれちゃって」


零はうふふと笑う。

未だにラブラブなのは凄い事だと思う。


「父さんに?」

「えぇ。なんでも急いでるらしいから・・・あ、急いでるんだった。じゃあね~」


思い出したかのように走り去る。


「相変わらず不思議系な人だね」

「・・・そうだね」


二人は小さくなっていく零の背中を見ていた。


『早く・・・出せ!ワタシを出せぇぇぇええええええ』

「うぅ!?」


蓋が開いたかのように急にドバっと何かが出てくる。


「させないよ」

『!?』


この事を知っていたかのように未那斗は何かを未夜の首にはめる。


『小賢しい小僧め・・・覚えておれ・・・』

「う・・・ん?苦しくない」


チリンと小さな音が聞こえる。


「首輪?」

「うん、でもそれはただの首輪じゃないよ」

「?」

「僕は手首に付けているんだけど、力が暴走しないようにする制御装置みたいな物なんだ」

「へぇ・・・」

「これを付けていれば暴走はしないけど、精神が衰弱してしまうと効果なくなるから気をつけてね?」

「はーい」


二人はホテルの中へと入っていく。


「此処に来るとは・・・」


黒いフードを深く被った青年は舌打ちすると何処かへ消える。

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