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秘密  作者:
3/7

秘蜜

甘い甘い誘惑。

急に変化した貴方は私に囁く。


――――俺のモノになってくれるのなら教えてやる


どうすれば良いの?

未夜は両親に、控えめに親戚の家に住むと伝えた。

両親は笑顔で了承してくれた。


怒られるかと思っていた未夜は笑顔で実家を後にする。


影が見ている事も知らずに・・・。




「さぁ、上がって」

「お邪魔しまーす・・・」


やや控えめに家へと入る。


綾瀬家の分家とは言え、流石は貴族。

それなりに高級な物が取り揃えられている。


「一人暮らし・・・なの?」


未夜は一歩後ろに立っている未那斗に尋ねる。

メイドの一人や二人はいると思っていたので驚く。


「そうだよ。メイドとかいなくても家事とか出来るし・・・何より一人になる時間と場所が欲しかったから」

「え・・・じゃあ私いたら邪魔にならない?」


未那斗の言葉に未夜は慌てる。


「大丈夫だよ。未夜には理解者が必要だし、あんな危ない奴がいる所になんて置いておけないよ」

「???」


未那斗の言葉に何か引っかかる物があったが、未那斗の笑顔を見たら忘れてしまった。


「未夜の部屋はどうしようか・・・」


未那斗はうーんと考える。

きっと空き部屋が沢山あるのだろう。


「どこでも良いよ?」

「僕の部屋?」

「へ!?」


未那斗の意外な言葉にドキっとする。

不覚にも顔も熱を帯びて熱い。


「だって・・・何処でも良いんでしょ?」

「た・・・確かにそう言ったけど・・・未那斗兄さんと同じ部屋は・・・」


ジリジリと迫ってくる未那斗からゆっくりと距離を取る未夜。


(だって・・・未那斗兄さんと同じ部屋だなんて・・・恥ずかしいよ!!)

「へえ・・・僕と同じ部屋だと恥ずかしいんだ?」

「!!?ま・・・また心読んだの!?」


未夜は真っ赤になった顔で未那斗を睨む。

未那斗は睨まれているのに笑っている。


「そんな顔で睨まれても怖くなんてないよ?」

「う・・・うるさい!」


恥ずかしさのあまり、未夜は未那斗に殴りかかる。

女子高生の未夜の力では敵うはずもなく、簡単に取り押さえられる。


「そんな華奢な体で僕なんかに敵うわけないでしょ~?」

「む・・・」


未那は悔しくて俯く。


「こんな事・・・守とは出来ないでしょ?」

「え・・・?」


急に兄である守の名を出され体が震える。


「あ・・・ごめん」

「だ・・・大丈夫だよ」


そう、守とは兄妹みたいな絡みをした事が無い。

自分のような忌み子とはそんな事するはずが無いのだ。

血の繋がった妹を『化物』と平気で言うような男だ。


「いい部屋あるから、そこを未夜の部屋にしよう」


重くなった空気を壊したのは未那斗の明るく優しい声。


「いい部屋?」

「そう、いい部屋」


こっちだよと優しく手を引っ張ってくれる。


(未那斗兄さんが本当の兄だったら楽しかったのかな・・・)


未夜は少し寂しそうな顔をする。


「・・・」


未那斗は悲しい未夜の心の声を聞いて少し寂しくなった。


(ごめんね、未夜。君が思っているほど優しくないんだ)


未那斗も寂しそうな顔をする。


「ほら、ここだよ」


ガチャと白色の扉を開ける。


「ここって!」


見覚えのある風景が目の前に広がる。


「そう、ここは未夜が小さい時に遊んでた部屋だよ」

「あの時のままなんだね?」

「まあ・・・僕だけじゃ片付けられないしね」

「そうだよね」


未夜の部屋にすると言っている部屋は未夜が双子の妹を失い、心を閉ざしていた時に使用していた部屋だ。

未那斗は心を読める為、未夜をカウンセリングみたいな事もしていた。

その時に使用していた部屋だ。


「僕の部屋は目の前だし何かあったらすぐ駆けつけられる・・・僕にとっても未夜にとっても都合が良いと思って」


いくら忌み子と言っても、人間では無い力を宿しているので狙われやすい。

しかも未夜は女であり、かなり貴重なのだ。


「そうだね・・・」


いつも未夜の事を思ってくれている未那斗に笑みが溢れる。


「それじゃぁ・・・夕御飯作るとき呼ぶね?」

「うん・・・分かった。それまで片付けしとくね」


ガチャリと扉が閉じられた。


「はぁ・・・僕って最低だなぁ・・・」


未那斗は自分の部屋の扉に寄りかかる。


「そう思うだろ?兄さん」


廊下に幾つか窓があり、そこから入る光によって出来た未那斗の影から人の形が生まれる。

そして未那斗にそっくりな人間が現れる。


《そうだね・・・でも、僕もそうしたと思う》


兄さんと呼ばれた影はそっと未那斗を抱き締める。


《大丈夫だよ。僕がなんとかしてあげる》

「兄さん・・・?」

《あの子の怖い影を黙らせる為のお手伝いをしてあげる》

「・・・有難う」


未那斗はニヤリと笑う。


光里(ひかり)?」


―――どうしたの?


「ううん・・・ただ・・・」


―――兄さんの事?


「うん。このまま黙っていると思う?」


―――きっと黙ってるなんて有り得ないと思う。だって口では未夜を嫌っているけど実際は未夜を愛してるんだもん


「・・・」


未夜は鏡に向かって話しかけている。

鏡には未夜とそっくりな女の子が映っていた。


未夜が闇ならば、鏡に映る少女は光だろうか。


鏡に映る少女は13年前に『神隠し』により消えた双子の妹である。

『神隠し』により消えたはずの妹が鏡に映るようになったと同時に不思議な力が授けられた。


綾瀬光里。

彼女は13年前に突如消えた双子の妹。

鏡に映る彼女は双子の姉である未夜にしか見えていないようだ。


未夜とは正反対で、金髪で太陽のように燃えるような赤色の瞳だ。

その容姿から名前を付けられたと昔誰かが言っていたそうだ。



コンコンコン

控えめなノックの音で未夜は鏡から顔を逸らす。


「はい・・・?」

「そろそろ夕飯作ろうか」

「あ、うん!」


未夜は勢いよく立ち上がると部屋から出る。


―――・・・未夜気をつけて・・・未那斗兄さんも危ない


光里は鏡の向こうを見つめる。


《邪魔はさせないよ?》

―――!!!?どうやって入ってきた!?

《僕と君は同じ。何処にいようと関係無いのさ。少し眠ってもらうよ》

―――やめ・・・


光里は闇に覆われた。


「・・・?」


未夜は何か聞こえたような気がした。

まるで少女の悲鳴のような・・・。


「未夜どうかした?」

「え?ううん。なんでもないよ」


未夜は作り笑いをすると作業に取り掛かる。


(兄さん・・・)


未那斗は唇を三日月に釣り上げている彼の顔を思い浮かべた。






「御馳走様でした!」


未夜は元気よく言う。


「はい、お粗末さまでした」


未那斗も笑顔で言う。


「あ、お風呂沸いてるから入っておいで」

「え?未那斗兄さんが先に入りなよ」

「良いから。レディーファーストだよ」

「え?あ・・・分かった・・・」


未那斗の言葉に僅かに顔を赤らめ風呂場へ向かう。


《いい子だね、未那斗》

「兄さん・・・何をする気なの?」

《秘密・・・だよ》

「・・・」

《大丈夫、取らないから・・・反応にもよるけど》

「兄さん!!?」

《ははっ!冗談だよ》


影は腹を抱えて笑うとスーっと消えていく。


「大丈夫かなぁ・・・」






「ふあ~~~~~!」


風呂場は想像していたよりも広く、豪華。

浴槽は広く、お湯は若干ピンク色で薔薇の花びらが浮いている。


「凄いなぁ・・・流石にこんなお風呂入らないなぁ・・・」


お湯に入っているだけでリラックス出来る。

心が読める分、こういう場所が必要なのだろう。


「心が読める・・・か。私がもし心が読めたら誰の心を読むだろう」


きっと守の心を読むだろう。

本心を覗いてしまうだろう。


「光里が言っている事が本当だとしても・・・心が読めなきゃ信じれないよ」


未夜は口まで湯船に浸かる。


(本当に私を憎んでるようにしか見えない。いつ殺されてもおかしくないよ・・・)


妹として本当に愛してくれているのか不安になる。

光里を信じていないわけではない。

でも、守の言動や行動は未夜をただ不安に押しやるだけだ。


カタン

物音が何処かでした気がする。


「・・・?未那斗兄さん??」


物音がした方に視線を向けると、脱衣所に誰かいるようだ。

この家には未那斗と未夜の二人だけ。

だからいるとしたら未那斗。

自分の家なんだし、いるのは当たり前。

何か取りに来たのだろうか?


「未那斗兄さん・・・?どうしたの?探し物???手伝う?」


ザバン

未夜は湯船から出ようと立ち上がる。


「君は昔から無防備だね」

「!!?」


声は耳元で聞こえる。

声の主は後ろにいる。


危険を察知したかのように、勢いよく振り向く。


「!!?」


大きな水音が風呂場に響く。


「・・・未影(みかげ)兄さん?」


目の前に立っていたのは、5年前に消えた未那斗の双子の兄の未影だ。


彼もまた、光里と同じく『神隠し』にあった人物だ。

でも何故彼が此処にいる?


「影・・・」

「そう。僕は未那斗の影だ」

「未那斗兄さんに吸収された?」

「どうだろうね・・・。僕達はあまりにも似ていたからね磁石のS極とN極のように強く引かれたんだろうね」


未影はケタケタと笑う。


昔からそうだ。

彼は何か面白い事を思いつくとケタケタと嫌味ったらしく笑う。


「似ていれば似ているほど『神隠し』の起こり方は変わる」

「変わる・・・?」

「あまり似ていない双子は『神隠し』にあうと完全に存在が消える。家族にすら忘れられるんだ」

「!?」

「でもね、僕達や君達みたく存在が限りなく近いと・・・忌み子の力に引き寄せられて現れる」

「っ」


未影に顔を引き寄せられる。

抗う余裕が無い。いや作らせようとしない。

恐怖が溢れ出そうなほど力強く押さえつけられる。


「君の力も随分強力なんだねぇ・・・僕が『神隠し』にあう前とまったく変わらない姿で出てこれるんだから」


言ってる意味が良く分からない。


「忌み子はね、『神隠し』にあった片割れを引き出す為の役割をするんだ」

「引き出す?」

「そう。僕達はね、生贄に捧げられると言っても、片割れの生きる糧になるだけなんだ」

「生きる・・・糧?」

「神様とは、君達先祖の生まれ変わりの事」

「うまれ・・・?」

「綾瀬家の先祖は、神だと言われている」

「・・・」

「綾瀬家が人類の始まり」


そんな話聞いた事も無い。


「デタラメだと思いたかったら思えばいい。そのうち分かるよ」


きっと私が知りたい事の一部なんだと思う。

でも、良く分からない。

綾瀬家が始まり?神様?


「それにしても・・・。未夜はそこらの綾瀬の人間より美人だね」

「!?」


浴槽は広い。

広い分、深い部分と浅い部分がある。

その浅い部分に吹っ飛ばされる。


「な・・・何を」

「未那斗は本当にヘタレだし・・・僕が代わりに」

「代わり・・・っ!?」


未夜は未影に耳を囓られる。


「な・・・」


突然の事過ぎて口をパクパクさせる。


「どうしたの?顔真っ赤だよ?」

「何するの・・・!」


誰にもされたことが無い事をされて睨む。


「何それ・・・。威嚇してるつもり?それ逆効果」

「ぎゃ・・・いっ」


両肩を掴まれたと思うと倒される。

いくら水があるとは言え、浅い分、痛い。


「その腕邪魔だなぁ・・・」


未影は未夜に馬乗りになり、見下ろす。


「どけてよ・・・」

「僕に反抗出来ると思ってるの?」

「!?」


急に黒い手のようなモノが両腕を掴む。


「影!?」

「君の影だよ」

「やめ・・・」


物凄い力で引っ張られる。

このままでは胸が露わになってしまう。


「兄さん!」

「未那斗兄さん!?」

《あーあ・・・もう少しだったのにな》


未影は残念そうな顔をすると未那斗の影へと戻る。


「・・・」


今までの出来事がまるで夢だったかのように静まる。


「未那斗兄さん・・・」


今まで経験した事が無い事をされ、怖かったのか大粒の涙を零す。


「ごめん!」

「に・・・兄さん?」

「僕油断してたんだ・・・」

「え?」

「まさか兄さんが勝手に僕の力を使うとは思ってなくて・・・」

「・・・」

「それに、未夜を襲うとは思ってなくて・・・」


未那斗は強く未夜を抱き締める。


「大丈夫だよ・・・」


きっとこれは夢だ。

そう思うことにした。



のだが・・・。


「未那斗・・・兄さん・・・?」

「俺の言う事聞かないと教えないよ?」


夜、怖くて寝れず未那斗の部屋を訪ねた未夜なのだが、未那斗は何かの枷が外れたかのように豹変していた。

優しい彼はいなくて、強引な腹黒い彼がいた。


何事かと理解出来ぬまま手を拘束された。


「兄さんってば」

「・・・」

「ちょっと・・・!?」


耳を齧られたかと思うと、首筋にキスをされる。


「やめてよ・・・!」


手首をネクタイで拘束されている為うまく抵抗できない。


「うるさい」

「!?」


不機嫌そうな顔が見えたと思うと、口が何かで塞がれる。

それが口付けだと気づくのは少し後。


「に・・・さ・・・」


喋ろうと口を僅かに開くとヌルリと何かが入ってくる。

僅かに水音が聞こえる。

何が起こっているのかまったく分からない。

いや、状況を把握する為の思考は今されている行為で止まっている。


「くるし・・・」

「俺に任せてくれれば良い」

「え・・・」


やっと解放されたかと思うと、未那斗の手は未夜の寝巻きのボタンに触れる。


「!!?」


一個一個外すのではなく、無理やり外した。

その為ボタンはあちこちに飛んでいく。


「な・・・何してるの!?」

「脱がしてる」

「そうじゃなくて!!!」

「何?」

「本当に兄さんなの?」

「俺は未那斗であって、未影兄さんじゃ無い」


未那斗は露わになった肌に口付けをしていく。


「手加減するつもり無いから」

「は―――・・・?」



そこから記憶は無い。

ただ、そこにあったのは、体中に無数のキスマーク。

まだ男女がするあの行為だけはしてないと分かったが、あちこち赤い。


「・・・兄さんって変態なんだ・・・」


少しショックを受ける。

違う方の秘密を知ったような気がする。


鏡越しに光里はヤレヤレと呆れている。

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