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秘密  作者:
2/7

シリタイコト、オシエテクレマスカ?

幼かったあの頃とは違うのです


どうか・・・どうか私に真実を・・・秘密を教えて下さい


知りたいのです。どうして消えてしまったのか、私が残された理由を



ドウカ・・・

――・・・未夜(みや)


「う・・・ん」


幼い声で優しく名を呼ばれ反射的に返事をする。


――そろそろ起きなくて良いの?


「まだ・・・寝てたい・・・」


クスリと笑い声が聞こえる。


――ダメだよ。起きなきゃ・・・ほら来たよ大きな闇が


「!!!?」


未夜と呼ばれた少女は勢いよく起きる。


「ふむ・・・。俺が起こす前に起きた・・・か」

「・・・兄・・・さん」


未夜はゆっくりと視線を兄と呼んだ人物に移す。


「!!?」


兄と呼ばれた男はピクリと微かに反応すると、素早く未夜の首に手をかける。

そしてありったけの力を込める。


「俺を兄と呼ぶな・・・」

「ごめ・・・さ・・・」


未夜は苦しさに顔を歪める。


男は目だけを白い仮面で隠しており、表情が良く分からない。

口元だけは三日月に釣り上げている。

きっと本気で殺そうとしているのだと想像をする。


「俺の事は(まもる)と呼べと何度言えば分かる?」

「・・・はぁっ!!!ごほっげほっ・・・ごめん・・・なさい・・・」


いきなり手を離されたせいで肺に酸素が一気に入り込んで来て噎せる。


「まあ良いさ。早く支度をしろ」

「・・・はい」


目の前に制服を置かれる。


彼は綾瀬守。

未夜の兄である。

しかし、未夜に兄と呼ばれる事を嫌う。


「どうして・・・?」


未夜は悲しくて胸が張り裂けそうだった。


13年前に双子の妹を失い寂しかった未夜は兄である守に縋るしかなかった。

しかし、守は甘えてくる妹である未夜を嫌った。


酷い時は化物と罵る。


寂しくて悲しくて憎い・・・。

そんな感情がグルグルと渦巻いていた。


「・・・今はそんな事どうでも良いよ」


未夜は首を横に振り、考えを消した。



そう・・・どうせ私は忌み子。


綾瀬家は代々双子が生まれると片割れは必ず神隠しにあうそうだ。

双子のどちらかを神様が選んで何処かへ連れて行ってしまうらしい。

そして神様が消えないように生きていく糧として生贄に捧げられてしまうのだと言う。


残された片割れは神様によって人間では無い何かに変えてしまう。

そうして、ずっと忌み子として生きていくのだと。


私は取り残されてしまい、人間じゃなくなった。

両親は普通に接してくれるけれど、兄だけは忌み子として扱うのだ。


そして鏡を絶対に見せてくれない。

鏡は真実を見せてくれると昔聞いたことがあった。


「兄さんは知られたくないことでもあるの・・・?」


知られてはマズイ事。

それは・・・きっと13年前の神隠しについてだろう。


でもそれは知られてはいけない事なのだろうか。

未夜はきっと神隠しではない何かが妹を連れて行ったのではないかと考えた。


しかしそれは未夜の推測であり、本当に神隠しなのかも知れない。


「・・・知りたい」


未夜は着替え終わると急ぎ足で玄関へと向かった。




学校に着いてから、保健室へと向かった。


未那斗(みなと)兄さんいる?」


ノックをしてから声を控えめだが扉の向こうにいるであろう人物にかける。


「・・・未夜かい?入っておいで」


少し間があってからあまり低くない男の声が優しく未夜に入ってくるよう促す。

未夜はゆっくりと扉を開ける。


「おはよう、未夜。朝からどうしたの?」


未那斗と呼ばれた学校医の問いに苦笑いで返す。


「もしかして守に何かされたの?」


守と言う単語に一瞬体をビクリと震わす。

未那斗は溜息をすると、ゆっくりと立ち上がり未夜を優しく抱きしめる。


「何されたのか・・・言ってごらん?」

「・・・首を絞められた。きっと本気で私を殺そうとしたんだと思う」


仮面で目は見れなかったがきっと本気だったと思う。

殺意で瞳はきっと濁っていただろう。

想像しただけで寒気がした。


「そうか・・・怖かったね」


よしよしと未夜の頭を撫でる。

暖かく大きな手に撫でられ未夜は安心する。


彼は綾瀬未那斗。

未夜達のいとこであり、未夜にとっては優しいお兄さんだ。


「そんなに怖いのなら僕の家においで?」

「それは・・・出来ないよ」


未夜には親戚に嫌われている為、あまり表に出ない・・・いや出れないのだ。

それなのに他の家に行けば、さらに評判は悪くなるだろう。


(それに・・・未那斗兄さんには迷惑掛けたくない)


「未夜」

「何・・・む・・・」


未那斗に優しく呼ばれ上を向くと頬を引っ張られる。


「迷惑だなんて思っていないよ」

「!!?ま・・・また心読んだの!?」

「またって・・・失礼だなぁ。未夜が無防備過ぎるだけだよ」


未那斗はニコリと微笑む。


未那斗も双子の兄を神隠しで失っている。

未夜と同じ忌み子だ。

同じ忌み子だからこそ優しくしてくれるのだろう。


「僕だったら未夜の苦しみ、悲しみ、憎しみ全て分かってあげられる」

「でも・・・」

「今更何言われても気にしないよ」


未那斗の優しい言葉、微笑みに未夜は泣きそうだった。


忌み子は人の温もりや優しさに飢える。

未夜はそこまで飢えてはいないが、未那斗は凄く飢えているのだろう。

会う度に甘えてくる、そして沢山甘えさせてくれる。


「未那斗兄さんが良いのなら・・・でも・・・」

「でも・・・?」

「私の知りたい事教えてくれたら・・・行く」


未夜の為を思って言ってくれているのに条件を付けるのはいけないと思いながらも、つい言ってしまった。


「・・・知りたい事?」


心を読める力を神様から貰っている未那斗は言葉にせずとも分かっていた。


「そう・・・」


未夜もまた心を未那斗に今までに無い程晒していた。


(本当に神隠しだったのか知りたい・・・)


はぁと溜息が微かに聞こえた。


「分かったよ。教えてあげる。でも、僕が心を読めた範囲でしか教えれないよ?それに嘘が混ざっている可能性だってある」

「ううん構わないよ」


そうして未夜は未那斗の家へと行くことに決まったのだ。




「許さないよ・・・そんな事。未夜は渡さない絶対に・・・お前みたいな紳士ぶった変態なんかに」


未夜と未那斗を影から見ていた人物はボソリと呟くと何処かへ消えた。


(ごめんね、未夜・・・僕は酷い事をしようとしてるよ)


未那斗は未夜をきつく抱きしめる。

未夜はキョトンとした顔で未那斗を見上げる。

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