表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

リュックサックの天使

作者: 瀬名孝太

ちょっとしたお話、って感じを意識して書いてみました。

「ふーん。ここが地上…ねぇ。」

 淡白な感情の(こも)っていない声で男は言う。

「ここにそんな物騒なやつがいるのか?」

 今からエベレストにでも登るような重装備の男が言う。

「とりあえず、狙われそうなやつを探してみるかね。」

 今からエベレストにでも登るような重装備の男が大都市のコンクリートジャングルの中で呟く。

当然、周りからは変な目で見られる。だが、男は気にしない。男にとってはこれが普通だからだ。

男はそこから歩き出す。流石に、道路のど真ん中にずっとは立っていられない。

赤信号だがあまり気にしない。車が勝手に避けてくれるからである。

時に、「バカ野郎!死にてぇのか!」と罵声を浴びせられるがバカ野郎はそっちである。

どこに好き好んで死にたいやつがいるものか。考えてみればわかるだろう。

男は都市の中心部から離れるように歩く。この先は住宅街だ。

それぞれの家の表札を見て歩くがピン!と来るものはない。

しばらく歩いてやっと気に入った苗字があった。

「ここにしよう。たぶん、他の奴もここを狙ってくるだろう。」

 うん。きっと、そうだ。ここに違いない。

男はインターフォンを押す。インターフォンを押すだけの知識はあったらしい。

「はい…どちらさまでしょうか?」

 女性の声が聞こえる。年齢まではわからないが。

「ごめんください。旅のものなのですが。ここに少しの間、住まわせてもらってもいいでしょうか?」

 とっっっっっっても胡散臭い。確かに、服装だけを見れば旅のものかもしれない。しかし、それは登山用の装備だ!

「…あの。そういうのはお断りしているんです…。」

 当然だ。断られなければいけない。絶対に断られなければいけない。こんな胡散臭い旅の男を家に上げちゃいけない。きっと、この女性も小さい頃にそう教わったはずだ!

「そうですか…あの、少しのスペースでもいいんです。そこにテントを立てて寝泊まりしますから―――」

「ごめんなさい!」

 ブツッ!

あ~あ。切られちゃった。まあ、当然ですね。正直、怖いですよね。すごい重装備の登山家が家に泊めてくれときて、「はい。いいですよ。」と答えるのはすごく登山が好きな人ぐらいだろう。正常な人から見て変質者ですよ。新手の強盗とか空き巣とか犯罪まがいの連中にみえちゃいますよ。

「仕方ないか…。どこか寝泊まりできる場所探して見守ってあげるしかないか。」

 男は残念そうな顔を…全然してませんね。無表情です。ですが内心、やったー!仕事終わったー!的なことを思っています。男は無表情でスキップしながら家を離れて行きました。


「姉ちゃん…行った?」

 野球用のヘルメットをかぶり、バットを構えている小学生程の少年は言った。

「うん。行ったみたい。」

 こっちの少女は高校生みたいだが、頭にボウル、手にはフライパンを装備をしている。

「あの兄ちゃん何なんだ?頭おかしいのか?」

「そうね。きっと、おかしいのよ。ここ離れる時もスキップして去って行ったわ。」

 少年が身震いをして言う。

「あんなのがこの辺うろついてるのかよ…ここも物騒になってきたな。」

「そうだね。どこかの住宅街では女の子が攫われかけたって言ってたし。私達も油断できないわね。」

 少年の想像は膨らむ。

「きっと、あのリュックの中には何も入っていなくて空なんだ。そして、女の子を攫う時、その中に…」

「嫌な想像しないでよ。たしかに、あの重装備でスキップしていくなんておかしいけど…。」

「ああ!やっぱり、あの中は空なんだ。そして、誰かをいつも狙って…」

「いやー!あたしなの?あたし?あたしは何も悪いことしてないのに何であんなのと遭遇するのよ!」

「いや、姉ちゃんはねぇだろ。」

「なんでさ!」

「だって、可愛くn―――」

「黙れ。」

 カンッ!

「ふぎゅ!」

 投げたフライパンが少年のヘルメットに直撃する。

「ふん!あたし、バイト行く準備するから!」

 ボウルを台所に脱ぎ捨て部屋に戻る。

「姉ちゃん怖くないのかよ!あいつまだここらをうろついてるかも―――」

「仕方ないでしょ。行かなきゃいけないんだから。やばかったら逃げるし周りに助けも求めるわよ。」

「……気をつけろよ…。」

 少年は心なしかしょんぼりして言う。

「分ってるわよ。」

 それから黙々と準備を続ける。荷物を鞄に詰め込んで部屋を出る。少年の姿はない。部屋に戻ってしまったのだろう。

「さっ!気を取り直して、行きますか!」

 さっきの不審者のおかげでいつもならバイトに出る時間を少し過ぎでしまった。急がなくては。


「嬢ちゃん。注文いい?」

「はい!今行きます。」

 私は頑張らないといけないと思う。

「お姉ちゃん。ここも注文お願いね~。」

「はい!わかりました。」

 父さんと母さんがいない今、家を守れるのは自分だけだと思う。

「おーい!これ、3番テーブルね。よろしく。」

「はい!わかりました。」

 家と弟…家族を守れるのは自分しかいない。そう言い聞かせて頑張る。

「あの子、すごい頑張ってるね。」

 お店の店長さんが言う。

「そうね。普通の高校生の2倍は働いてるわ。」

 副店長さんも言う。

「でも、あれだけ働いて給与は他の子と一緒か…」

「そうね…。同じ額払わないと他の子が文句言っちゃうわ。」

「でも…そうだ!余り物でもいいなら帰りに持ち帰らせるか!」

「そうね。それならかまわないわよね。」


「余り物の中華まんをもらってしまった。」

 う~ん。ちょっと、今日は朝のことがあって張り切っちゃったかもな~。

一度思いっきり働くとその時は褒められるかもしれないけど、それが維持できなければサボってるって見られちゃうし…失敗したな~。明日は少しペース落として働こう。

今日は曇っててお月さま隠れちゃったなー、なんて考え事をしながら帰路を歩く。

すると、前の方にたむろっている若者達が!って私も若者だけどね。

いやだなー。いかにも、俺ら悪い奴ッスよみたいな格好してるよ。通りたくないな~。でも、早く帰らないと夕飯遅くなっちゃうし…できるだけ、知らないふりして歩こう。

心臓をバクバクさせながら近づいて行く。

前だけを見ろ。横見ちゃダメ。前だけを見て歩くんだ。

横を通り過ぎる瞬間息を飲む。冷汗を少しかく。

通り過ぎて行く。思わず安堵の息が漏れる。よかった~…絡まれなくて、絡まれたらどうしようかと―――

「おい。そこの姉ちゃん。」

「ッ!」

 驚いて体が跳ねる。体が固まる。思考がフリーズする。

「おい、そこのあんただよ。」

「わ、私でしょうか?」

 思わず声が裏返ってしまう。

若者達のリーダーらしき人が近づいてくる。他の人も一緒についてくる。

怖くて、怖くて、怖くて、体が震える。

「あ、あの…。」

「ほら、こんな大勢で来るから怖がってるじゃん。」

 あははー。笑い声。そうだな。同意の声。カッワイイー。茶化す声。そのすべてが怖かった。

「ほらよ。ハンカチ、落としたぜ。」

「え!?」

 予想外の言葉に戸惑う。

何だ、私の早とちりか。よかった。案外いい人達みたいだ。

あわててポケットを探ってみる。

…ポケットは小さく膨らんでいた。

ハンカチはあった。

落としてなかった。

「…え?」

 もう、遅かった。完全に不意打ちだ。ハンカチを確認するのに気がそれて周りの動きを見ていなかった。

口を手で押さえられ、叫べず。手を(つかま)れ、動けず。鳩尾を殴られ、気を失う。

薄れゆく意識の中で思った。私、どうなっちゃうのかな…。


気が付くと私は薄暗い建物の中にいた。口には猿ぐつわを噛ませられていて声は出せない。動きはどうかと思ったが、両足一緒に結ばれていた。手の方は後ろに回され縛られていた。

完全に拘束されていた。

「お、気がついたかい?姉ちゃん。」

「!」

 意識を失う前に話しかけてきたやつの声が聞こえた。

「おっと、それじゃあ。しゃべれないな。」

 猿ぐつわを外されしゃべることができるようになる。

「あ、あなた達はなんなんですか?」

 相変わらず声は裏返る。

「なんなんですかって?おい!俺たちゃなんだ?」

 男は周りにいるであろう男達に聞く。

「若者集団。」「不良集団。」「メッチャかっこいいやつら。」

「だとよ。」

「わ、私をどうする気?」

「そりゃ…ねぇ。」

 男はにやにやと嫌な笑顔を作る。

「男がたくさんいて、女が一人。やること一つでしょ。」

 …そんな、いやだよ。なんで私が…こんな目に。

自然と涙がこぼれてしまう。絶望と落胆と自分の不甲斐無さに。家を守ると言っておいてこれだ。

「んじゃ、わかってもらったみたいだし。」

 男達は私に近づいてくる。

「楽しみましょうよ?姉ちゃん。」

 シャツを左右に引き裂かれる。

ああ、私今から汚されるんだ…。

そう思ったとき。

私のシャツを引き裂いた男が横に吹っ飛んだ。

「え?」

 他の男達はさっと私から距離を取り男が吹き飛んで行った逆の方向を見て。

「お前何をした。」「貴様何をした。」「おい、お前何しやがった。」

 と壁に聞く。

すると、そこから人影が現れ声を上げる。

「私は薄汚いゴミを吹き飛ばしただけですよ。」

 朝の登山家不審者だった。

登山家不審者は朝と変わらない格好でこの建物の中にいた。相変わらず重装備で動きにくそうである。

吹き飛んだ男が男達に言う。

「おい!みんな!あいつ"アレ"だぞ!気をつけろ。」

 周囲の男たちがざわつく。

「本当か…なら」「ふっ…。それなら」「マジかよ…。ってことは」

 吹き飛んだ男が男達に言う。

「ああ、だから…俺らも使っていいってことだ。」

 そういった瞬間。

男達の手に黒いもやもやが集まって武器が現れた。

一人は槍。一人は刀。一人は銃。

男達のリーダーらしい人物は…でかいハンマーを持っていた。

「ふう、仕方ないですね。」

 登山家不審者はめんどくさそうに呟き、

「お相手しましょう。」

 手から青白い光を出し、手には二振りの剣が握られていた。

最初に動いていたのは男3人だった。一人は発砲。一人は横に切りつける。一人は槍を突き伸ばす。

登山家不審者は飛んだ。そんな表現が正しいだろう。まさしく飛んでいた。4~5mは跳躍していた。

そして、そのまま銃男を切り捨てる。刀男は横に刀を振るうが一方の剣で受け流されもう一方の剣で切り捨てられる。槍男は槍を連続で突き伸ばすが剣で弾かれ、バランスを崩し切り捨てられる。

 私は息を飲んだ。今、目の前で殺人が起きているのだ。そう思っていたが、

「大丈夫ですよ。死にはしません。邪心が切れるだけですから。」

 にっこり笑って説明する。確かに、息はあるようだ。

「さあ、あなたの番ですね。親玉さん。」

 リーダーらしい男の方を向く。

「さっきの奴らと同じだと思ってると痛い目見るぜ。」

 へっへっへと意地汚く笑う。

「そうら、行くぜ!」

 男は思い切りハンマーを地面に叩き付ける。

グラグラグラ!!!

地面が思いきり揺れ建物が崩れてくる。

私の頭上の天井も例外ではなかった。

「チッ。」

 登山家不審者は小さく舌打ちし、こっちに向かいながら両方の剣を落ちてくる天井に向かって投げる。

天井は真っ二つになって、私の隣りに落ちてくる。だが、

「お前が守りたいのはこの姉ちゃんなんだろ!?」

 男はハンマーを頭上高く上げ、私に向って振り下ろす。

あー、やっぱり駄目なのかな…。

「下種が。」

 登山家不審者は右手でハンマーを受け止めていた。

「なっ!」

 男は驚き慌てる。

「下種は…消えろ!」

 落ちた天井に刺さっていた剣を左手で抜き、男に向かって振り切る。

男はバランスを崩して後ろに倒れる。


 すべて終わったみたいだ。

「あ、ありがとう、ございます。」

 一応、助けてもらったみたいだから礼を言う。

「一応で礼を言うものじゃない。」

「え?」

 なに、何でわかるの?

「少しくらいなら読めるよ。心。」

 こわっ!何、怖いんだけど。

「そんな、怖がらなくていいよ。」

「あ、あなた何者なんですか?」

 声が裏返る。出来るだけ無心を心掛ける。

「無心、無心と思ってもあまり意味ないんだけどね…まあ、いいや。」

 登山家男は呟く。

「私は天から使わされた者。」

 天井が落ち、雲も晴れ、月明かりが建物の中を照らす。

「天使だ。」

 その瞬間、リュックから白い翼が出てくる。月明かりに照らされ美しく光を反射する。

とても幻想的で見とれてしまった。

天使は言葉を続ける。

「君を助けにきた。天願(てんがん) (のぞみ)

この作品は「羽生えてる奴ってどうやって隠すんだろうね?」という疑問から生まれました。

そして、なんか変なやつとの戦闘。ファンタジーですね。

でも、魔法なんか使うのか?と聞かれると微妙です。

だから、ファンタジー?コメディー?シリアス?とはてなマークがついて回ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ