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働きものたち

作者: 寄木木匣
掲載日:2026/05/14

 あたりに散らかるケーブルを入念に払い除けながら、私は少しずつ奥に進んでいた。首に引っかかっては大変なことになるからだ。


「まったく、放置されていた観測機のメンテナンスだなんて」


 同行者は憤慨した様子で言った。私はそれを手で制した。


「そのおかげで、我々が働けているのだから」


 同行者はあからさまに肩をすくめた。


「きみは少し穏やかすぎるな。もっと、怒ることを覚えたほうがいいぜ」

「そう言われてもなあ」


 私は頭を掻いた。昔から、感情を表に出すのが得意ではなかった。


「お、あったあった」


 同行者が指をさした先に、観測機が浮かんでいる。幾重にも輪っかが重なって、まるで赤ん坊に見せるための、くるくると回る玩具のようだった。


「しかし惜しいなあ、あとちょっとで50億年ってところまでいったのに」

「仕方がないよ。放っておかれていたのだもの」

「見ていてやればよかったのになあ。まあ、人間の数も減ってきていたし、諦めもあったのかねえ」


 私は懐から小石を取り出した。観測機に浮かぶ球体の中心から三つ目に向かって、小石を放る。


「お、見てみろ。データが更新されたぜ」


 モニターの前にいる同行者が言う。そちらを見てみれば、三つ目の球体にシミュレーションされたサンプルの様子が映し出されていた。


『ただいま入りました速報によると、突如として現れた巨大隕石は今晩地球に衝突すると推測され――』

『落ち着いてください、荷物は持たずに、できるだけ地下深くへ降りてください――』


「情報伝達の仕組みには不備なし。だけども、これだけ勤勉ならおれたちみたいに、人間ぜんぶに平等に仕事をやれる環境にしたらよかったのになあ」

「まだそんなことを言う。メンテナンスはこれから我々の担当になるんだから、次の文明に期待したらいいじゃないか」

「それもそうか」


 私は三つ目の球体が赤く燃えたのを確認して、雑談を交えながら、同行者と共に帰宅した。



――と、ここまでが観測機から出力されたデータです。もう少しで60億年だったのに、残念ですね。

――仕方がないさ。次の文明に期待しよう。

――それもそうですね。

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