99話──生きた心地
セイジは、前方を走るゼットらを見ながら、軽快にその後を追う。
背後を走るビリーブという執事服を着た人の気配を感じつつ、一度外した仮面をもう一度装着した。
「ふぅ……」
仮面の中でのみ、微かに漏れ出たため息。
まさか、奪った仮面に特殊な効果があるとは……と。
なんとなく、あの勝利にワーサーからの報酬を得たかったこと。そして、失った右目を隠すためのなにかが欲しくて、手にしたものだった。
布だけでは心許ない。それに、怪我をしていると誰が見ても判断できてしまう。
だからセイジは、仮面を装着していた。
よくよく考えてみれば、頭のどこかに引っ掛ける形でもないし、紐なども付いていない。なのにワーサーがあれだけ激しく動いても取れてなかったのはおかしいことだ。
仮面にクリーンヒットさせたときはさすがに外れていたが、それでも謎の吸着力。
セイジも、装着する時は顔に近付けただけで自然と外れなくなり、外そうとすれば簡単に外すことができていた。
魔道具というものの存在は知っていたので、その時点で気付けていてもよかったが、結果オーライなのでセイジはそれ以上振り返って後悔することは止めた。
「この辺りまで来れば俺が接近に気付けるようになる。だが警戒は緩めるな」
ダンプが冷静にルートを選択してくれているため、考えずに体を動かすだけでいいのはありがたい。
ただ、先ほどは危なかった。
もし回復されていたらどうなっていただろうか。
今のセイジはスキルで動いていると過言ではない状態だ。体内から失われたものが多く、このままスキル適応外まで傷を癒されてしまうと、最悪ショック死しそうな気さえしていた。
それと、体調の変化によりスキルがバレてしまうことも避けたかったのも、意見を変えた理由の一つだ。
別に、彼らがセイジのスキルを知って悪用しようと企むとは思っていない。だが、どこから情報が漏れ出るのかはわからない。些細なことがきっかけで、偶然セイジの情報が流れて再び今回のような最悪に巻き込まれるかもしれない。
だからセイジは隠した。
「……」
セイジは、最後の時まで隠し通す覚悟を決めた。
─────
「……はぁ」
思わず、ため息とは違う、安堵に近い息を漏らした。
外は、美しかった。
岩肌ばかりで、緑は遠くの方にしか見えない。
それでも、自然な光が降り注ぐ青空が、損なわれたはずの右目を優しく撫でてくれているような気がした。それくらい、温かい光景だった。
肺を循環する空気にも、味があるように感じられる。鼻から、口から、味覚と嗅覚が新鮮な酸素を歓迎している。
長々と無駄に味わった外の世界だが、とにかくセイジは改めて生を実感した。
それはアリスもゼットも同じだろう。
特にゼットなんかは、手を大きく広げて背中まで逸らしていた。セイジも人目が無ければ同じことをしていたかもしれない。
「敵の手中の中から脱せたし、とりあえずは一安心だ。だが、まだ気を抜くには早いからな。そこだけは勘違いするなよ」
散々な目に遭った。二度と訪れないだろうし、なにがあっても来たくない場所から離れていく。
そして、惨状となったグリントに帰還した。
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