95話──合流4
人間だ。
原因は人間だった。それも、瓦解した壁から姿を現したのは三人。
一番初めに見えたのは、これまでも何度も、何人も見てきたローブの人間。つまりは神領星であり、敵だ。それはゼットでもすぐにわかる。そんな神領星はくの字に折れ、他の神領星と同じ結末を辿ろうとしていた。
くの字に折る蹴り。それを成した犯人は……判別ができない。パッと思い当たらないし、顔も仮面かなにかで隠れてて見えない。ただ、神領星を攻撃している以上、彼らの仲間ではないということ。それだけしかわからない。知らない人間だった。その人間は背に誰かを乗せていた。
最後の一人の、背負われた者は全員が即座に何者かを判別。ゼットを除く者たちの、ここに来る最大の理由になった少女だったからだ。
「アリス様……ッ!」
それは誰の言葉だったか、ダンプだったかもしれないし、ビリーブだったかもしれないし、ジェルデミアだったかもしれないし、ジェネドだったかもしれないし、ネイビーだったかもしれない。
ゼットにとっては誰が言った言葉なのかなんて、至極どうでもいい。
この状況では、ゼット視界の中心にしか意識が向かわない。神領星が攻めてきたらどうしようとか、後ろに下がっておかなくちゃとか、そんな思考は働かない。
アリスがいることに意味がある。
もちろん、目的だったから意味を感じることは当たり前だ。だが、それ以上で、それ以外の意味があった。
ゼットは、口ではアリスとセイジを同等に扱っている。どちらも助けると。しかし、心の奥底の、誤魔化せない本心ではセイジが優先されている。
ゼット以外はアリスが優先。立場的にも、貴族の娘と稀人なのだから、それは仕方のないことだと理解している。ゼットはそこまで聞き分けの悪い子供ではない。
ゼットにとってのアリスの意味。それは、希望を見出す光。
この神領星の拠点の核心に限り無く近付けている証拠に他ならない。
ただ、希望と共に、不安も過る。
アリスしかいない。それがどうにも受け入れがたい。
アリスを背負っている人は誰なんだ。アリスを助けた味方なのか。それとも誘拐している第三勢力なのか。もし味方ならなぜセイジも一緒に助けてくれてないのか。
他人に押し付ける感情ではないとはわかっていても、心のうちに秘めたままにできるほど、ゼットは大人になっていない。
もしかしたら、アリスを見つけられたからセイジは見捨てて町に戻ってしまうのではという考えにまで至った。
あのエクスプローシブ・ファイアーボールによるやらかしが無ければ、行動で発散していたかもしれない。ゼットは、あのやらかしと、ジェルデミアと協力してエイデンを超えた経験により、この短期間で僅かながらも成長していた。
「……」
瞬間的な出来事の結末は想像通りのもの。蹴られていた神領星の体は、アリスを背負う者の足から離れて反対の壁に突き刺さる。そしてピクリとも動かない。他のお仲間の仲間入りだ。
そして犯人は体勢を崩すことなく、血濡れた地面に着地。チャピ……と、僅かに水音が聞こえた。
膝をほとんど曲げない着地。前方に転がって力を逃がしたり、膝を曲げてクッションの役割にはしなかった。それはきっと、背中にアリスがいるからだ。僅かな足の動きで、背中のアリスへ衝撃が伝わらないようにしていたのだ。
それが理解できたところで、信用できるわけではない。
「動くな」
低い、冷えた声で、ダンプが制止を求める。
ジェネドがゼットを庇うように位置を移動し、ダンプとビリーブが一歩前へ出る。
「っ……!ビリーブっ!ミア!」
アリスの悲壮な呼び声は、ビリーブとジェルデミアへ。
この状況だ。普段から接することが多い二人にまず焦点が向かったのだろう。
「アリス様。無事であったことを喜び、不安を拭うべく言葉を交わさせていただきたいところではございますが……その者は──」
「目を開けないでアリス」
背負う者は、ビリーブの言葉を遮るように喋り、一歩後ろへ下がった。
声的には男だと思われる。しかし、声を聴いてもやはり誰なのかわからない。わからないという事は、ゼットが追い求めていた人ではない。
もしかしたらセイジなのではないかというゼットの淡い幻想が打ち砕かれた。
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