93話──合流2
「とりあえずぅ、これくらいかしらね~。全快までは時間が掛かり過ぎるから、今は最低限で許してほしいわぁ~」
「イアさんの魔術のおかげか、感覚的にはあまり変化を感じないんですが、でもなんとなく楽になった気がします。なんか、まだ頑張ろうって元気が湧くような……そんな感じです!」
口だけではないことを示すかのように、ゼットは立ち上がると手を上に伸ばしてアピール。
「良かったわ。そしたらぁ、次はミアさんね~」
「お願いします」
今度はジェルデミアが負傷を癒してもらう。
「……問題無いな」
ネイビーが回復魔術を掛けている間、ゼットの様子からこの先も着いて来れるだろうと判断したダンプは、次なる行動を考える。
「これからについてだ。ミアも回復してもらいながら参加してくれ」
「了解しましたー」
「ミアとゼット。お前らは登ってきたのか?」
ダンプの問いに、ジェルデミアが答えた。
「いえ、この層?が、あの時の崩落の最終落下地点なんですよ。どこかで下ろうとしていたところで、ビリーブに掛けてあった防御魔術が感じ取れたのでここで待機してました」
「なるほどな」
かなり急ぎで下ってきたのだ。追い付いていてもおかしくはない。
「ビリーブの防御魔術ももう切れかけですし、もう少し時間が経つか、攻撃を受けて消費してしまっていたら気付けずすれ違いになっていたかもですね。その時はダンプさんが私かゼット君の魔力を辿って追ってきてくれるでしょうけど」
「お役に立ててなによりです。下る判断をしたのには、なにか理由がおありで?」
「信憑性は……結構ある情報なのですが、ここより下の層にアリス様たちがいるらしいですよ」
「……なるほどな。それは良いことを聞いた。なら、早速向かうとしよう。俺もかなりこの洞窟内の環境に慣れてきた。完璧とまではいかないが、ある程度上下に続く道くらいなら感じ取れる。……いけるか?」
全員生存の要となるジェルデミアの様子を窺う。もしまだ厳しいようであれば、背負うなりなんなり対策を講じなければならないが……
「問題ありません。急ぎましょう」
「痩せ我慢じゃないよな?」
「もしそうだとしても、私の魔術でどうとでもなりますから、そこに心配を掛ける必要は無いでしょう。ありがとうございますネイビーさん。助かりました」
「まさかミアさんを癒すことになるなんて思っても無かったわぁ~」
「ダンプさんといい、ミアさんといい、私をなんだと思ってるんですか……ほら、行きますよ」
ジェルデミアは指を振って、効果が切れていた、切れかけていた四人へ防御魔術を掛け直す。
「よし。んじゃ、とりあえず下を目指す。まだあいつらの魔力らしきものは一切感じないが、近付けばわかるはずだ。ゼット。お前は今度こそ勝手な真似するなよ?魔術は厳禁だ」
「はい。本当にごめんなさい……」
「それから、全員はぐれることだけは注意しろ。わざわざ探す余裕もなくなるかもしれないからな。わかった奴から着いてこい!」
再び六人一丸となって走り出す。
ダンプが迷わず道を選び、寄り道することなく階段へ辿り着いた。
間隔が短いため、急いで降りようとすると足を踏み外してしまうような造りだった。
ダンプは跳んで、一気に何段も越えていく。ビリーブもダンプより軽やかに跳び、ジェルデミアもそれに続く。
ゼットは一段飛ばしで降りていき、ネイビーはゼットを案じて同じ歩幅で隣を走った。そしてジェネドも二人と同じように一段飛ばしで一番後ろから追う。
これまで下ってきた階段や坂と違い、妙に長い階段を降りていく。
やがて降り立つ次の層。
かなり肌寒い空間だが、彼らは気にすることなく進んでいった。
「まだ、感じないな」
合流した地点より相当進んできたというのに、ダンプまだアリスとセイジの魔力を感じ取れないことに内心驚いた。
「死んでない……よな?」
「それだけは考えないようにしましょう」
「そうだな。……そろそろ次の降下地点だ。それと、魔力が行き詰ってきている。次が最下層かもしれない」
この階層では誰とも出会わなかった。
それはダンプが上手いこと避けるルートを取っていたのではなく、最短ルートを選んだ結果だった。
だが──
「……妙だな」
ダンプの懸念。
敵と出会わなかったことも関係しているその懸念は、一切の他人の気配、魔力を感じなかったことだ。
出会わなかったのは偶然じゃなく必然。そのことが異様に感じていた。
これまでの道のりでは、必ずと言ってもいいほど敵に遭遇していた。運よく巡り合わない場合もあったが、その時は遠くから声や慌ただしい足音が聞こえていた。攻撃的な魔力も感知できた。
なのに今は静寂。
全ての神領星と遭遇し終わっていたのであれば頭を悩ませることはない。
しかし、この先の層でなにかが起きていて、人数が集中しているのだとしたら……
「行きゃあわかることだな」
下手に喋って無駄に神経削らせるわけにもいかない。降りて、感じた魔力が濃密だったらその時に告げればいい。
ダンプはそう結論付け、次の層へと駆け降りていった。
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