92話──合流
「こいつら……が、神領星の幹部でいいんだよな?」
「しかし、そのように名乗っていたのも事実だ。参考程度に留め、嘘だと切り捨てることは避けるべきだろう。視野が狭まる」
「でもぉー、これまでの人と比べると全然大したこと無かったわよね~」
「参考人として連行しましょう。その魔道具がある限りは反抗心を抑えられます。更にこの傷であれば歩行は不可能ですので、ここに縛り付けるだけで問題ないかと」
ジェルデミア、ゼットと離れた四人は、調子良く洞窟内を進んでいた。
遭遇する構成員の数は想定していたよりも遥かに少なく、一部の者は僅かに抵抗してくるほどの強さを持っていたが、ダンプたちの脅威とはならずに散っていった。
そして今回遭遇したのは、慌てる素振りで走っていた者たちだった。
ダンプたちが戦闘を開始しようとしたところで即座に命乞いを繰り返し、己を幹部だと名乗っていた。
だから速殺するのではなく生け捕りにし、脱出後に取り調べ、場合によっては拷問をして神領星のあらゆる情報を聞き出そうと考えた。
「引っ張っていきたいが、そんなわけにはいかんしな。自害されるのも困るんだが、そこら辺はどうなんだビリーブ」
「自害という選択も魔道具の効力によって弾かれるはずです。私たちから逃れるための行動、つまり反抗と言って差し支えない行動ですので、問題ないかと思われます」
「ならまぁ、いいか。にしても、よくそんな都合良く持ってたな」
「敵本陣へ侵入するのであれば、このようなこともあり得るかと思いまして」
「用意周到だな。そんじゃ、こいつらは放っておくとしよう。怪我とかしてないんなら先進むが、いいか?」
ダンプは他三人の賛同が得られたところで、これまで下ってきた道を更に走っていく。
「それにしても、ミアとゼットが心配だな」
「まさかやられてしまっている、などということは考えたくないものだ。強者と遭遇していなければいいが……」
「降りた方が良かったかしらねぇ~」
「それは困るな。ミアが降りた以上、唯一負傷をどうにかできるのはネイビーだけだからな」
「であれば俺が共に降りるべきだっただろうか」
ビリーブが後方を走り、その前方でダンプ、ジェネド、ネイビーが可能性の会話をする。
「それもいまいちだ。お前ら二人は引き離したくねぇ。これまでパーティー組んでやってきてたんだ。一緒の方が本領を発揮しやすいだろ?それにだ。場合によっちゃ別行動の仕事もあっただろうが、今みたいな状況じゃ互いが心配で仕方ないだろうしな」
「そうねぇ」
「だからまぁ、行くんなら俺かビリーブだったな。ただまぁ、この判断を下したのは俺だ。ジェルデミアならどうにか帰ってくるだろうって勝手な期待だが……どうにかなるだろ」
「信用心の否定はしませんが、過度な期待は掛けられた側にとって大きな負担に成り得ますのでご注意ください」
「そうだな。ミアはそんなんで折れる奴じゃないとは思うが、今後は気に掛けるとするか」
「ゼット様へのお叱りもほどほどにお願い致します」
「それはー、俺としてはともかく、ギルマスとして無理だな。わかってくれんならそれっきりの話にするが、今後も勝手な行動で馬鹿されるのはギルド全体の問題になっちまう。……待て、止まれ」
ザザァ、と靴底を地面に擦らせ急停止。
定期的にダンプが一団の動きを止める時は、決まって何者かが接近してきている。
元よりダンプの能力を疑う者はここにはいないが、全ての接敵を的中させてきたことから、ダンプと険悪な関係の物でも、初対面の人間でも、既に信じて同じように足を止めていただろう。
「数は?」
ジェネドが接敵に備え、先んじてダンプに質問。
「一……いや、二?」
「何故迷うのだ」
「混じっているんだ。片方が酷く弱々しい感じだ。……距離が近いんだろう。密接な状態にあるから混ざり合って分かりずらい。ただまぁ、キメラにでもなってねぇんなら大した敵じゃ…………待て、わかったぞ。あいつらだ」
塊としてしか感じ取れなかった魔力の正体の距離が近付いたことにより、鮮明になって波長を読み解くことができるようになる。
「あいつら、ってことはぁ~」
「あぁ、そうだ。急ぐぞ」
再び走り出し、通路を疾走していく四人。
「ネイビーは回復魔術の準備をしろ」
「はーい」
指示を受け取ったネイビーは意識を切り替え、言われた通り回復魔術を使用するために魔力を引き出す。
そして……
「みなさん、こっちですよ」
呼び声と共に、通路の途中から手が飛び出す。
ダンプ以外は一瞬身構えるが、すぐに力を解いた。
「まずはゼット君からお願いします」
部屋の中から手を伸ばしていたのは、少し息を荒げたジェルデミアだった。その傍らには眠そうに眉を下ろしたゼットがいる。
そそくさと、眠そうにしながらも血だらけで危うそうなゼットにネイビーは回復魔術を掛ける。
「ゼットくん、大丈夫?」
「ありがとう……ございます……」
貧血で意識が朦朧としならがらも、ゼットは首を頷かせて感謝を伝える。
「気にしないでぇ~」
優しい声色でゼットを労わるネイビー。
ジェネドも、ネイビーのようにゼットを癒せる力は無いものの、少しでも楽になるかとゼットの背に手を添えて支えた。
ダンプは腕を組み、ゼットまでとはいかなくとも負傷しているジェルデミアへ。
「こんなところにいたのか。てかお前も赤い血が流れてんだな」
「酷いこと言うじゃないですか。怪我人を労わってくださいよ」
息を吐きながら、壁に背を預けて楽になるジェルデミア。
「ゼット様のあの負傷。そしてジェルデミア様までも負傷しているとは、一体どれほどの強敵に遭遇したのですか?」
「そうですねー。例えるなら、ダンプさんは勝てなくてビリーブは勝てるくらいの敵ですかね。相性的な問題が大部分を占めるので、大まかな戦力で考えるとすれば……皆五分五分ってところでしょか」
「五分五分だぁ?……ミアがそう思ったんならそうだんだろうけどよ、そいつは殺してきたのか?それとも逃げてきたのか?」
もし逃げてきたのなら接近に備え気を張り巡らせなければいけないからと、ダンプはジェルデミアに問う。
「どちらでもないですよ」
「つまりなんだ?」
「まぁ、色々あったんです。あまりダンプさんには言えないことがね。なので、その敵は無力化したという答えでここは納得してください」
「……それはゼットの選択か?」
「ゼット君の選択でもありますが、私が決断しましたので、仮に悪手だったとしても責任は私が取りますよ。……ネイビーさん、ゼット君の容態はどうでしょか?」
これ以上問い質されるとボロが出てしまい、なんだかんだ規律を重んじるダンプがうるさくなるだろうと思ったジェルデミアは話を変えようした。
実際ジェルデミアがゼットのことを心配するのは本心からだし、ダンプもゼットのことは心配していたし無下にはできないため口を閉ざした。
「本当に酷い怪我ねぇ。なんでこんな無茶させちゃったのよ」
「訳あったんですよ。私と敵の相性が悪く、ゼット君の手を借りるほか無かったんです」
「ゼットくん~、ミアさんが言ってることは本当かしらぁ?脅されてるなら今喋っちゃいなさ~い」
「ネイビーさん……」
ネイビーが本気で言っているわけではないのはジェルデミアもわかっている。ただ、だからこそなんだなんだと言いずらいし、だからといってなにも言わないのも癪だ。その結果、不満げな名呼びだけが漏れ出た。
「はい、大丈夫ですよネイビーさん。イアさんは俺の意見を尊重してくれましたし、俺のわがままに付き合ってくれたんです」
「そう?ならいいのよ~。でも今後ミアさん以外の冒険者とかに変なこと言われたら相談しなさいよ~。この人も一緒に味方になってあげるからねぇ」
「あぁ。実際の戦闘を見たわけではないが、その体の傷に、逃げ傷は無かった。勇敢に立ち向かったのだと理解できる。そんな真っ直ぐな男には好感が持てるぞ」
「ありがとう、ございます」
二人からの寄り添う言葉に、ゼットは恥ずかしそうに頬を緩め、顔を少し俯かせた。
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