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異世界転生1日目、恋人ができました。人生懸けて幸せにします 一章:完  作者: 成田楽


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85話──チップは命で

 ワーサーが左手のナイフを煌めかせ、セイジの心臓を一突きにしようと迫る。黄ばんだように色褪せたナイフに錆や刃こぼれは見られない。手入れが行き届いているのか、業物なのか。


 ここまで使用しなかったということは希少な武器なのだろうとセイジは分析した。


 動体視力が上がっているとしても、技術や技能は足りていない。そこばかりは経験しか成長させる方法がない。


 幸いなのはワーサーの右腕を破壊できていること。究極の一手で不意を打つ為に使えないことを装っている可能性はまだ捨てきれない。ただ、攻撃に移るまでに遅れが生じるのは確かなこと。


 この状況でも隠す優位性と、包み隠さずスムーズな戦闘を行なえるようにすること。どちらを優先すべきかなんて、考えるまでもなく後者なはずだ。


 そして、曝け出されたあのワーサーの怒りが繕われたものなわけがない。プロの俳優でもあそこまで迫真の演技はできないだろう。


 現状の右腕が使える可能性は、ゼロではないが限りなくゼロに近い。それなのに迷うのは敗北に繋がる。だったら、己を信じて可能性が高いと思う方に懸けるべき。それがセイジの結論だ。


「ふッ!」


 セイジは一直線に差し込まれたナイフを、避けるのではなく石で防ぐことで二腕のアドバンテージを最大限活かそうとした。


 しかし、ワーサーはナイフを僅かに傾けることでセイジのコントロールを奪うように軌道を逸らさせた。ナイフはほとんど軌道を変えずにセイジの胸に達し──


「ッ──!」


 皮膚に食い込む寸前のところで上体を反り返らせ、急所が傷付けられることを回避。そして今のワーサーの攻撃でわかった。ワーサーの組織とか関係なく、本気で殺しに来ていることに。


 身体を反り返らせたセイジは勢いのまま蹴り上げようとしたが、その足をワーサーに踏まれて押さえつけられると同時に、足の甲にかかとの刃を刺されてしまう。


「ぅッ……!」


 呻きを気合で抑え付け、セイジは全身を捻ってワーサーの足を振り払う。


「馬鹿力がッ!」


 セイジの視界の中に、ワーサーが怒りをぶつけながら逆手持ちにしたナイフを振り下ろしてきた。


 ナイフに合わせて石をぶつけようと腕を伸ばしたセイジだったが、寸前のところでワーサーはナイフを止め、石だけが空振りしてしまう。


 そして、ワーサーがナイフの柄の先端を親指で抑え付けたかと思った瞬間、ナイフの刀身のみがセイジの胸へ向かって発射された。


 声も出せない刹那の間、セイジは間一髪のところでナイフの軌道に石を振った腕を滑り込ませることに間に合わせ、右腕を犠牲に急所を守った。


 すぐにナイフを抜いて投げ付けたが、セイジのその行為をワーサーは予測していたのか、いとも容易く新たに取り出したナイフで弾き飛ばす。


 細工されているだけでも嫌だというのに、ローブの中に複数隠されているという情報が今の応酬で露わになった。腕の痛みに頬を硬くし、じんわりした熱さが腕から全身へと急激に広がっていく。


「クソッ!」


 ならばと石を頭部に投げ付けて昏倒を狙うも、ワーサーには容易く避けられて距離を取られてしまう。


 更に、急いで立て直そうとしたセイジの視界に次から次へとナイフが現れる。


 今までずっと注射器か様々な玉を使っていたのに、なぜ今になってナイフを使うのか。あれほど使えば注射器の在庫が切れていてもおかしくはない。だが、形状の差による空気抵抗の違いから使い分けた可能性もある。ぶれにくいし、速度も安定するからだ。


 広く分布されたナイフは、普通であれば魔術を使って壁を作ったり、武器や防具でどうにかしなければいけないほどのものだったが、セイジは規格外の脚力で横に跳んで逃げた。


 地面と直角な壁を足場に、セイジは作った勢いが重力に負けてしまうよりも先に足を動かして跳び、ワーサーに肉薄する。足場にした壁は見事に砕け散った。


 今のところ腕から広がった熱さが体の制御を妨害することはない。壮絶な激痛に変化しているだけだ。ならば耐えられる。戦いには問題ない。


 ワーサーはセイジの動きをギリギリ視線で追えていて、ローブ裏から取り出したナイフを、ダーツを投げるような手首のスナップで、しかし飛び出したセイジが避けられない速度で真っ直ぐ投擲した。


「そんなの──ッ!!」


 左手を前に出して、手の平で真正面から受け止めた。刃が突き刺さる同時に握り締めて止める。


 もう一本投げられるよりも先にセイジはワーサーの元まで辿り着き、その手を蹴って壊してしまおうとしたが、察知したワーサーは手を引っ込めて、


「【ロック・テラ】」


 その一言でワーサーはセイジとの間に黒みがかった岩が出現。それは殴り壊そうとしたセイジの拳をがっちりと受け止め、ワーサーの身を守る役目を果たす。

評価ブクマ感想で速度バフが付くので良ければお願いします!




ちょっとでも続きが気になれば!是非!!

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