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異世界転生1日目、恋人ができました。人生懸けて幸せにします 一章:完  作者: 成田楽


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59話──手のひらの上で

 驚きも束の間、その細長いもの……ワーサーが落とした注射器のような物体は、セイジの額に突き刺さった。


 マズいと思ったセイジは、咄嗟にそれを掴んで抜こうとした。


 しかし──


「抜けな……ッ!?」


 掴んだそれは、針の先に返しがあるのか、額に食い込んで簡単に抜くことができない。だからセイジはギュッと握って引っ張り取ろうとした。


 遅れれば遅れるほど毒が体内に入り込んでくると思ったから。


 しかし、掴んだそれは予想外の感触だった。ガラスのように硬いと思っていたそれは、トレーニングしていない二の腕のように柔らかい。


「うッ、ああーーッ!!」


 セイジは叫び、刺さっていた箇所の付近の肉や皮膚ごと全力で引き抜いた。


 そして全速力でワーサーから距離を取る。先ほど投擲していた位置よりも更に遠くだ。


 そのセイジの顔には、恐怖が浮かんでいた。得体の知れないものを見る、未知への恐怖だ。


「駄目じゃないですか。知らない物には触っちゃダメって、お母さんに教わりませんでしたか?」


 距離を取った後も、ゆっくりと後ろへ下がっていく。


 ただ、決してワーサーからは目を逸らさない。得体の知れないものの姿が見えないことの恐怖は計り知れない。


「なんのために柔らかい素材で設計しているかわかりますか?今の君であれば、余程鈍感でないならわかると思うのですが、どうでしょうか」


 ワーサーはセイジが投げ捨てた物の、尖っているところを右手で掴んで拾う。


 それを左右に振れば、中くらいの位置でグネグネと折れ曲がって戻って折れ曲がって戻ってを繰り返す。


「刃物に毒を塗ってもいいですけど、それだと切るときに衣服に付着してしまったり、肉を切り進むと肉の表面近くで多くが取れてしまいますから望んだ効果が得られないんです。だからこの道具を使っているんです。ただ人、体に液体を注入することって大変でして、この針を刺した上で更に力を加えないといけないんですよ」


 丁寧に説明をするワーサー。


「そこでぼくは考えました。刺してすぐ自分で押し込んで注入する仕組み。糸などで引っ張ること遠距離からでも注入できる仕組み。中に重しを入れることで投げた慣性を利用して注入する仕組み。色々考えたんですけど、どれもぼく自身を危険に晒したり、安定しない方法なんですよね。で、一つ思いついたんですよ。だったら、注入してもらえばいいじゃないかとね」


「ッ……」


「刺されば抜く。当たり前の考えですね。普通に考えて、抜いて損するなんてありませんから。だからぼくはその心理を活かそうと思いまして、これを作ってみたんです。低能な生き物には効果が見込めない方法ですけど人間にはなんと効き目抜群でして、これまで一度も失敗したことがないんですよ!」


「く……ッ!」


「頭になんの毒を注入してしまったのか気になりますか?致死性の毒ではないので安心してください。君に死んでもらっては困るので、ちょっと脳を勘違いさせてあげるだけの毒にしていますよ」


「ぁ……ああッ!!」


 全身を掻きむしり、かと思えば痛みに喘いで苦しみの声を上げる。


「痒くて痛い。不思議ですよね。そろそろ炎で炙られているような痛みも出てくると思いますよ。実験体が言っていたことなので、本当にそうなのかは知りませんけどね」


 ワーサーは動けないセイジにゆっくりと近付いていく。


「それにしても、やっぱりさっきの怪力が引っ掛かるんですよね。毒は痩せ我慢していただけだったということでしょうか。まぁ、この毒で倒れてくれるのなら関係無いですね」


「た…………ッ」


「はい?」


「倒れるわけ……ないだろ……ッ!!」


 恐怖に染まっていたはずのセイジの瞳に、再び力が生まれていた。


 一歩、前に踏み出す勇気が湧いていた。


「……君、空気読めないって言われたことありません?」


「かも……なッ!」


「怪力で、毒の効き目が悪い……いやはや、非常に相性が悪いですね。ひたすらに毒を注入しまくれば、いつしか倒れてくれるとは思いますけど、それを実現するには君の怪力と俊敏性が邪魔ですね」


「時間稼ぎの……つもりかッ!」


「ええ。そうですよ。毒は徐々に全身を蝕んでいくものですから、ぼくにとって時間は武器なんですよ。ということで、あまり使いたくないですけど、使わざるを得ない状況なので致し方なく、最終奥義を使わせていただきます」


 ワーサーが、バサッとローブをはためかせると、そこから小さな球体がいくつも落ちてくる。


 それらは床に落ちると僅かに跳ね返って、重力に従い右へ左へとコロコロ転がっていく。


「人間、結局のところ、心の奥底に一度でも生まれてしまった恐怖は超えられないんですよ」


「なにをッ!」


「ご想像はご自由に」


 そして、小さな隙間から空気が漏れるような音が聞こえ、次の瞬間には、ガスに引火した炎の如く速度で、洞窟内を紫色に染め上げた。

評価ブクマ感想で速度バフが付くので良ければお願いします!




ちょっとでも続きが気になれば!是非!!

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