57話──数の暴力
「クソ……どんだけ居やがるんだよこいつらはよッ!」
殺しても殺しても、どんどんと湧いて出てくる敵に、男は苛立ちを隠せないでいた。
「おい!もっと回復できねぇのか!?」
「すみません、もう魔力が……!」
「マジかよ!」
長時間の戦闘。回復系魔術の不足。男にとって最悪な状況だった。
男の全身の血管が今にでも破裂しそうなほどに膨れ上がり、浮き出て見える状態になっている。
攻撃は全て躱している、もしくは鉄の棒で受けているというのに、口の端から血が垂れていた。息は荒く、膝に手を付きかけることもあった。
まだ崩壊してはいないが、優勢とは決して言えない状況だ。
「冗談じゃねぇぜ……レンナはどこにいんだよ。このままじゃじり貧どころか、押し負けるぞ」
男には選択肢があった。
一人で逃げる。
このまま限界まで戦う。
ゼットの仲間を逃がして、一人で戦う。
その三つだ。しかし、逃げるという選択肢は既に潰れてしまっている。敵よりも早く走って、さらに魔術を避けて逃げることができないという事実。それは、男の体が物語っていた。
ゼットの仲間の三人も、既にボロボロ。
回復系魔術や支援系魔術を使うエフェメラルと、攻撃系魔術を使うテュアニスは、魔力を使い切ってしまっていてほぼ無力。サトルも、戦意は失っていないが良くてもタイマンという条件で二回くらいしか乗り越えられないだろう。
ほぼ、男が守っているような状態だった。
つまり最も生き残れる可能性がある選択肢は、これ以上足手まといになる前に逃がし、一人で立ち向かうことだ。
「それしか……ッ!」
苦渋の決断だ。
「おい」
「なんだよおっさん」
「お前も下がれ。後ろの魔術使えねぇ二人のとこまでだ」
「エフェメラルとテュアニスは無理でも、私はまだ戦えるって!」
「もう無理だ。とっくに限界超えてんだよお前は」
「でも!」
「さっさとどっか行きやがれ!!死にてぇのか!!」
「ッ……」
男の叱責を受けたサトルは、言葉を失い立ち止まる。
言い方を誤ったかもしれないと思ったが、男にフォローする余裕はない。
「俺が相手だ!!」
単騎での特攻。
なんでこんなことやってんだと、後悔が過る。
家に引きこもって入ってくる奴だけ殺していれば、こんなことにはならなかったのに。
もう、後には戻れなかった。
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