56話──兆し……?2
「さて、次は貴族の小娘のところにでも行きましょうかね。会話くらいなら許されるでしょう」
妄想が膨らむ。
神領星にとって無必要な存在となるまでが楽しみで仕方ない。あの希人の目の前で犯してやって二人の反応を見るのも面白そうだ。
小娘にも想像を掻き立てるような話をしてあげよう。
──ィー
「……なるほど」
ここが最奥なのを考慮して、今の小さな音……
「かなり遠くですね。範囲外付近で誰かが死にましたか。事故でしょうか?それに今の音……重なっていましたよね」
「すみません。私には音が鳴ったという事しか……」
「そうですか?」
「ですが、ワーサー様がそうおっしゃられるのであれば重なっていたのだと思います」
「うーん、二人死んだと思うんですよね。同時に二人が病死するとは考えられない。事故か、他殺か。同時に死ぬとなると即死するような事故、洞窟の崩落とかですけど、この洞窟は生成させたものですからありえませんね。セブンファイブはどう思いますか?」
「他殺の可能性が高いのではないかと思います」
「やっぱりそう思いますよね。更に二人をほぼ同時に殺すとなると、相当な実力者だと見受けられます」
想定以上に早い。
これではアリス・グリントを人質とした身代金の請求。及び、詮索を防ぐ脅しが届く前に侵入されているようだ。
……二人か。
「あれは今日でしたよね」
「はい」
「となると、伝達役の捨て駒二人がちょうど出くわしてしまい殺されたのでしょう。ただ、グリントへ散開した者たちには指定の時間に暴れてもらうよう伝えているそうなので、その点に関しては問題ありませんね。侵入者の対処はぼくが向かった方がいいでしょうかね」
「そうしていただけると」
「わかりましたよ。では希人の見張りお願いしますね」
「はい。承知しました」
希人を閉じ込めている部屋の鍵を閉め、セブンファイブに命令して常駐させる。
「念のためあの小娘を近場まで連れていき、緊急時の盾として利用を……いや、ビリーブという老人がどれほどの強者なのか不明な以上は初めから傍に連れ出し、即殺できるような体制を整えておくべきでしょうか。確実に相手が手出しできないような状況を……」
素直に考えていれば、貴族であるあの小娘を優先するだろう。
そして、我々にとっては希人が優先。
「いざとなれば、小娘を差し出すことで希人を満月の夜まで確保……いや、しかし上層部が許可するとは思えないですね。……ぼくが考えても仕方ありません」
セブンファイブから目を離し、微妙に薄暗い通路の先を見た。そっちからはガヤガヤ驚き焦り、慌てふためいている無様な者たちの声がする。
ワーサー!ワーサーはどこだ!と、ぼくの名前を呼んでいる。
「普段は偉そうに見下しているくせにこういう時は無能に成り下がりやがってよ。面倒ごとを片付けてくれてるから手を貸してやってんだ。おれはお前らの犬じゃねぇんだよ……ですよ」
次の契約更新時は、定期的な金と少女の要求量を増やすか。
「さて、ワーサーが助けに行きますよっと」
足を一歩。二歩。そして、
──ドシャ。
それは、唐突に背後から聞こえた音だった。
ぼくにとって、聴き馴染みのある音だ。何度も聴いてきた。色んな事の終わりに聴く音だ。
そして、すぐさっきも聴いた音。その時は副音声が混じっていたけど。
重く、柔らかく……まるで肉が落ちたような。
最悪に備えて気を張りつつ、慎重に振り向く。
「これは……」
目の前に広がる光景は、一部想像通りであったが、一部想定外なものだった。
部屋の前に立たせたセブンファイブが倒れていた。これは想像通りだ。しかし、鉄扉は開いていない。鍵も破壊されていない。
「……動揺してしまっていましたか。鉄扉を破壊するなら金属音は必ず出てしまう。壁を破壊しようにも、同じように破壊音が出る。冷静に考えて、希人が出てきているはずがありませんでしたね。……体調不良でしょうか」
セブンファイブの傍にしゃがみ、その額を触ってみる。
「……過度に冷たくもなく、熱くもない。意識は……無いですか。残念ながらぼく、病気には詳しく無いんですよね」
仕方ない。
代わりの者を呼び見張りを頼むか。
──ビーー!!
それは、倒れた者から目を離した瞬間のことだっだ。
神具の一つである、神鳴。ただ音を鳴らすだけしかできない神具。ただし、自由自在に条件を指定することができるものであり、我々は命の消滅と共に警告音がなるように指定していた。
個人の意思で鳴らせれば、緊急事態で無いのに鳴らされる可能性がある。逆に、瞬殺されれば警告音を鳴らせぬまま終わる。
だから、確実に緊急性がある時のみ警告音を発し、かつ誤作動を防ぐためにはその条件が最適だった。
そしてその警告音が今、セブンファイブから発されている。
神具に誤作動はありえない。
この者はたった今、確実に死んだ。
「……仮に、脳に酸素が行き届かなくなったりしたとて、確実な死を迎えるのはもう少し時間がかかる。仮死状態になるはずです。こんなにも早い死亡など、病気ではない、外傷によるものでしか……」
例えば脳がズタズタにされたとかか。
警告音が鳴り続けている中、セブンファイブの体を蹴って、体を仰向けにしてみる。
「……」
変化は無い。
「そんなはずは……」
念のために、もう一度だけ蹴って、うつ伏せに直して──
頭があった位置に、小さな血溜まりがあった。
そして、そのことに気が付いた瞬間、
鉄扉が視界を埋め尽くし、全身が穿たれた。
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