54話──ワーサー2
「三十秒経っても動きが無ければ、ぼくはそちらに向かい鍵を閉め直します」
返答は無い。
ただ、首の鎖を外したと思われる金属音が鳴った。金属同士が擦れてぶつかる音と、床に落ちた音だ。
「やはりそうですよね。その選択を取りますよね。その行ないをしなければ君は愛の証明ができないですからね。果敢にぼくに立ち向か合い、ぼくを倒し、アリス・グリントを救い出す。人間が持つ最大の価値は命。その命を犠牲にする気持ちで……いいえ、命を犠牲にしてでも一人の愛する者のために生きる。それこそが君にできる証明」
しかし、まだ動いていないのか、近付いてくる音は聞こえない。
「今の君にはこれしか証明する術が無い……というのに、君は何故動かないんですか?三十秒経過していますよ?」
問いかけてみるも、やはり返事はないし、動く音も聞こえない。
「……それも一つの選択ですね」
結局諦めたか。
心に浮かんだのは、そんな失望に近い悲しみの感情だった。
コツ、コツ、と足を動かし元の場所に戻る。靴音は自分のものだけ。
「戦うこともせず、逃げることもせず、飽きられるという選択を取るとは……。ぼくが君に告げた選択の一つではありますが、本当にがっかりですよ」
見えた闘志も偽物だったということか。
「それともただの気のせいでしたか……希人には期待していたんですけどね」
さて、どんな顔をしているのか。喜怒哀楽のどれが強く浮かんでいるのか……
「おや?」
希人がいない。鎖だけ捨てられ、その姿はどこにもない。
何故?歩き回る音も、石畳を伝う振動も感じられなかった。
……逃げられた?いや、ありえない。この部屋に簡単に出れる抜け道なんて無いのだから。
そもそもここは地下。ここはぼくが指定した場所。だから良く理解している。
外と繋がっているのは、ぼくが立っていたところの後ろにあったドアと、崩れた天井の穴だ。それにその天井の穴も今は塞がれてるし、もし取り除いたら光が入ってくるはずだからそれも無い。
どこに行ったんだ……
「……ん?これは……砂ですか」
パラパラとなにかが地面に落ちる音がしたため、ワーサーその音が聞こえた辺りで手を動かしてみると、その手には砂粒が降りかかった。
「本当に、老朽化が酷いですね。言えば対応してくれるのでしょうか。君はどう思いますか?」
さり気なく問いかけてみるが、もちろん答えてくれるはずがない。
「……老朽化しているとはいえ、いきなりざらざらと落ちてくるものですかね。振動も無かったというのに、急に…………はッ!?まさかッ!!」
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