50話──外の戦い2
廊下が血で赤く染まる。壁や天井に血が飛び散り、床には多量の血が流れ落ちて真っ赤な水溜まりが形成されていく。
「クソ。汚しちまった……首をへし折ってれば汚れずに済んだってのに。そもそも初めから家を出て近付く奴全員殺してれば……」
死体の胴体から腕を引き抜く。男は力無く落ちた死体に対して、念には念をと首に足を置いて体重をかけていく。そして、鈍い音が鳴った。
「こいつ、ジェルミニエが言ってた奴らか。クソ、そういう手段取って来るんなら殺しに回るしかねぇじゃねぇかよ」
男は死体の服を掴んで引きずり、玄関まで持っていく。
それから玄関の靴箱の裏に立てかけていた鉄の棒を手に取って、ドアを開けると死体を外に投げ捨て、手に付いた血を服の裾で拭った。
未だ悲鳴が聞こえてくる。
左右を見渡すだけでも、何人も黒い奴らが見える。
「……これは、俺の思い出を穢したお前らが悪いんだ。そうだ。家だけじゃない。街にも俺の思い出は残ってるんだ。穢す奴は全員死ね」
鉄の棒を握り締め、殺意を露わにする。
逃走する人たちの中、一人だけその場で動かずに武器と思われるものを所持していれば、集中的に狙われるのは当然。
周囲の黒ローブが全員男に注目し、一斉に襲いかかってきた。
「死ね!!」
最も勇敢だった黒ローブが、男の持つ鉄の棒により頭頂部をへこまされて息絶えた。
次に男に接近していた者は、振り向きざまに放たれた蹴りが側頭部にめり込み、首の骨が折れ、頭蓋が砕ける。蹴りの威力で飛ばされたその体は、向かいの家の壁を破壊してやっと止まる。
一瞬のうちに二人もやられたという事実に怯まず、蹴りにより足を上げている無防備な男に一撃を食らわせ敵を討たんとした者が、いつの間にか男の手から手放されていた鉄の棒に喉を貫かれる。
それは、蹴りを入れる直前に手放された鉄の棒が、地面に落ちる直前にもう片方の足で蹴り上げられたことによって生み出された死角からの攻撃だった。
男は蹴りに使った足が地面に到達した瞬間、そこで更に攻撃しようとはせず足腰の関節を折り曲げて姿勢を低くし、離れたところの屋根上に立つローブの者から撃たれた氷弾を躱す。
本来の標的を失った氷弾が、男に刃を向けていた者を貫いた。
回避した男は曲げていた足をバネのように使って跳躍。突き刺さっていた鉄の棒を抜き取り、それで追撃で撃たれていた氷弾を打ち砕いた。
「邪魔だな……!」
男は魔術師の存在にストレスを感じ、優先して殺すと心に決める。
だが距離があり、更にまだまだ近接戦闘を挑んでくるローブの者が多い。だから狙いを定めて魔術を撃つ余裕がない。
手に馴染んだ鉄の棒であればこの距離から投擲しても直撃されることができる自信が男にはあった。しかし、今武器を失うことはできない。
包囲網を抜け出し、魔術師を殺しに行かなければならない。
しかし、それには時間がかかる。時間がかかればかかるほど、敵の増援が来てしまい更に時間がかかることになる。もし魔術師が増えれば、逃げることしかできなくなるだろう。
数の暴力には勝てない。
「……あ?」
しかし、そんな男の視線の先、予想だにしないことが起こった。
魔術師が燃え上がったのだ。その全身を炎が包む。魔術師は炎から逃れようと体を振り回すが逆効果。炎はさらに強く燃え上がって火だるまとなり、黒い煙を上げるだけのなにかと成り果てた。
自爆したのかと思ったが、あの威力の氷弾を生み出し操作できる魔術師が失敗するとは思えない。
第三者によるもので間違いない。
「大丈夫ですか!」
「……」
そこに現れたのは、三人の女。その中の誰かが魔術師を討ったのだろうと男は推測した。
だからこそ男はローブの者たちの注目がそっちに移った瞬間を利用して包囲を抜け、ローブの者たちとも女たちとも距離を取る。そして、女たちを睨みつけた。
「止まれッ!それ以上近付くな!」
男の言葉に、三人の女は足を止めた。ただ、男の言う通りにしたというよりも、その言葉に驚き足を止めていた。
「お前らは何者だ!名乗れ!」
魔術師を討ったから仲間だと信じるのはあまりにも能天気だ。第三陣営の敵がいる可能性も踏まえ、男は警戒を緩めない。
女たちは顔を合わせ話し合い、一人の女が代表となり男に名乗る。
「私たちは冒険者パーティー、豊炎です!緊急事態のため救援に参りました!」
「豊炎だ?……お前がリーダーか」
「違います。リーダーはここにいません」
「なら、リーダーの名前を三人同時に違わずに答えろ。嘘だとわかった瞬間、俺は有無を言わさず敵とみなす。次にお前らが喋る言葉はリーダーの名前だけだ。それ以外の言葉を話せば、示し合わせるために相談しているとみなし、攻撃する。妙な仕草をしても攻撃させてもらう。俺がこれを地面にぶつけて音が聞こえたら喋れ。一人でも明らかに遅れていても駄目だ。いいな?」
この時も、ローブの者たちの動向に気を向けつつ、鉄の棒を女たちに向ける。
女たちは男の言葉に頷いた。
「そうか。なら……!」
横やりをしてきたやつを叩き潰す。
「……いくぞ」
よく見えるよう、腕を伸ばして地面を叩いた。
「「「ゼット」」」
「……そうか。それがお前たちの答えか」
男は……
「信じよう」
女たちが、確かに冒険者パーティーの豊炎であり、ゼットの仲間だと認めた。
実を言うと、ゼットが豊炎という冒険者パーティーのリーダーであり、仲間に三人の女がいることは知っていた。だが、その女の名前も顔も知らなかった。
だから、騙っている可能性を捨てきれず、プレッシャーを掛けて質問し、ボロを出さないか確認したのだ。
「俺は全面的に信用する!!お前らはサポートしろ!!回復系魔術を使える者はいるか!」
「私が使えます!」
「なら定期的に俺に掛けてくれ!詳しく説明すると時間がかかるから省略させてもらうが、長時間戦ってると自壊しちまうんだ。頼んだぞ!」
そうして、エフェメラル、テュアニス、サトルの三人と共に、神領星との戦闘が始まった。
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解説したいことが多すぎるし、自分でも把握しきれなくなってきている現状




