48話──救出作戦開始2
言われた通りに陣形を組み、洞窟の中に足を踏み入れていく。段々と光が弱くなり、足元が見えにくくなる。みんなの僅かな足音も、反響して響いている。
遂には暗闇となり、俺はみんなの足音を頼りに着いていった。
「……!」
ある程度進んでいくと、今度は段々と光が強まっていった。
原因は、蓄光石が埋め込まれていたからだった。周囲の魔力を吸い取って光を発する石だ。
それは均一な間隔で配置されており、洞窟内を不便の無いように明るく照らしている。
つまり、奴らの生活領域に近付いているということだ。
騒がしくなっていないし、ギルマスもなにも言わないことから、まだ侵入はバレていないと思われる。
更に進んでいくと、洞窟の通路の幅、高さが広がっていった。地面はかなり平らで歩きやすく、明らかに人工的に作られている綺麗さだった。
やがて左右へと続く分かれ道が見えた時、その分かれ道から十五メートルくらいは離れた場所でギルマスが足を止めた。
左右どちらも直角に曲がっているため、先の光景を確認することはできない。
ギルマスはどっちに進むか悩んでいるのだろうか。
そう思いつつ、他の人に倣って足を止めると、ギルマスがビリーブさんとなにやらハンドサインで意思疎通を取っていた。
「……」
「……」
内容はわからなかったが、十秒ほどの意思疎通で終わったらしく、ギルマスが後ろを向いた。それから手で静止するよう促すと、ギルマスもその場で待機。
ビリーブさんはというと、俺たちを置いて前方へと歩み寄る。
「……?」
そこで一つ、気が付いた。
ビリーブさんの足音が聞こえないのだ。
もふもふの地面ならまだわかる。それなら俺も頑張れば耳をすませばやっとわかるくらいの足音まで抑えることができる。かもしれない。
でもここは、硬くて砂利もある地面だ。だというのに、ビリーブさんから足音は聞こえない。体を動かせば服が擦れて音がなるだろうに、それすらも聞こえない。
──コッ、コッ。
聴覚に集中していたからか、ほんの少し硬くて軽めの音が聞こえた。
しかしそれは、ビリーブさんから発されている音ではない。
変に引き延ばされたようなその音は、遠くの方から響いている音だった。
ビリーブさんは無音で真っ白な薄い生地の手袋を外すと、右手の人差し指と中指を伸ばし、それ以外は曲げた。そしてその手を左手で優しく握り、なにも携帯されていない左腰に添えた。
まるで左手の鞘から右手の剣を抜こうとしているようだった。
それから姿勢を低くした。頭の高さは直立している時の半分くらいの位置だった。
ギルマスが魔力を超感覚で感じ取れるように、イアさんが超強固な防御系魔術を無詠唱かつ透明で使えるように、ビリーブさんにも超凄いなにかがあるのだろう。
緊張で心臓が暴れる。
「ッ……」
その音は段々と大きくなっていく。
──コツ、コツ。
近付いてくる。
コツン。コツン。コツン。コ──コツンッ。
確実に足音だった。それも、ハッキリと聞こえ始めたからわかる。二人以上の足音が重なっていた。
近い。俺にはそれしかわからないけど、確実に、もう、来るッ!
「──。」
……
……俺には、なにをしたのか見えなかった。
ただ、気付いた時にはビリーブさんの右手が斜め上にあって、右の曲がり角から人が二人倒れてきた。
一瞬のうちに、それだけのことが起きていた。
凄い。その一言に尽きる。
「……待て」
しかし、ギルマスの様子がなにやらおかしかった。
ビリーブさんの快勝だったというのに、倒れている死体から決して目を離さず、慎重に左手を前に出した。
「下がれビリーブ」
「どういたしましたか」
「……魔力がおかしい。普通、生き物が死ぬと体内に抱えていた魔力を垂れ流すようになるんだ。蓄えるための壁が取っ払われたようにな。だが、あの死体。二つ共だ。魔力が一切流れない」
「操り人形って線とかないんですか?」
「俺が感じていたのは間違いなく生きた人間だった。なのに──」
──ビーー!!
「ッ!?」
突然、洞窟内に爆音が響く。
それは両手で耳を塞いでも頭が痛くなるほどの音量で鳴り、俺だけでなくギルマスや他の人たちも全員がその音に反応していた。
かなり長い秒数音が鳴り続いた。ただ、その時間を数える余裕は無く、耳を塞ぐことしかできなかった。
やがて音が止む。
爆音からの静けさ。その環境の落差からか、普段よりも世界が静かに感じた。
「……まずったな」
ギルマスがボソッと呟いた。
「ここまでほぼ直線だったから回避はできないと思ってビリーブに対処を頼んだんだが……すまん。相手の方が一枚上手だったらしい。どういう仕掛けかはわからないが、仲間を呼ばれた」
「……死亡をキッカケにか、もしくはあの共通しているローブに仕掛けがあるか、それともあの人間は特別なのか。考えられる可能性はそれくらいですね」
イアさんは冷静に分析していく。
しかし、手を下したビリーブさんの額には冷や汗が浮かんでいた。
「大変申し訳ございません。全てわたくしの失態です。まさか外と中で変化させているとは……!」
「仕方ないですよ。そこまで考えが至ってなかった私のせいでもあります」
「中では緊急を知らせるために、外では人を集めないようにと切り替えできるって可能性もあるな。ともかく、一度外で殺してたせいで無意識のうちに殺しても問題ないと思い込んでいた。いや、思い込まされていたのかもしれないな」
「どうするの~?」
こんな状況でも相変わらずのほほんとしているネイビーさん。いつものほほんとしているんじゃなくて、通常がのほほんとしているような人なのかもしれない。
「あの音では、気付かれていないと希望的観測をすることは愚行となるだろう」
「そうだな。俺もジェネドに同意見だ。となると、敵は人質を有効活用しようと考えるだろう」
「人質……!もしかしてアリス・グリント様を!?」
「落ち着いてくださいよゼット君。まだ負けたわけではないんですから。それで、ダンプさん。次の指示をお願いします」
イアさんの言葉を受けて、ギルマスは即座に決断し、俺たちに指示を出した。
「隠密行動は終了だ!次に求められることは短期決戦!急ぐぞ!!」
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