40話──男の心
あいつがいなくなったらしい。
それは、あいつとの待ち合わせ場所に来た、あいつの友達のゼットから聞いたことだ。
あいつにゼットという友達がいることは以前から知っていた。だが面識は無かった。会う機会が無かったし、そもそも会う必要が無かった。
それに、俺とあいつの知り合いが会うことは、あれを知ってからは避けたいと思っていた。あいつとその知り合いの関係性にヒビを入れてしまうかもしれないと考えたからだ。
しかし、そのゼットから俺のところに来たとなると無視したり無愛想にするわけにはいかない。
俺があいつと関係を持っている以上、俺の行ないがあいつの印象に悪影響を及ぼしてしまうかもしれないからだ。
それに、まさか俺を騙そうとしてあいつの友人を騙るわけが無い。もっと良い方法があるだろう。
だから俺は、とりあえずそいつを信用することにした。
信用に値するから信用するのではなく、とりあえず信用することにした。理屈ではなく感情で決めた。
あいつがいなくなった。
でもどこにいったのかはわからない。
一人でいなくなったのか、誰かに攫われたのか、それとも殺されたのか……不明とのこと。
それに、ゼットが言うには、あいつと共にアリスもいなくなったかもしれないらしい。
アリス・グリント。貴族の娘。正直嫌な予感はしてた。
アリスのせいなのかはわからないし、関係しているのかもまだ断定できないが、初めて会った時からセイジと関わって欲しくないと思っていた。
俺自身貴族になにかされたわけじゃないが、結局のところ貴族と庶民は相容れない。生きる世界が違い過ぎる。貴族と関わるだけで責任も反感も増える一方だ。
……だが、俺はアリスと話し、認めてしまった。
あいつの言葉も聞いて、本当の幸せとはなにかと考えた。どんな苦悩があろうと、あいつはあいつの道を進むべきなんだと、俺が介入していいものじゃないと気付いた。
色々考えてしまう。
アリスを責める方向の思考だ。
貴族だから悪人からの注目が高く、そんな奴と仲良くしていたからあいつも調査されたのではないかと。
そこから稀人だとバレる可能性。
稀人の血は特別だと聞いたことがある。混じりっ気の無い、純度が高い血だと。
……スキルという力も怪しい。俺が調べた情報の中に、過去にスキルの抽出実験が行われたというものがあった。
なんにせよ不安だ。
あいつは強い奴だ。それは心から思っていること。だからこそ、とてつもなく不安になる。
命を奪われていないのなら、抵抗する余地があるということだ。
仮にあいつとアリスが一緒に攫われ、更にどっちも生かされ、あいつがアリスの状態を知れる場合……。すなわち、もしあいつがアリスと一緒にいるのなら、あいつはアリスの為に限界を超えてでも抵抗するはずだ。
決意の強さと言うべきか。あいつはやるときはやる男だ。
そうなる可能性なんてごく僅かだとわかってはいるものの、僅かにあるのだから有り得ない話ではない。
なにもなければそれでいい。
俺の人生に幸福なんて求めてない。
だから不幸も起きないで欲しい。
なにもない、平行な人生でいい。
でも、もしまだ俺に幸福を受け取る権利が残っているんなら……
全てあいつに与えてくれ。
思い付いたばかりでまだ構成練ってる最中なので更新は遅いですが、評価ブクマ感想で速度バフが付くので良ければお願いします!
ちょっとでも続きが気になれば!是非!!




