32話──交友
セイジは男に相談した結果、最終的にDへ上がることに決めた。
だから、今まで避けていたDの昇格試験に挑戦することになるのだが……
「Dになった」
「え」
宿でセイジからの報告を受けたゼットは、力の抜けるような間抜けな声で反応した。とてもあっさりとした報告だったせいで、心構えができていなかったのも関係している。
だが、あっさりとした報告になるのも仕方ない。
そもそもセイジは通常通りに仕事をしていればとっくにDになっている。それは男からの評価でも予想できることだ。
セイジはわざと、対人ゲームでなら禁忌の所業であるランク止めを行なっていたのだから、その縛りを解除すれば苦労なくDに上がれるのは道理だ。
「今日Dランクになってきたぞ」
思考停止しているゼットに、セイジは再び告げた。
「でぃー……らんく……。あー!やっとかよー。セイジマジで遅いって」
「俺はお前と違って強くないんだよ。遅くなるのも当然だろ」
「俺が強いのは当然として、セイジだって弱くはないと思うんだけどなー」
「否定しないんかい」
「ふっ。俺は謙虚より、自信を持つ派だ」
「そんな派があるのかよ。それで、お前の調子はどうなんだ?」
「俺か?まあまあってところだなー」
「まあまあ?あんまり上手くいってないこともあるのか?」
「いやねー。ちょっと行き詰ってるんだよ」
「強さ?ランク?それとも恋愛関係?」
「最後のは要らねぇよ!……強さもランクもだ」
ゼットはベットに寝転がりながら、腕と顔をせり出して何かを探す。
「具体的に話せるか?」
「話せるけど……ちょっと待てよーー……。ほい」
「おっと。これは……ありがたく頂くわ」
ゼットがセイジに投げ渡したのは、コココの実と呼ばれるもの。
甘味が強く、その絞り液を濾して加熱し水分を飛ばすことで甘味料になる。
それだけでなく、外皮から中身まですべて食すことができ、一つの木に何百と生るためかなり安価で購入できる優れもの。一般市民から貴族まで、幅広く生活に馴染んでいる食材だ。
「あー、それ洗ってないから適当に剥いでから食べて」
「はいよ」
「でまぁ、話なんだけど」
ゼットもセイジも、同じようにコココの実を剥き始めた。
「Cから組み始めて、Bになったってのは言ったよね?」
「うん聞いてる」
「Bになるまでは順調だったんだけど、Bになってからあんまりパーティーとしての成長が見られないんだ」
セイジはコココの実を小さく噛み切って咀嚼しながらゼットの話を聞く。
「俺含め全員強くなってる感じはあるんだけど、パーティー全体の……連携?チームワークの良さがもう天井に着いちゃってるみたいな?」
「ふむ」
「トールオークって分かる?」
「見たことないからわからんけど、名前的に大体どんな奴かは想像付くな。そのトールオークがどうしたんだ?」
「Bランクの依頼でそいつの討伐を受けたんだが……」
「だが?」
「硬いし早いしで逃げ帰ってきた」
「……マジか」
セイジは思わずコココの実を口に入れようとしていた手を止める。
対してゼットは、未だに口を付けてない実を見つめながら話を続けた。
「更に上を目指すならパーティーを組み直すべきなのかな」
「俺に言われてもな……ゼットたちの戦い方とかしらないし」
「そうだよねー」
「ただ、リーダーのお前がそう思うんなら俺は組み直すべきだと思う」
「うーん……」
「そうして悩むなら留まるべきだな」
「どっち!?」
「はぁ……まずこれだけは言っておくが、選択の主導権は全てお前にあるからな」
「それはまーわかってるけど、とにかくなんか助言とかくれない?」
「それなら俺は完全な部外者として好き勝手言わせてもらうけど、お前視点でみんな強くなっていってるのなら、編成の問題か人間関係の問題だな」
「人間関係は悪くないと思うよ?」
「ゼットからしたら悪くないのかもだけど、他の三人は女なんだろ?男にはわからない軋轢があるかもな」
「納得だわ」
「女心を知ることって宇宙全てを知ることより難しいらしいからな」
「なんだそれ」
ゼットは呆れ顔で手元の実にかぶりついた。
「……じゃあさ、編成の問題ってのはどういうこと?」
「実際の戦いで通用するのかはわからないけど、アタッカー、ガンナー、タンク、ヒーラー、サポーターみたいな感じで役割分担するもんだろ。お前のパーティーはどうなんだ?」
「俺のパーティー……」
ゼットはこれまでの戦いを思い出す。
「とりあえず俺は前衛で攻撃する役割だ。それと、たまに魔術で遠距離攻撃する感じ」
「他の奴らは?」
「サトルが俺と同じような感じ。テュアニスはほぼほぼ攻撃系魔術だけ。エフェメラルは回復系魔術と支援系魔術でサポート」
「ちゃんと覚えてるんだな」
「リーダーだからね」
「敵の攻撃を引き付ける奴はいないのか?」
「それは前衛の俺が担ってる感じだな」
「攻撃受けて耐えれる?」
「無理」
「攻撃避けれる?」
「少しなら」
「うーん……。ひたすら気を引いて避けまくる回避タンクってのもあるけど、結局それって攻撃を受けて耐えるタンクよりも敵の隙が生まれにくいんじゃないかな」
「そうかな」
「それに、少ししか避けれないならその役割は難しいよ」
セイジは半分ほど食べた辺りで手を止めた。
「ゼットのパーティーは魔術多めなんだろ?そうなると標的の動きを制御できる人がいないと命中率が落ちるだろうし、自衛手段に乏しい人が狙われたらどうしようもないだろ?回復役が狙われたりしたらなおさらだ」
「なるほどー。というかセイジ、そこまで考えれるってなにか経験でもあるのか?」
それから、周りに聞こえないように近寄って静かな声で、
「この世界に来る前の世界でなにか?」
「なにもない。なにもできない一般人だった。それは強さからわかるだろ。経験あるならEで留まったりしないって」
「……確かに」
「保険掛けさせてもらうけど、この俺の考えは俺の経験が元になってるわけじゃないから実戦で通用するかは知らない。とにかく助言くれって言われたから言ったんだわけで、責任は持たないぞ」
「責任取らせる気も追及する気もないけどさ、つまりどうすればいいの?」
「あくまで部外者として言わせてもらうなら、解散すれば?」
「それは嫌だな」
思い付いたばかりでまだ構成練ってる最中なので更新は遅いですが、評価ブクマ感想で速度バフが付くので良ければお願いします!
ちょっとでも続きが気になれば!是非!!




