30話──男とセイジ2
「……スキル?」
俺の言葉を聞くと、腕を組み考え込む仕草を見せた。
「……そんなこと、言ったことも言われた記憶も無いんだか」
「あれから色々調べたんだよ。少しでも参考になればと思ってな」
稀人は謎多き存在。
俺は今までそう思っていたが、調べてみるとかなり興味深い情報だらけだった。信憑性は微妙なところだが、稀人に関してはわざわざ偽の情報を流す価値が無い。
稀人の総人口はごく少数。そのスキルと呼ばれる力のおかげで、稀人を騙ることは難しい。だからその分、稀人本人から明かされる情報が正確に流れ、しょうもない他人の情報はすぐに薄れる。
「普通じゃない力にはそういう名前があるらしい。聞き覚えは?」
「関係あるのかはわからないけど、聞き馴染みのある言葉だ。多分俺に似た奴らが名付けたんだろうな」
そう言うと、半分ほどまで減ったバットウを、三つ一気に掴んで口に入れた。
それから僅かに顔をしかめた。
細かくして口に入れないと角が刺さって痛くなるのは当たり前だろ……
「ほれへ……」
「呑み込んでから喋れ」
「お……」
年齢差のせいなんだろう。子守りをしている気分だ。
「……」
「……」
嚥下するまで待つ。
「……。それで、成長速度が力なんじゃないかって言ったよな」
「おう」
「正直、そんなわけないだろ。とは言えない」
「思う節があるのか?」
「あぁ。具体的にどうとかは言えないくらい曖昧なんだが……当てはまる状況はバブベアー戦と、フラワーワーム戦かな」
「他は当てはまらないのか?モグラウオと、ワイズラット。それと、ペールマンとかミネミズとかともも戦ったよな。俺が見てねぇところだと、後はゴブリンなんかとも戦ったんだろ?」
「どれも当てはまらないな。さっき言った二つだけだ。その二つの生物と戦った時だけ、なんか頭が冴えてる感じだったんだよ」
「冴えてるだ?なんだよそれ」
「だから曖昧だって言っただろ?それに、当てはまるのはバブベアーとフラワーワームだけなんだが、そいつらと戦えば絶対その感覚があるわけじゃないんだ」
「どういうことだ?」
「フラワーワームは初戦だけ。バブベアーもあんたの試験の時と……初めて襲われた時も当てはまるかもしれない」
「初めて襲われた時ってのは、お前がアリスと出会った話のことか?」
「そうだ。ただそこに関しては本当にそうだったかもしれないってだけで、試験の時よりは確信が無い」
「なるほどな。でもまぁ、その表情を見るに、どうするかは決まったようだな」
「あぁ。もう少し夢見てみるよ」
「それが良い。子供は現実と夢を半々で見るもんだ」
「子供っていうほど若くないと思うんだが……あんたから見れば子供か」
喋り方的にも、声色的にも、さっきよりはかなり冷静になっているようだ。
「さっきの続きなんだけどな、一昨日バブベアーと戦ったんだ」
「ほー。で、お前の言う感覚は?」
「その時は何ともなかった。仮にあんたの言う力が俺にあるとして、俺が感じた変な感覚と無関係ってわけじゃないとは思うんだ。と、なるとだ」
今度はちゃんとだけ手に取り、半分ほど奥歯の方に入れて噛み砕いていた。
「バブベアーとフラワーワーム以外でその感覚を感じたことが無いから、特定の生物との初戦闘が条件になってるわけでは無いと考えていい。初めて襲われた時は戦わずに逃げていたから、戦わなければいけないって条件も無い。バブベアーで二回発生してることから、一つの生物で一回までってことも無い。」
「で、結局条件は?」
「わからない。回数が少なすぎて共通点が見えないんだよねー。だから、もしかしたらランダムって可能性もあるな」
「特定の生物との初戦闘とか言ってたけどよ、そんな限られた力なのか?」
「さあな?言葉に聞き馴染みがあるってだけだから全部俺のただの予想でしかないんだよ。それに、この考えもゲームみたいなものだし、ぶっちゃけ九割くらいの確立で外れだろうな」
「お前、時々意味わからんこと喋るよな。それは故郷の言葉なのか?」
「故郷か……」
「どうした?」
「いや、良い表現だなって思ってさ。うん。故郷の言葉だ。でもてっきりこの言葉はあるものだと思ってたよ。遊びって言葉と言い換えれるような言葉だから」
「遠くの方じゃ一般的になってるかもだが、とりあえず俺は知らねぇ言葉だったな」
「ふーん」
「故郷が恋しいか?」
その質問をしたとき、バットウをつまむ手が止まった。
「……別に」
咥内に溜めるような、くぐもった声だった。
「俺にとっては、この世界の方が楽しいよ」
「……そうか。ありがとうな」
思い付いたばかりでまだ構成練ってる最中なので更新は遅いですが、評価ブクマ感想で速度バフが付くので良ければお願いします!
ちょっとでも続きが気になれば!是非!!




