26話──恋人と3
「今日はありがとうアリス。とても楽しかったよ」
「こちらこそ楽しかったですっ!でも本当によかったんですか?全部お金出して頂いて」
「もちろん。俺の自己満足だから気にしないで」
今日の出費は全て俺が出した。
アリスに出してと言われたわけじゃないし、なんなら払うとまで言われた。だがそれは男としてのプライドに賭けて絶対に譲れない。アリスに金を出させるなど言語道断だ。
日本では男性がデートの際にお金を払うという風習のようなものがあった。
強制でも義務でもないものだが、暗黙の了解だろという一部の人間の意見が暴れていた。
俺はその暗黙の了解が大嫌いだった。女だから、男だから、そういう考えがどうしても受け入れられない。
別に片方が全て払うことを否定する気はない。割り勘でもいい。
ただ、男なんだから全部出せっていう奴には絶対に出さない。
もし、俺が払うと言った時にアリスが、当然だという態度を取っていたら嫌いに……いや、それは無いな。
アリスのことなら、そういうところがあっても受け止めれる気がする。
「家まで送ろうか?」
「大丈夫ですよ。すぐ近くですので、わざわざセージさんに来ていただかなくても」
「そう……?」
でも心配だな。
アリスのような子を一人で帰すのは、恋人でなくとも気が引ける。
もう夕方だし、不審者が出たりしたらと思うと側にいて家まで送ってあげたい。
……でも待てよ?
アリスは俺より強い。
不審者が出たところで大丈夫なのでは?
俺がアリスを守れって逃げるか撃退できる敵は、アリスにも対処できる。なんなら、俺が足手まといになるか……
「わかった。でも本当に気を付けてね」
「はい。心配してくれてありがとうございます。次、いつ時間が空くかわからないので、その時は今日みたいに私がセージさんのところに行きますね」
「うん」
俺が手の離せない状況だという可能性は考えないのだろうか。
まぁ、そんなことなんてほぼないだろうし、アリスが来たら第一優先で行動するから別にいいけど。
「じゃあアリス、また」
「はいっ!さようなら!」
アリスの後ろ姿を見送る。でも、いつまでも見てたら変態みたいだ。
自重しよう。
「はぁ。帰るか」
今日はかなりアリスと親睦を深められた。
ただ、アリスのことを知りたいあまりに質問ばかりしてしまった。嫌がられてないことを祈る。
…………
………………
「ごめんゼット、今日返し切るって言ってた借金のことなんだけど、もう少し待ってくれない?」
「え!?」
「なに、なんかマズい?」
「返してくれるって聞いてたから使い切っちゃったよ!見てよこのポーション!」
「あぁ……なら、とりあえずある分は渡すな。残りはまた今度ってことで」
「それならいいけど」
「ただ、差額が生まれないように大きく分けて返してるから、もし足りなかったとしても文句言うなよ」
「セイジが借りてる側なんだから偉そうに言うなよ」
「それはそうだ」
正論をぶつけられてしまった。
─────
「……」
アリスは後ろを振り返り、セージが着いてきていないことを確認した。
それから、安堵の息を静かに吐く。
「よかった……」
セージは純粋で良い人だ。だから、もしかしたら隠れて様子を見ているかもしれないと思い、アリスは少し遠回りして帰っていた。
アリスはどうしてもセージに家がバレたくなかった。
それは、セージが嫌いだからではない。セージには他の人に感じない魅力があり、アリスの好きに偽りはない。
「──アリス様」
「っ!」
突如として、アリスの背後から名を呼ぶ声が聞こえた。
「約束のお時間から五分経過しております」
「……わかっています」
驚きはしたが、すぐにアリスは存在を受け入れた。何故なら、それは聞き馴染みのある声であり、幼い頃からの知り合い……家族とも呼べる人だったからだ。
「未だ、どの者も気付かれておりません。早急にお部屋へお戻り下さい」
「はい。ありがとうございます、ビリーブ」
「……アリス様がどなたと親しくしようとも、じいが関わることではないとは承知しております。ですが、」
「わかっています。そこまでの交わりは行ないません」
「アリス様には役目がございます。全ての指示や言い付けに従う必要はございませんが、立場、相応の者とのお付き合いを」
「……」
アリスは無言で去っていく。
時間的に急がないといけない。という態度で、ビリーブと呼んだ初老の男の言葉を無視して。
「……じいも、本当はアリス様の幸せのみを願っております。ですが……あぁ、本当に、難儀な世界でございますな」
誰に聞かせるわけでもなく、呟いた。
思い付いたばかりでまだ構成練ってる最中なので更新は遅いですが、評価ブクマ感想で速度バフが付くので良ければお願いします!
ちょっとでも続きが気になれば!是非!!




