107話──道草王都
王都。その国の首都だ。
国民の生活エリア、商人の交易エリア、冒険者の通行エリアなどなど、それぞれのエリアで区分けされていて、それら中心に一部貴族や国王などが在住する最終防衛エリアがある。
最終防衛ラインという表現は少々過大だが、それに見合うくらいの戦力が集中しているのは確か。
Sランク冒険者が最も多く活動しているのだ。しかし、重要な人物が集まる場所なだけあって近辺は安全そのもの。最低でもDランクに適する生物の討伐依頼があるくらいだ。
ではなぜそんな稼ぎにくそうな場所を活動拠点にしているのかと言えば、要人の護衛という指定依頼などで多額の報酬金を得られるからだ。
また、数年に一度の低頻度で発声する、スタンピードという現象がある。
それは主に魔力を餌とする生物が一斉に王都目掛けて侵攻してくる現象を表し、人口が増えることで食料の消費量が増え、食料の消費量が増えることで単価が高くなるため他の生物の生息地に足を踏み入れてまで金稼ぎに出るものが続出する。そのせいで飢えた生物が生息地を広げて食べ物を探しに行き、その結果戦力になる人間が少ない農村が襲われ、人間の味、身に含まれている魔力の旨味を知った生物が、更なる餌を求めて人間探しに出発。その中でも魔力自体を餌にしている生物は魔力探知に長けているため、人間の肉を求める生物よりも的確に人間が多く生活している場所へ襲いに来る。
この国ではもちろん王都がスタンピードの終着点になる。なのでそんなもしもに備え、冒険者を多く募らせている。
別の問題点として、王都以外の冒険者数の減少という懸念があるが、それに関しては王都より派遣という特殊な依頼という形で各地に送ることで解消している。Aランク冒険者が主な対象だ。
そんな王都の冒険者ギルドは今日も賑わっていた。
依頼書片手に即席の仲間を募ろうと呼びかけを行なう者。意見が衝突して、取っ組み合いの喧嘩を繰り広げる者ら。真剣な眼差しで、数ある依頼の中から今日の仕事を見繕う者。これから始まる冒険者ライフに心躍らせる者。
左側に何棟も続くの建屋では、早朝に討伐された大型の生物が解体されている。皮を剥ぎ、肉を切り、骨を断ち、使える部位と使えない部位で小分けにし、生活エリアや交易エリアへ流す準備をしていた。
対して右側の大きな建物では、まだ昼前だというのにどんちゃん騒ぎ。酒の消費量は王都随一。酒に溺れた結果、服を脱いで踊り始めたり、些細なことで怒り心頭に発したり、吐き気を抑えきれず飲み食いした全てを吐き出していた。
夜通しこの調子なのでもちろん苦情は多い。だが、冒険者たちの不満の捌け口となっている重要な施設であり、変に規制を掛けるとそれはそれで冒険者からの苦情が避けられなくなる。
しかし秩序は保たれている。それは、王都の冒険者ギルドを取り仕切るギルドマスターが絶対的な力で上に立っているからだ。越えてはいけないラインを越えた者は、王国で定められている法とは別に、ギルドマスターより罰を受ける。内容は公表されておらず、罰を受けた者も絶対に言いふらさないし口を割ることもない。
実は罰なんて受けてないんじゃないかという噂もあるが、試そうとする者はいない。
「俺は行かないからな」
「オレも無理だ。イナニス、頼んだぜ」
「はぁ……」
ギルドの前で、零点の三人は足を止めていた。なぜなら、指定依頼について改めて、ギルドマスターとの会合があるからだ。その場には学園関係者もいるとはいえ、変な噂を聞いた以上はあまり行きたいとは思えない。
なんなら行きたくない。
だからいつも通りイナニスに任せることでミラーとエンプは逃げようとしていた。
「それに俺はやらないといけないことがあるんだ。エンプと共に、王都巡りをしなければならないという最重要任務がさ」
「その通りだぜ。オレらはオレらの任務がある。だからイナニスにはギルドでの任務を任せるってだけのことだ」
「それで納得できる人間がどこにいると思っているんだ……」
何回目になるかわからないため息を吐いた、振り回されてばかりのイナニスだが、鬱憤が溜まっているかといえばそうではない。
場面ごとにそれぞれ役割があり、その役割の範囲内で頼られるのは悪くはない。無茶ぶり気味なところもあるが、イナニスが本領を発揮できない場面、戦闘時には十分に頼らせてもらっているため、無下にすることもできない。
「好きにしてくれ」
「そうさせてもらうよ。もう注目を浴びて仕方ないしな」
冒険者ギルドの前でたむろって話をしていた三人だったが、明らかにそれ以外でそれ以上の注目を浴びていた。
「お前らさ、顔が良いのやめれる?」
「やめれるもんじゃねぇし、オレらだけに押し付けんな。テメェへの黄色い声は聞こえないふりか?」
「顔も知らない人間に好意を抱くわけないだろ。これだからイケメンは駄目なんだ。顔面偏差値が自分未満の人間の想いをわかってくれない……」
「知るかよ!」
「……ていうかさ、あいつらじゃ駄目なのか?」
「あ?」
エンプに近付いたミラーが、周りに聞かれないくらいの声量で聞いた。
「学園の女の子でお前を説得したけどさ、ヤターリでもこの王都でもお前を見る子はいるじゃないか」
「違うんだよなぁ」
「違うのか?」
「違うんだよ。全然な。オレはな……いや、この話は歩きながらにしようぜ。じゃ、イナニス。あとは頼んだぜ」
人の囲いが完成される前に、イナニスの返事も聞かずに、ミラーとエンプはその場から去っていった。
「…………はぁ」
イナニスが深いため息をつくまでに、三秒もかからなかった。
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