103話──アリスに背中を
ゼットと別れ、一人で町を歩く。
目的地は決まってる。
だから、寄り道して少しでも時間稼ぎをしたい思いを封じ込め、認知できない方向から歩いてくる人に気を付けながら足を動かした。
薄々、これからの展開はわかっていた。
それはあの事件があったからではない。あの事件が起こる前から既にわかっていた。
ゼットに偉そうに説教のようなことをしておきながら、俺はもっとクソな行ないをしていた。
ゼットは悩んでいた。それは自分の中でどうにか消化して、前を向くためにあれほど苦しんでいた。
それに比べて俺は、考えることから逃げていた。前を見たくなくて、悩もうとすらせず思考を放棄していた。
ゼットの悩みを先に解決させたのも、言い訳の理由にしたかったのかもしれない。
これをしていたから仕方ない。
どうしようもなかった。しょうがないじゃないか。
そんな風に、逃げ続けようとしていた。
でも、もう向き合わなくてはいけない。
きっと後悔する。もっと見て見ぬふりを続けていればよかったと。
これが終わったら、もしも話ばかり考えてしまうだろう。理想ばかりを羅列した、可能性の未来ばかり……
「……正解なんて、どこにも無いんだろうな」
進む道には暗闇しか見えなった。
─────
「稀人である不貞の輩とアリス様が婚姻を結ぶだと?」
わかっていたことだ。
全て、わかっていたこと。
楽観的になっていたのは俺だけだ。
「そのようなこと、許されるはずないでしょう。考えればわかることではありませんか?」
「でもじい!」
アリスは味方をしてくれていた。それが嬉しく、同時に苦しかった。
「でもではございません。これは当主様がお決めになられたこと。アリス様は貴族なのです。その身分にはアリス様が考えておられる以上に重みがあり、一時の感情で動かせるものではありません」
「……でも、それでもわたしはッ!」
「アリス様……」
引き下がろうとしないアリスに、ビリーブさんは困った顔をする。立場上、感情論をぶつけるわけにはいかない。でも、アリスは感情だけでぶつかっている。正論だって知ったこっちゃないと。
このままでは水掛け論。
だから……
「……わかりました」
「セージさん!?」
「俺の存在が、アリスの人生の邪魔になるのなら、俺はもうここには来ません。アリスの前にも現れません」
もっと練った言葉を言えればよかったのかもしれない。でも、そんなことを考えるほどの余裕なんて無かった。
「セージ!!」
「……ごめん」
顔は見られなかった。俯くしかなかった。
ビリーブさんの言う通りだ。
逆の立場だったら、俺だって同じ選択をしていた。なにも間違ってない。
間違っているのはこの感情だけ。
「初めから……出会うべきじゃなかったんだよ」
「──ッ!」
アリスは駆け出して行った。真っ直ぐ、屋敷の中へ。
……そうだ。それでいいんだ。
「ッ……」
くそ。わかってるのに、わかりたくない。
わがままだって理解してる。
でも、もうこれっきりで、アリスとの関係が終わる。それを考えるだけで……視界がぼやけて仕方ない。
最後に、顔を見たかったな。
そんなわがままが、また頭に浮かんだ。
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