8 美月と周りの変化
とにかく、大騒ぎだった。
他の生徒は教室に返され、俺と美月、川中の三人は職員室に連れていかれ、事情を聴かれた。
俺と美月は正直に全てを話した。
美月は川中に脅されたことも。
川中はしらばっくれ、とはいえ、こちらに証拠はない。
そして、俺たちの不純異性交遊疑惑も、証拠としては不十分。
ヤツが本気で色々根回ししていたら、危なかったかもしれないが、昨日の今日だったし、ヤツも美月が俺に抱き着いてキスしたことがショックだったらしく、説明があやふやで俺たちが処分されるような事にはならなかった。
川中は、生徒個人を全校生徒の前で弾劾したことを責められ、俺と美月は全校生徒の前でキスしたことを責められた。
結局のところ、三人とも全校集会を滅茶苦茶にした事で、厳重注意。
ついでに正式に美月は、風紀委員を辞めることになった。
美月の表情は、晴れ晴れとしていた。
結構負担も大きかったし、何より美月には風紀委員は合わなかっただろうしな。
家に帰ってお互いの両親には、一応報告した。
ウチの両親は爆笑してたよ、笑い事じゃねえっての。
美月の両親も苦笑い。
結局大事にはならなかったしな。
翌日から美月に変化が。
「おい、美月。開き直ったとは言っても、これは……」
「何が?私たちは付き合ってるんだし、私はもう風紀委員じゃないんだ。問題ないだろう?」
いやいや、登校中に俺の腕に抱き着いてるのは、流石に……。
「ま、周りの目があるだろ?」
「いや、もう気にしなくてもいいだろう?」
「そ、そうは言っても限度がある!」
「これくらい普通だろう?」
「キャー!!見て見て!!ほら!例の二人!」
「ホントだ!!わー、朝から凄いねえ!」
「チッ!朝からイチャつきやがって!」
流石にこれは……。
「な、なあ、美月。もう少し離れて歩かねえ?」
「なんでだ?イヤなのか?」
「あ、いや、そういうワケじゃ……」
「なら、いいだろう」
うーーーん。
美月、自分で気づいてるんだろうか?
目尻、下がってるぞ?
「ねえねえ、やっぱり高宮さん、可愛くなってない?」
「ねー!なんか、ニッコニッコしてる!」
「ホントだー!ってことは、今まで無理してたのかなー?」
「そうかもね、風紀委員は高宮さんしかいないって思ってたけど……」
「うん、悪いことしちゃってたのかな……」
「そうね、皆で謝らなきゃいけないかもね……」
まあ、好意的に受け取られてるみたいだし、いいのか?
そんな感じで美月が変わってから、一ヶ月ほどが経ち。
俺たち二人は、他の生徒たちとの距離が縮まった気がする。
対照的に、生徒会長の川中は、全校集会で俺たち二人を糾弾したことで生徒たちから不評を買い、一人で過ごすことが増えたらしい。
まあ、どっちにしろ、もう半年もすればヤツも卒業だ。
俺達に関わらなければ、どうでもいい。
と、思っていたのだが……。
「あ、川中……先輩」
たまに学校で川中を見つけると、美月の目つきが鋭くなる。
向こうも気付いたみたいだが……。
目を逸らして去って行った。
しかし、美月の目つきが鋭いままだ。
……しょうがねえな。
美月と向かい合い、両肩に俺の両手を置き、目を見つめる。
「美月、落ち着け。もう大丈夫だから」
「あ、ああ。秀哉。ありがとう」
「ん、いいから俺の目を見ろ」
「ああ、……秀哉」
よし、少しずつ目尻が下がって来た。
「落ち着いたか?」
俺が尋ねると、美月が目を閉じる。
ん?何で目を閉じた?
「んーーーーー」
「良し!!もう大丈夫だな!!」
「あっ、秀哉……チューは……?」
「俺、トイレ行ってくるな!」
「あ……。秀哉……。」
今回は頑張ったな、美月。
でも、場所と雰囲気は考えような?
最後までお読み頂きありがとうございました。
よろしければ感想など書いて頂けると、嬉しいです。