7 暴走
「え?ホントにあの高宮さんが?うそでしょ?」
「そうだよね、信じられない!」
「学校でそんな事してたのかよ、風紀委員のくせに」
ザワついた生徒たちを横目に、美月は壇上へと向かう。
美月?何を言うつもりだ?
いや、考えてる暇はねえ!
美月の後を追わないと!!
「今更何を言っても無駄だよ」
「そうですか」
マイクが拾わない程度の小声で、川中と言葉を交わす美月。
堂々としているようで、小刻みに震えている。
くそっ!俺に何が出来る?
いや、何も出来なくても。
美月の傍に。
「皆さんにお話ししたい事があります!私は今日をもって風紀委員を辞めさせて頂きます!!」
「「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」」
「先ほど、生徒会長が提示した写真は昨日撮られたものです!!」
「ホントだったんだ……」
「えー?信じらんなーい」
「私は風紀委員には相応しくないでしょう。ですが!!!誓って私達は、不純異性交遊などしておりません!!!!」
「どーなんだろーねー?」
「さあ?そんなの本人達しかわからねえんじゃね?」
「まあ、あの写真だけだったら、ただ抱き合ってるだけだしねえ」
「今まで隠しておりましたが、私は佐古君とお付き合いしております!!」
み、美月……?
「お互いの両親も了承済みです!!交際を始めてもう三年経ちます!!ですから、風紀委員には初めから向いていなかったのです!!」
「お、おい、美月、いいのか?」
「いいんだ、秀哉と別れるくらいなら、いっそ全部吐き出してみようと思ったんだ」
「……わかった」
「うへぇ、あのお堅そうな風紀委員さんがねえ……?」
「ほんと、見た目キツそうだけど、彼氏いたんだ……」
「私は!!皆が思っているような、堅物でもないし、しっかり者でもないし、鬼の風紀委員でもないんです!!私は……ただの臆病な、一人の女生徒なんです!!」
「……って言ってるけど、やっぱ怖えよな、目つきとか……」
「確かにな……」
「そんな弱い私を、この!!佐古秀哉君は!!ずっと守ってくれました!!ずっと……そばで……」
「美月……」
「え?あの鬼の風紀委員が泣いてる……?」
「あ、なんか、目つきが……」
そう、俺と二人きりの時の美月は……。
「なんか、可愛くない?風紀委員さん」
「ホント!凄く優しい目をしてるよ?」
「ね!二人、お似合いじゃない?」
「いいなー!憧れちゃうなー!」
「私は!!!そんな秀哉を……。秀哉の事が大好きです!!!」
「え?おい、美月……?」
「キャー!素敵!!!」
「全校生徒の前で、愛の告白?!!凄い凄い!!」
「おー!!やれやれー!!」
お、おい、ちょっとこれは……。
ど、どうするつもりなんだ?美月?!
「大好きだ!!!秀哉!!!!」
「えっ、ちょっうむっ」
「キャー!!!キス!!キスしてる!!!」
「おー!!!!いいぞ!!!」
「やー、なんかホントお似合いの二人だねー」
ちょ、待て!美月!!!
バッ!!!
力づくで美月を引きはがした。
「お、おい、美月!!不純異性交遊疑われてんのに、なにしうむっ」
「んーーーーーーーーーっ」
ま、またかよ!!!おい!!美月!!!
ち、力つええって!!!
美月!!!
こうして全校集会は、収拾がつかなくなり、教師が解散を指示して、みんな各々の教室に戻っていった。




