6 やりやがった
昨日、俺と美月は川中への対応について話し合った。
俺は別に空手の大会に出られなくても構わない。
俺には、川中の脅しは通用しない。
それに、ただ抱き合っている写真で、何らかの処罰を俺達に加える事なんて出来るのか?
生徒会長だからと言って、その写真一枚でどうにか出来るのかよ?
けど、問題は美月だ。
俺と別れる事は考えていないとは思うが、俺と付き合っていることが公表されてしまったら、周りの美月を見る目は間違いなく変わるだろう。
それに美月が耐えられるか?
結局、これといった対策もないまま、次の日を迎えた。
美月には、俺の事は気にしなくていい、と言ってある。
だが、美月は俺の事も気にしているし、公表された後の事を怖がっている。
川中は美月のこの性格も知っていたのか?
鬼の風紀委員っていうのは張りぼてだったって事を。
まあ、俺のやることは決まっている。
美月を守る。
どうなるかはわからないが、美月を傷つける事だけは、許さない。
それだけは、変わらない。
「やあ、おはよう。返事は貰えるのかな?」
二人で登校していると、後ろから声を掛けられた。
声の主は川中。
「……」
「あれ?まさか決まってないのかい?」
「……お断りします」
「え?ごめん、良く聞こえなかったんだけど?」
「お断りします!!!!!!!!」
美月……。
断ってくれるとは思ってた。
けど、ここからどうする?
「そうかい。なら、どうなるかわかってるんだよね?」
「……はい」
「へえ、臆病な君にしては、頑張ったね?」
やっぱり知ってやがったか!
「好きにすればいいですよ。私はアナタなんかとは何があっても付き合わない!!ましてや秀哉と別れるなんて、考えられない!ありえない!!」
「……ふふっ、後悔しないといいね?」
「……」
「今日、丁度月一の全校集会があるよね。楽しみにしててね」
「!!!!!!」
全校集会で、俺たちの事を……?
マズい!どうする?!
「美月……」
「秀哉……」
お互い無言でそれぞれの教室へ。
結局これといった話し合いも出来ずに、時間が来てしまった。
こうなりゃ腹くくるしかねえな。
出たとこ勝負だ!
全校集会が始まり、生徒会の定期報告、連絡事項の発表も終わり、おもむろに生徒会長が壇上へ向かう。
いよいよか。
「えー、今日は皆さんにお伝えしなければならないことがあります」
!!!!
「残念なお知らせです。この学校の生徒であれば知らない人は居ないであろう、風紀委員と他生徒一名が、校内で不純異性交遊を行った、という事実が発覚しました!」
「「「「「「「「「ええええええ?!!!!!」」」」」」」」」
やりやがった、あの野郎……!
「今までみんなのお手本となっていた、風紀委員の高宮君、そしてみんなも知っているであろう、空手部のエース、佐古君、この二人が不純異性交遊などと、僕も信じたくはありません。ですが、ある生徒から証拠となる写真を受け取りました。これがその写真です!」
壇上のスクリーンに俺と美月の抱き合っている写真が映し出される。
くそっ!
「非常に残念に思います。高宮君は風紀委員として相応しくないでしょう。今まで頑張ってくれていたのですが、本当に残念です」
クソがっ!!
美月だってやりたくてやっていたワケじゃねえってのに!!
「佐古君も、次の大会での活躍を期待していたのですが、残念でなりません。ですが、二人の今までの功績は大きい、更生の機会を与えてあげるべきだと思います!!!」
何が更生の機会だ!!
不純異性交遊?
まだキスもしてねえっつーの!!!
ふざけんじゃねえ!!!
「私もみんなに聞いて欲しいことがあります!!!!!!!」
美月……?