3 揉め事
「こら!!そこの三人!!制服はちゃんと着ろ!!」
今日も元気な美月の声。
朝、登校しているといつもの美月の声が聞こえてきた。
頑張ってんなー。
「ああ?うるせえんだよ!お前二年だろ?俺たちは三年だぞ?!」
「学年は関係ない、私は風紀委員だ。問題のある生徒には、注意をする。」
「風紀委員が何だってんだよ?!ああ?」
「……ほう?生徒会と風紀委員の顧問に報告させてもらうが?」
「チッ!!ムカつく女だな!!」
三人は美月を睨みながら校舎へと入っていく。
美月……。
「大丈夫か?美月」
「あ、ああ。大丈夫だ、ありがとう、秀哉」
周りに聞こえないくらいの声で、美月に声を掛けた。
少し震えていた美月だが、俺の声で落ち着いてくれたか。
「こら!またお前は!シャツが出てるじゃないか!!」
「あー、はい、気を付けまーーす」
「おい!ちゃんと返事をしろ!」
「サーセンしたーーー」
「あっ!おい!」
頑張れよ、美月。
ウチの学校は割と進学校の方なのだが、一部不良モドキみたいな連中もいる。
何なんだろうね、高校デビューって奴かねえ?
三年なんだからイキってないで勉強しろよ、ったく。
その日、空手部の道場で部活に励んでいると、外から声が聞こえた。
もうそろそろ部活も終わる時間。
何だ?何か揉め事か?
「もう部活も終わる時間だ!三年生がこんな部室の裏で何をしている?!」
「チッ!まーた風紀委員かよ!」
「お前には関係ねえんだよ!失せろ」
「そうはいかない。用もないのに、こんなところで何をしてるんだ?!」
「だから関係ねえって言ってんだろ!」
「おい、こんな生意気な女、わからせねえといけねえんじゃね?」
「そうだな、顔殴んなきゃバレねえだろ」
「そうそう、コイツがいくら騒いだって、三人で何もしてないって言えば、問題ねえよ!」
「……本気か?」
「おいおい、震えてんのか?鬼の風紀委員さんよお?!」
「ははっ、所詮女だって事だろ?!」
「いいねえ、ゾクゾクして来たぜ」
……下衆が。
「せんぱーーーーーーい!!!!ウチで組手やってかねえっスかーー!!!!!」
「あ?!!」
「何だ、てめえ?」
「空手部の佐古っつーモンですけどーーーー!!!!相手してくんねえっスかーーーーーー?!!!!三人纏めてでいいっスけどーーーーーー!!!!!」
「空手部?」
「あ?まてよ……空手部の佐古……?」
「あ!!アイツ、全国行ったヤツじゃねえか?!」
「あ、ああ。聞いたことあるな」
「邪魔しやがって……」
「行こうぜ、萎えたわ」
「おう」
三人が帰った後に、一人残された美月に駆け寄る。
「大丈夫か?美月」
「あ、ああ。……こ、怖かった、竹刀があればあんな奴ら……」
「美月……」
くそっ!逆恨みしやがって!
いや!今は美月だ!
人目が無いのを確認し、美月を抱きしめる。
「あ……秀哉……」
「美月、大丈夫だ、俺がついてる」
「秀哉……」
「じっとしてろ、しばらくこのままで」
「うん、ありがとう、秀哉」
震えていた美月もしばらくしたら落ち着いて来た。
もうそろそろ平気かな。
離れようと思ったその時。
「し、秀哉、今こそチューを……」
「うん!!もう大丈夫みたいだな!!!」
そっと美月から離れた。




