2 学校での美月
美月と俺は、小学校からの幼馴染。
俺の家と美月の家は近所なので、昔から仲が良かった。
俺は空手を習っており、美月は剣道、同じ武道を習う身としてウマがあった。
そのうち、俺の両親と美月のご両親も仲良くなっていった。
美月のご両親は、共働きで帰りがいつも遅い。
一人で夕食を済ませている美月を、段々とウチの両親が夕食に誘うようになった。
今でも、美月は俺の家で夕食を摂る。
中学二年生の頃俺が告白して、美月にオーケーをもらい、付き合い始めた。
正直、美月は先輩連中からの人気が高く、不安だったんだ。
何となく、美月も俺の事を意識しているんじゃないかって思っていたから、勇気を出して、告白したんだ。
あとは、美月の性格も知っていたからかな。
美月はああ見えて、結構臆病だ。
何事に対しても。
そのことを知らない連中は、美月の事を怖がったりもしていた。
そりゃそうか、剣道も強いし、目つきも鋭いしな。
俺は、美月が臆病なのを知っていたから、俺から告白しないと進展しないことがわかっていた。
付き合えた事はよかった、素直に。
しかし、美月は
「し、秀哉と付き合うのは、嬉しいんだ。だ、だが、学校ではちょっと……」
「ちょっと、何?」
「わ、私がみんなにどう思われているか、知っているだろう?」
「あー、まあ……」
「ど、どんな顔をして秀哉と接すればいいのか、わからないんだ!」
「えー?」
「わ、悪いとは思うんだ!が……学校では付き合っているのは内緒にして欲しい……」
「俺と付き合ってるのがバレると恥ずかしいのか?」
「ち、違う!そうじゃなくて!!そ、その……どうしても秀哉と話していると、顔が緩んでしまうんだ!!」
まあ、確かに……。
口調はそんなには変わらないが、俺と二人きりの時の美月は表情がふにゃっとしているからな……。
「ふ、風紀委員の私が、秀哉の前ではデレデレだとバレたくないんだ!」
あー、そうか、威厳も何もあったもんじゃないからなー……。
「わかったよ、美月。学校では、なるべく知り合い程度の関係に見せればいいか?」
「あ、そ、そうしてもらえると、助かる……」
「了解ー」
「ご、ごめんな?せっかく付き合ったっていうのに」
「あー。気にすんなよ」
「そ!!そのかわり!!二人きりだったら、イチャイチャしてもいいんだぞ?!!」
「お、おう。声デカいって……」
「す、すまない!!こ!興奮してしまって!!!」
「いや、だから声……」
学校じゃキリっとしてんのに、割とポンコツなんじゃねえの?と思う今日この頃。
まあでも、美月のいう事も理解出来るんだ。
昔から優等生のレッテルを貼られ、皆から期待され、それに応えてきた美月。
剣道も勉強も努力して、皆の手本になっているからと言って、風紀委員まで押し付けられて。
臆病な美月は、期待を裏切るのが怖くて。
みんなからの尊敬の眼差しにプレッシャーを感じながら、落胆されて自分から皆が離れていくのが怖くて。
必死に頑張っている美月を見ていたら、それぐらいは、と思う。
俺と美月が付き合っているのがバレたら、気に入らない連中もいるだろう。
その不満が俺に来るならまだいいが、美月に悪意が向かうのは俺の望むところじゃないしな。
平和に過ごせるのが一番だ。
俺はこの二人の時間だけでも、十分満足だ。
「ほ、ほら!だから秀哉、ちゅ、チューを……!!!」
「いや、美月、もうちょっと雰囲気とか考えような?」
やっぱ、割とポンコツじゃね?