1 俺達の関係は
「おい、制服はきちんと着ろ。シャツが出てるしネクタイも曲がってる!」
朝、登校時に校門を通り過ぎようとすると、風紀委員の高宮美月に呼び止められた。
口うるさいんだよな……。
彼女は、俺と同じ高校二年生で、鬼の風紀委員として恐れられている。
黒髪ストレートのロング、キリっとした目つき、整った顔立ち、剣道部に所属しており、腕前も県大会レベル。
更に、高校生離れしたスタイル、というように完璧超人だ。
「聞いてるのか?全く、これだからだらしのない男は……」
「はいはい、聞いてますよ、風紀委員殿」
「はいは一回だ!真面目に返事をしろ!」
「はーい」
「こ、この……!」
おっと、これ以上は本気で怒られるな。
退散、退散。
「ちょ、こらっ!」
さいならーっと。
何とかうるさい風紀委員からは、逃げることが出来た。
俺の名前は佐古秀哉。
中肉中背、部活は空手部に所属している。
そんな俺に、毎回風紀委員の高宮美月は絡んでくる。
自分の教室に入り、席に着く。
ふうーっ、やっと落ち着いた。
「よお、また高宮さんに説教喰らってたのか?」
「ああ、毎回毎回しつこいんだよな」
「まあ、そうだけどよ、毎回シャツ出したまま高宮さんの前を通り過ぎようとするお前も大概だけどな!」
「いちいちそんな細かい事気にしてらんねえよ」
「肝が据わってんなー」
「そんな事ねえだろ、別に」
「いや、実際怖えだろ、高宮さん」
「ああ……、まあ……」
「あれ?そんなに怖くねえ感じ?」
「い、いやいや、怖い!怖いぞ?」
「んー?何か……」
「ち、ちょっとトイレ行ってくるわ!」
「お?おう」
危ねえ、危ねえ。
何事もなく授業も部活も終わり、帰宅する。
「お帰り!秀哉!遅かったじゃないか!!」
「おう、ただいま。ちょっと買い物してたからな」
「そうか、ならしょうがないな!それより秀哉!ここ!ほら!膝枕!!」
ポンポンと、太ももを叩く美月。
「あ、いや、俺部活終わって汗かいてるし……」
「そんな事気にするな!むしろその方が……」
「おい、何か不穏な言葉が聞こえてきたような気がするんだけど?」
「な、なんでもない!!いいから早く!!ほら!!」
うーん、毎回これやんなきゃいけないのかな?
「わ、わかったよ」
「わかればいいんだ!!」
美月の太ももに頭をのせる。
「ふふっ。どうだ?気持ちいいだろう?」
「んー、まあ、そうだな」
「そうだろう、そうだろう。母さんが男はこれが好きだって言ってたからな!」
「あー、そうな」
会話をしながら、美月を見上げる。
おおう、ご立派な双丘が……。
美月の顔、見えねえな。
「ん?どうした?私の胸が気になるのか?」
「あ、いや、そんな事は……」
「恥ずかしがることは無い。私に興味があるって事だろう?私にとって嬉しい事だ!」
「ほ、ほう?」
「触りたいのか?」
「い、いや、別に……」
「そうか……、まあ触りたくなったら、いつでも言うといい」
えっ?いいの?
「母さんからは、簡単に身体を許してはいけないとは言われたが、拒絶ばかりも良くない、とも言われてるからな」
そうだったのか……いやいや、美月のご両親とも美月を大切にするって約束してるから!
そう簡単に手を出してはいけないだろう、多分。
と、いうように俺と美月は小学校からの幼馴染で。
恋人同士だ。