隊長はミーヤを隠したい
よろしくお願いします。
隊長はミーヤの存在を隠したかった。
ミーヤの隠れた(本人は隠していない)能力を知っていたわけではない。ただただ可愛かったから護りたかったのだ。
すでに成人しているはずだが小柄な体。
ちょこまかと動く小動物のような動き。
喜怒哀楽の激しい感情は見ていて飽きない。
そして、強い意思を宿した瞳。それを見たとき、目が離せなくなった。
危なっかしいので、戦場でも混戦に巻き込まれないよう遠距離からでも攻撃できる弓矢を渡した。本来なら戦場には向かない性格だろう。なぜここにいるのか、それは謎だ。
しかし本人がここに居たいというのだ。それならば、できる限り護ってやりたい。そう思った。しかし依怙贔屓するわけではない。皆と同じように接した。
弓矢を渡したのは、ミーヤの安全のためだ。本人の言う、反転魔法と言うのも特に信じた訳ではなかった。
でも、理にかなっているとも思えたので、とりあえずやらせてみた。そこから何かしらわかることもあるだろうと思って。失敗しても痛手はないし、ミーヤのことは俺が守ればいいだけなので、何の問題もなかった。
ミーヤが弓矢を放つと、反転魔法が矢の先から広がり、魔獣兵を浄化していった。薄暗い森の中に広がる眩い光。それは幻想的な光景だった。
人前でこの技を見せるのは初めてだったので、これほどの人がいるので大騒ぎされるかと思った。しかし、実際は誰も喋らなかった。しばらく、皆黙っていた。口を開けて、何も言えなくなっていた。
「みなさん!見ましたか!私が!救世主!です!」
そう騒ぐミーヤに皆振り向いた。そして口を開けたまま、ウン、ウンと頷いた。その様は滑稽だった。
「アホな顔してないで、さっさと事後処理に移れ!」
ロア隊長の咆哮で、隊員たちは物品収集と原状回復作業に入っていった。
「見ましたか! 隊長。私が言ったこと、本当だったでしょ?」
両手を懸命に振り回して、ロアを見上げてそう訴えるミーヤ。
「…ああ、そうだな。」
小さなミーヤを見下ろしながら、ロアはそう言う。
「隊長 !ちゃんと褒めてください。」
嬉しそうに頭を差し出して、ぎゅっと目をつぶるミーヤ。まるでお子様である。
ロアは頭ではなく後頭部に手を置いた。
不思議に思って目を開けたミーヤの目の前には、ロアの整った顔。そして、唇に触れる柔らかい感触。
何が起こったか理解した途端、ミーヤは全身の毛を逆立てて、「ミャー!」と喚いた。
「キ、キ、キ……。なんで?!」
「嫌だったならそう言ってくれ。謝る。」
戸惑うミーヤだったが、嫌だなんて言えるわけがない。言うわけがない。
(いつか、その大きな手で頭をなでてもらいたい。優しい瞳で見つめて欲しい。笑いかけてもらいたい。…そう思ったけど!)
心の中では色々と文句を言いつつ、言葉にはならなかったので、混乱で涙目になりながら、む〜とロアを見上げて(本人としては)睨みつけている(つもり)。
ロアはふっと笑って、再度後頭部に手を当ててミーヤに口づけをした。
その様子を、見ないふりしながらも隊員たちは、チラチラと盗み見ていた。ボサボサの身なりに隠れるミーヤの可愛らしさは、隊員たちも気がついていた。
そして、共に過ごすうちにその天真爛漫な性格の魅力も知っていた。
「でもな〜。」
「手、出せるわけないよな。」
「ロア隊長があそこまでガッチリ守り固めてるからな〜。」
ロアの、ミーヤを見つめる目に特別な優しさが籠もっていることも、過保護な中に込められている気持ちも、隊員達は理解していた。
「誰も隊長に咆えられたくないもんな〜。」
戦場でイチャつく二人を見ないふりしながら、隊員達は事後処理を進めていった。
その後、遅れて到着したロッソが救世主の出現に騒ぎ、ミーヤのおかげで魔獣兵生成装置を無事破壊できたことで軍が騒ぎ、国が騒ぎ、救世主ミーヤの祝賀会にて着飾ったミーヤの美しさに皆が黙った。
黙った後に、ぜひ救世主ミーヤを嫁にと言う王族やロッソ始めとした隊長達にロアが咆えて追い払った。
すごすごと退散していく者たちを呆れながら見送って、ロアはミーヤに振り向く。そして、優しい瞳で見つめて笑いかける。ミーヤも、ロアを見つめてその手を取り、二人で笑いあった。
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