憧れの再燃
数日後、春樹と霞海はバーサーカー狩りに勤しんでいた。春樹は剣、霞海は銃を駆使し、獲物を次々と狩っていく。バーサーカーウィルスの流行したこの世界では、日々殺人衝動に取り憑かれる者たちが後を絶たない。
「殺したい……殺す……」
春樹はウィルスの症状に身を委ねたまま、目の前のバーサーカーの首をはねた。
「バーサーカーは、駆逐する……」
霞海は銃を乱射し、周囲のバーサーカーたちを退かせる。決して仲の良い二人ではないが、両者が戦線に立った時の相性は抜群だ。
そんな中、二人は全身に鉄塊をまとったバーサーカーに背後を取られた。
春樹は咄嗟に剣を振ったが、その刀身は一瞬にしてへし折れた。霞海は何発もの光弾を放っていくが、それも眼前の標的には通用していない。鉄塊を身にまとうバーサーカーは、自らの手元に巨大なハンマーを生成した。彼はそれからゆっくりと構え、ハンマーを勢いよく振り下ろそうとする。
その時である。
「春樹! 危ない!」
その場に一人の男が現れ、ハンマーを殴り壊した。山代和希だ。その拳には金色に輝くメリケンサックが装備されており、その打撃の威力は常人のものではなかった。続いて、彼は何発ものラッシュをお見舞いし、標的を徐々に退かせていく。標的の身を覆っていた甲殻は徐々に剥がれ落ち、形勢は和希にとって有利なものとなった。
春樹と霞海は、その隙を逃さない。
「今だ……!」
「準備万端!」
春樹は標的の腰を一刀両断した。同時に、霞海は銃口から大きな光線を放った。標的は眩い光に焼かれ、皮膚がただれ、筋繊維や骨を露出させながら意識を失っていく。それからほどなくして、春樹たちを襲っていたバーサーカーは膝から崩れ落ちた。
春樹たちの勝利だ。
和希はすぐに霞海の方へと振り返り、話を切り出す。
「オレはヴィクト化手術に成功した。今日から、オレもジャッカル隊員だ!」
先程の戦いにより、すでに実力は証明済みだ。霞海は呆れたようなため息をつき、彼に忠告する。
「バーサーカーを狩る……それがアタシにできる全てだよ。アンタの身は、アンタ自身が守ってね」
「もちろんだ! 任しておけ」
「……まあ、良い戦力にはなりそうか。良いよ。アンタは今日から、ジャッカル隊の正式な隊員ってことで」
和希はいよいよ、隊員として認められたようだ。
「やったな! 春樹!」
和希は春樹の前に拳を突き出した。春樹はその拳に己の拳を当て、安堵に満ちた微笑みを浮かべる。
「ねぇ和希。僕たちが中学生の頃に描いたリレー漫画、覚えてるかな?」
「ああ、もちろんだ。あの頃、オレたちはずっと、理想のヒーローを描いてきたっけな」
「今度は、僕たちがヒーローになる番だよ。感染者を殺していくことを正義と呼べるかどうかは、正直わからないけどね」
英雄と正義は同じではない。春樹はそれをよく理解していた。無論、和希もまた、彼の考えに納得している。
「そうだな。ヒーローなんてものは、数多の犠牲を礎に生じる偶像だ。命を秤にかけられる人間だけが、この世界の歴史を動かしてきたんだと思う」
それが和希の持論だ。仕事を終えた二人と霞海は、ジャッカル隊の基地へと引き返していった。
その日の夕方、霞海はテレビの電源を入れた。画面に映し出されたのは、首相の杯水成による答弁だ。彼はウィルスの流行に対し、どう対処するのかを問われている。押し寄せる取材班を前にして、彼は語る。
「抗体は現在開発中です。そして幸いにも、我々はジャッカル隊の隊員を二名も確保しました」
その発言に対し、野党の人々は次々に野次を飛ばす。
「抗体の具体的な開発方法を話せ!」
「不透明だ!」
「本当は何もしてないだろ!」
そんな非難の声を浴びてもなお、水成は決して動じない。彼はただ、どこか怪しげな微笑みを浮かべるばかりだった。




