表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/43

ヒーロー

 春樹(はるき)の最後の一撃により、ディカルトは完全にこの世から消滅した。ジェネス星の官邸では、三人のジェネス星人が話し合っている。

「あのディカルトがやられたのか! 地球を支配しようなどと考えるのは、無謀が過ぎたようだな……」

「皇帝陛下。ここは手を引きましょう。これ以上地球人を刺激したら、ジェネス星にまで被害が及ぶかも知れません」

「しかし、あのディカルトが敗れるなんて、想像もしなかったな。アイツが次の君主になると聞いた時、俺は内心ビクビクしてたぜ。とんでもない暴君が生まれかねなかったからな」

 彼らの間でも、ディカルトは一目置かれた存在だ。あの男を失ったことは、ジェネス星人にとって大きな損失であった。皇帝は深いため息をつき、話を続ける。

「イデアの考えは正しかったのだろう。我々は地球人に力など与えるべきではなかったし、ましてや敵対すべきでもなかったのだ」

「皇帝陛下……」

「弁解の余地もない。我々は負けたのだ。ここに宣言する――――我々は金輪際、地球には手を出さないと!」

 潔く敗北を認めた彼は、地球から手を引くことを選んだ。



 *



 あれから数日後の地球にて、春樹と和希(かずき)は墓地を訪ねていた。墓前に花束を供え、二人は呟く。

「終わったよ……壮介(そうすけ)。僕たちは、成し遂げたんだ」

「この場にお前がいないことが、何よりも口惜しいけどな」

 この墓には壮介が眠っている。春樹たちは静かに瞼を閉じ、その場にしゃがみこんだ。二人は無言でうつむき、手を合わせる。数瞬の沈黙が続く中、彼らは今までの戦いを振り返っていた。彼らは多くの命を奪い、多くの死と直面してきた。様々な悲劇に見舞われた彼らも、ついに一つの大義を成し遂げたのだ。


 それからしばらくして、春樹は妙な話を切り出した。

「和希。僕はこれから、独房に入ろうと思う」

「独房に……? お前、バーサーカー以外は殺してねぇだろ?」

 和希は度肝を抜かれた。彼が困惑する一方で、春樹は淡々と話を進める。

「壮介から貰った抗体で、僕の体内のウィルスは死滅した。それでも、僕の脳には後遺症が残っているんだ。僕は今でも、人を殺したいと思っている」

「春樹……」

「それに、ディカルトを倒したからといって、全てが片付いたわけではないからね。今度は僕が実験体になって、抗体を作っていかないといけない。全てのバーサーカーを治療できる……その日までね」

 彼の覚悟は本物だった。内心、和希はそんな彼を止めたい気持ちでいっぱいだった。それでも和希は、親友を応援せざるを得ない。二人はヒーローなのだ。

「頑張れよ……春樹。オレは前にも言った通り、自衛隊に入るつもりだ。いつかまた、会える時が来ると良いな」

「そうだね。それとね……僕にはもう一つ夢があるんだ」

「もう一つの夢?」

 和希は息を呑み、相棒の返答を待つ。春樹は希望に満ちた微笑みを浮かべ、己の夢を語る。

「いつか僕が殺人衝動を克服したら、バーサーカーの更生を支援するリハビリ施設を建てたいんだ。かつての天寺巧(あまでらたくみ)が抱いていた正義感も、きっと本物だと思うから」

「ああ、そうだな」

「それじゃ、僕はそろそろ行くよ」

 用件を伝えた春樹は、すぐにその場を去ろうとした。そんな彼を引き留めるのは、和希だ。

「春樹。ちょっと待て」

「和希?」

「今更だけど……リレー漫画、完結したぞ」

 和希は鞄から自由帳を取り出し、それを春樹に手渡した。春樹はそれを自分の鞄に仕舞い、満面の笑みを浮かべる。

「ついに、僕たちの物語が終わったんだね」

「ああ。オレたちは、ヒーローになれたんだな」

「それじゃ、またいつか」

 親友に別れを告げた彼は、己の拳を前方に突き出した。そんな彼につられて笑い、和希も拳を突き出す。二人の拳は、太陽を背にして重なり合った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ