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狂乱の失楽園  作者: やばくない奴
ディカルト
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絶望と希望

 春樹(はるき)たちは怒りに身を任せ、ディカルトへの攻撃を続けた。しかし、春樹がいくら歪みを正そうと、因果律は彼の宿敵の生存を確約する形で上書きされていく。和希(かずき)にいくら瞬殺されようと、ディカルトは瞬時に生き返る。

「さあ、諦めることだ。お前らがいかなる手を尽くそうと、この俺を倒すことはできない。お前らがバーサーカーウィルスの感染を広げ、この星を一掃するんだ」

 依然として、この男は二人を生かしておくつもりでいた。そこで和希は彼の前に立ち、こう言い放つ。

「春樹! オレが時間を稼ぐ! お前はコイツを倒すための、最強の武器を生み出してくれ!」

 さっそく、和希は眼前の標的の方へと飛び出し、強烈な打撃のラッシュをお見舞いした。

「もう少し、力の差を教え込む必要がありそうだ」

 ディカルトはその拳を片手で受け止め、それを力技で握り潰した。骨の砕ける音が鳴り響き、和希は歯を食い縛る。

「まだだ……右手が潰れても、オレには左手がある!」

 彼の突き出した左手は、強敵の全身を粉砕した。しかし相手は一筋縄ではいかない手合いだ。

「左手しか残されていない――――の間違いだろう」

 ディカルトはすぐに再生し、和希の左手首をへし折った。

「ふざけんな……クソッ!」

 もはや絶体絶命だ。このままだと、和希の体は使い物にならなくなるだろう。幸い、彼にはバーサーカーたちから吸収した力が残されている。彼はすぐに両手を再生させ、引き続きディカルトを殴り始めた。

「ふっ……鬱陶しい奴だ。だが、気に入った」

 そう呟くや否や、ディカルトは和希を蹴り飛ばした。和希は宙で体勢を整え、両足で地面に着地する。彼は迷いを捨てた眼差しで、目の前の強敵を睨みつけている。

「時間稼ぎさえできれば十分だ。オレは春樹を信じる! そして、信じる心が無意味じゃねぇってことをお前に教えてやる!」

「だがお前らは、壮介(そうすけ)が生き延びることを信じていた。その上で壮介は、惨めな最期を遂げたわけだ。お前らが浅はかな理想を掲げたことで、アイツは死んだ。これ以上何も失いたくなければ、せいぜい俺にかしずくことだ」

「ああ、オレはこれ以上、何も失いたくない。だけど、オレも春樹も、世界を見捨ててまで生き残りたいとは思ってねぇ!」

 一発、また一発と、彼はディカルトに拳を叩き込んでいく。無論、これが和希に分の悪い戦いであったことに変わりはない。それでも彼に退路はない。彼は戦い続けるしかないのだ。


 その傍らで、春樹は思考を巡らせている。

「どうすれば良い……どんな武器を生み出せば、アイツに勝てる……?」

 彼はすでに、相手を空間ごと斬ることを試した。因果の歪みを正した上で、なんでも切れる剣を用いることも試した。それでもなお無傷で笑っているディカルトの姿を前にして、彼は自信を喪失しかけていた。そんな中、和希はあの強敵と戦いつつ、春樹に助言する。

「理屈で考えるな、春樹! 中学時代にオレたちが思い描いた主人公は、理屈っぽい強さで敵を倒していたのか?」

 その言葉に、春樹は目を覚ました。彼の脳裏に、今までの記憶がよみがえっていく。


 中学時代、彼は和希と共にリレー漫画を描き、理想のヒーローを思い描いた。バーサーカーウィルスに感染した後、彼は自分の母親を殺された。彼は自らの手でゆかりとその家族を殺した。時に、彼は一番の親友を殺しかけたこともあった。その後まもなく霞海(かすみ)に殺されかけた時、彼は巧に救出された。


 そして今、全ての悲しみの元凶が目の前にいる。

「和希……僕に力を貸して欲しい」

 春樹は言った。

「ああ、もちろんだ」

 和希は深く頷き、彼に紫色の煙を注いだ。直後、春樹は己の力がみなぎっていくのを感じた。

「今度こそ、君を倒す。ディカルト!」

 彼がそう叫ぶと、その手に握られていた剣は眩い光を放った。

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