表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂乱の失楽園  作者: やばくない奴
三人の戦士
4/43

ヴィクト

 翌日、和希(かずき)はジャッカル隊の基地を訪ねた。基地は外装、内装ともに、コンクリートに囲まれた質素な外観をしている。彼がそんな場所を訪れた理由は、ただ一つだ。

「オレもジャッカル隊に入れてくれ」

 何やら彼は、バーサーカーと戦うことを決意したようだ。霞海(かすみ)は深いため息をつき、彼の真意を伺う。

「どういう風の吹き回し? なるべく一般人は巻き込みたくないんだけど」

「昨日、春樹から連絡があった。アイツ、ジャッカル隊に入ってバーサーカーと戦っていくらしいな。だが、このままではいつお前がアイツを殺すかわかったもんじゃねぇ。だから、オレもアイツと一緒にバーサーカーを狩る」

「……帰って。ジャッカル隊は、誰にでも務まるものじゃない」

 彼女の中には、明確な線引きが存在する。彼女はバーサーカーを憎む一方で、一般人は守り抜くという考えを持っているようだ。しかし、ここで引き下がる和希ではない。

「じゃあ、どんな奴ならジャッカル隊に入る資格があるっていうんだ? 試験でもなんでも、攻略してやるよ」

 そう言い放った彼は、真剣な顔つきをしていた。霞海は再びため息をつき、隊員の名を呼ぶ。

優也(ゆうや)。説明して」

 彼女に呼ばれ、優也がその場に現れる。その風貌は相変わらず容姿端麗で、かつ穏やかな顔立ちをしていた。彼は優しさに満ちた微笑みを浮かべ、和希に話しかける。

「ジャッカル隊に入るには、先ず『ヴィクト』になるための手術を受ける必要があります」

「ヴィクト……?」

「その名はヴィクトリー――――つまり勝利から来ています。ヴィクトはバーサーカーウィルスの影響を受けず、なおかつバーサーカーと同じ力を使えます。言うならば、ヴィクトはバーサーカーと戦うスーパーヒーローのようなものです」

 つまるところ、和希はそのヴィクトとやらになれば、ジャッカル隊に入隊する資格を得られるようだ。

「だったら、今すぐオレに手術を受けさせてくれ」

 和希は迷うことなくそう言った。しかし、その手術は決して誰にでも受けられるものではない。

「手術に成功するか否かは、その人の素質次第です。手術に失敗した者は、廃人と化してしまいます」

「一度廃人になったら……?」

「もう二度と、元には戻れません。とりあえず、実際に見てもらった方が早いでしょう。ついてきてください」

 優也は和希を連れ、大きな収容施設へと足を運んだ。



 収容施設の一室は、まるで保育園のような内装をしていた。

「ぶーんぶーん!」

 和希の目に最初に止まったのは、飛行機の玩具を振り回して遊ぶ中年男性の姿だ。

「ぷっぷー!」

「おひめさま! たすけにきたよ!」

「がおー!」

 ある者は車の玩具、またある者は人形、他には怪獣の玩具で遊ぶ者などがいた。そして彼らは皆、成人済みと見受けられる容姿をしている。部屋の隅には児童書を読む者もいれば、教育番組を見て楽しんでいる者もいる。粘土を捏ねて遊ぶ者もいれば、好きな玩具を取られて号泣している者もいる。


 このような異様な光景を前にして、和希は息を呑んだ。狂気に戦慄を覚えている彼に対し、優也は言う。

「ご理解いただけましたか? 彼らは皆、ヴィクト化の手術に失敗した者たちです。ヴィクト化の手術を受けるということは、彼らのようになる覚悟を背負わなければならないということです」

 とても正気の沙汰ではない。しかしいずれにせよ、和希は手術を受けない限りバーサーカーと化してしまう可能性に晒され続けることとなる。もはや彼に選択の余地はない。

「ありがとう。えっと、名前は……」

天宮優也(あまみやゆうや)です」

「天宮先生。オレは腹を括った。どうか、手術を受けさせてくれ!」

 それが彼の選択だ。

「わかりました。では、こちらも死力を尽くしましょう」

 優也は和希の心意気を買い、手術を引き受けた。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ