攻略の糸口
二人は春樹の家に向かった。さっそく春樹は意識を集中させ、一冊の書物を作り出す。
「これはなんだ?」
和希は訊ねた。無論、この書物はディカルトの攻略に必要不可欠な存在である。春樹は答える。
「これはディカルトについて書き記された本だ。奴を倒す上で、僕たちは奴の弱点を把握しておく必要がある」
もはや闇雲に武器を作るだけでは、あの男を倒すことはできない。和希は本を見つめ、春樹は黙々とページをめくり始めた。そこにはディカルトの出自や、彼が過去に振るってきた猛威なども記されていた。和希は生唾を呑み、感想を述べる。
「アイツ……すでにいくつかの星を支配してやがるのか。地球はあくまでも、アイツの手に入れようとしている星の一つに過ぎないんだな」
彼らの宿敵にとって、地球は特別な星ではない。あの男にとって、地球は天然資源を採取できる数多の土地の一つに過ぎなかった。春樹は更に本を読み進めていき、ディカルトのことを調べていく。
「己の生存を確約する形で、因果律を常時自動調整している……?」
常軌を逸した記述を前に、彼の手が止まった。その意味をよく理解していない和希は、首を傾げながら質問する。
「つまり……どういうことだ?」
「この世界は、奴が死ぬようなことがあっても、その事実そのものが捻じ曲がるようにできているということだ」
「ふざけんな……そんなの、反則じゃねぇか……」
簡潔な説明により記述の意味を理解した和希は、やり場のない怒りを覚えた。しかし今この瞬間にも、バーサーカーウィルスの感染者はその数を増している。彼らに迷っている暇などない。
「何はともあれ、奴を不死身たらしめている原理は解明できた。これは紛れもなく、大きな一歩のはずだよ」
「まあ、そうだな。今から、奴を倒すための武器を考えるぞ」
「それなんだけど、僕はもう思いついたよ」
春樹はすでに、次の策を考えていた。
「でかしたぞ、春樹! それじゃ、明日にでもアイツを……」
そう和希が言いかけた時である。
「いや、その前に数日ほど、バーサーカーを狩り尽くしたい」
どういう風の吹き回しか、春樹は一見血迷ったようなことを口走った。
「そんな悠長なことを言ってる場合かよ! 殺人衝動があるのはわかるけどよ……もう少し我慢できねぇのか!」
和希は険しい剣幕で怒鳴った。しかし春樹の提案には、暦とした理由がある。
「和希。僕たちに残されたイデアの力は、ごくわずかだ。しかしジェネス星人には、他者に力を分け与える力がある。つまり裏を返せば、ジェネス星人には力を吸収する力もあるんじゃないかと思うんだ」
その推測が正しければ、二人は今よりも更に強くなれる状況にあるということだ。同時に、その状況はイデアの力が消えると同時に終わってしまうものでもある。春樹の真意を理解し、和希は不敵な笑みを浮かべる。
「確かにそうだな、春樹! まだイデアの力が残ってるうちに、バーサーカーを狩り尽くさねぇとな!」
「ああ、そのつもりだ。今の僕たちの力では、まだゾディアックとリーサルフィストの力を強化することはできない。ディカルトに勝つには、更なる力が要るはずだ」
「流石だよ、春樹」
そうと決まれば、彼らが起こすべき行動は一つだ。
二人はすぐに街中に赴き、バーサーカーを狩り始めた。
そして彼らの予想した通り、二人に倒されたバーサーカーたちの体からは紫色の煙がにじみ出てきた。春樹たちはその全てを吸収し、みるみるうちに戦闘能力を高めていった。
「まだまだ……こんなものじゃ、アイツを倒すことはできない」
「壮介に分け与える分まで、たくさん力を蓄えておかねぇとな!」
春樹は剣、和希はメリケンサックを用い、迫りくる無数の敵を次々と倒していく。
二人はそんな調子で、三日間もバーサーカー狩りに励んだ。




