創造力
翌朝、メシア隊の三人は廃墟のビルに集まった。イデアという戦力を失った今、彼らがディカルトを倒すのは至極厳しい状況だ。
「あんな化け物……どうすれば……」
春樹は頭を抱えた。彼らが今相手にしているのは、今までの標的とは一線を画する存在だ。そこで壮介は、己の推論を述べる。
「ディカルトは元々、地球を支配するためにウィルスを使うという考えに至った。そして、その発想にたどり着けるということは、ジェネス星人の間でもウィルスは脅威として知られている……ということになる」
つまるところ、彼が言いたいことはただ一つだ。
「要するに、ウィルスなら通用するかも知れねぇ……ってわけか?」
和希は訊ねた。しかし、壮介の推測はあくまでも可能性の域を出ない。
「ああ。だが、あくまでも僅かな可能性だ。アイツはイデアを殺す時に、ウィルスの類を使わなかった。つまりジェネス星人にはウィルスが通用しない……という仮説も成り立つ」
最悪の場合、ディカルトには弱点など無い可能性すらあり得るだろう。三人は必死に思考を巡らせ、様々な案を共有した。
真剣な話し合いの末に、和希は一つの希望にたどり着いた。
「春樹。オレとお前が昔描いたリレー漫画、今なら役に立つんじゃねぇか?」
彼の一言に、春樹たちは表情を変えた。そして春樹は、親友の発言の意図を瞬時に理解する。
「そうか。僕たちは己のイメージした武器を生み出せる。つまり、最強のヒーローが使う武器をイメージすれば……」
「そういうことだ。今までのオレたちにはぶっ飛んだ武器を作れなかったが、今のオレたちはイデアの力の一部を引き継いでいる。おそらく、今のオレたちに作れねぇもんはねぇ!」
「和希。今すぐに君の家に行こう。リレー漫画を読み返して、武器のイメージを思い出すんだ」
思い立ったが吉日だ。二人は壮介を連れ、すぐに目的地に向かった。
それから数十分後、三人は和希の家に着いた。彼らは真剣な表情で自由帳を開き、リレー漫画を読み返していく。
「懐かしいな、春樹。まさかオレたちの漫画が世界を救う鍵になるなんて、当時は思いもしなかったよ」
「そうだね、和希」
漫画に目を通していく中、二人は思い出に浸った。彼らがまだ中学生だった当時、退屈な現実は狭く、夢に満ちた空想は無限大だった。ページをめくり進めていく最中、突如和希の手が止まった。
「お、この武器良いな。空間を切り裂く剣『ゾディアック』か。お前が使えよ、春樹」
「僕が……ゾディアックを」
「ああ。ディカルトの奴も、異空間に閉じ込められたら何もできねぇはずだ!」
勝利への道筋が見えてきた。問題は、残る二人の武器である。
「俺たちの武器はどうする? 同じ武器でも良いが、俺は剣を使いこなせないぞ」
壮介は剣を振ったことがない。したがって、彼には他の武器を作る必要がある。無論、和希には案がある。
「オレはまだ現役で色々思いつくぞ。例えば一撃必殺のグローブとかな。名前はリーサルフィストだ!」
「俺の武器はどうする?」
「絶対に千切れないワイヤーで良いだろ。名前は……」
彼は頭を悩ませ、壮介の武器の名前を考え始めた。壮介は呆れたようなため息をつき、冷めた発言をする。
「別に名前なんか要らないだろ」
「要るだろ! ロマンがねぇと鮮明なイメージも湧かねぇだろ! なあ春樹、何か良い案はあるか?」
「勝手にしろ……」
彼は特に、スーパーヒーローに対する憧れなど抱いていない。一方で、春樹は壮介の話に対して乗り気だ。
「アラクノメタル……とかどうかな? 蜘蛛の金属という意味なんだけど、ちょうど蜘蛛の糸のようにワイヤーを伸ばすからさ」
「お、カッケェな! お前のセンスも衰えてねぇじゃん、春樹! 採用だ!」
和希は春樹のアイディアを採用した。




