力の差
ディカルトは体術を駆使し、反撃を開始した。彼の打撃や蹴りは、春樹たちの武器を瞬時に破壊してしまう。その強靭な肉体はまさに、攻守を兼ねていると言える。この時、イデアの体には、すでにノイズが走り始めていた。彼女の寿命が尽きるのも、もはや時間の問題である。
メシア隊の四人は、一斉に彼の方へと飛び掛かった。ディカルトは春樹と壮介の足首を掴み、それを勢いよく振り回す。これにより、和希とイデアは後方に吹き飛ばされ、ビルの残骸に叩きつけられてしまう。
「同胞の誼みだ、イデア。先ずはお前から楽にしてやろうかねぇ」
ディカルトは冗談めかしたような声で言った。彼はイデアとの間合いを瞬時に詰め、彼女の腹に何発もの打撃を叩き込む。それから彼は、彼女の顎を勢いよく蹴り上げる。この一撃により、イデアは上空に飛ばされたが、ディカルトの猛攻はまだ止まらない。
「仲間に見守られながら逝けるなんて、最期としては上出来だねぇ」
彼はそう呟き、相手の頭上に瞬間移動した。彼が己の右手を高く上げるや否や、その先からは黒い稲妻をまとった球体が生み出される。何らかのエネルギーのような見た目をした球体は、甲高い音を響かせながら膨張していく。
「終わりだ……イデア!」
球体から、常軌を逸する威力の光線が放たれた。その衝撃波は地上にまで届き、瓦礫の山は波打っていた。春樹、和希、壮介の三人は、その場に伏せながら地面にしがみついた。彼らの体に、砂利混じりの暴風が容赦なく襲いかかる。もはやイデアに、助かる術はない。
「後は託したよ……皆!」
そう言い残した彼女は、紫色に発光する煙に姿を変えた。その煙は三つに分離し、春樹たちの体に入り込んでいく。その様を前にして、ディカルトは依然として余裕を保っていた。
「さぁてと……お前らを殺すつもりはないが、少しばかり力の差というものを教え込んだ方が良さそうだ」
この期に及んで、彼は春樹たちを利用し続けるつもりらしい。現に、今のメシア隊が彼に打ち勝つのは現実的とは言えない状況だ。それでも春樹たちは、戦意を喪失しなかった。
「ディカルト……君は僕たちに、想像したものが具現化する力を与えてしまった」
「そしてオレたち人類の想像力というものは、アンタの想定を遥かに凌駕したものだ」
「俺たちには鮮明にイメージできる。君の最期が!」
無論、彼らの勝利を確約する策があるわけではない。これは紛れもなく無謀だ。
「フハハハハ! 俺の圧倒的な力を前にすりゃあ、そんなものは無意味だ!」
ディカルトの笑い声は、無人の街に響き渡った。彼がフィンガースナップをするや否や、空は黒い雲に覆われた。雷鳴が轟き、横殴りの豪雨が降り注ぐ路上で、春樹たちは歯を食いしばって身構える。
直後、彼らの肉体は何発もの雷に貫かれた。
三人は力尽き、膝から崩れ落ちた。ディカルトは春樹の眼前に瞬間移動し、胸ぐらを軽々と持ち上げる。春樹の肉体は、みるみるうちに回復していく。ディカルトは彼の体を放り投げ、今度は和希と壮介も回復させる。宿敵の思わぬ行動に、春樹たちは怪訝な顔をした。無論、この行動には大いに意味がある。
「お前らが生きている限り、バーサーカーウィルスの感染は拡大する。少なくとも、俺がこの星を手に入れるまでは、お前らも生きていられるわけだ」
そう告げたディカルトは、瞬間移動によってその場を去った。最大の敵に惨敗した春樹たちは、底知れぬ悔しさを感じている。
「ふざけんな! 何もかもが、アイツの思い通りなのかよ!」
和希は激昂した。彼に続き、壮介も怒りを露わにする。
「数年にわたって人類を虐げてきたような奴が笑う結末なんて……俺は絶対に認めない!」
圧倒的な力量差を見せつけられた後でもなお、彼らの闘志は消えなかった。




