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狂乱の失楽園  作者: やばくない奴
ディカルト
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博打

 数日後、メシア隊はとある公園に集結した。(たくみ)を倒した今、彼らが倒すべき相手は、ついにディカルト一人だけとなった。


 春樹(はるき)は言う。

壮介(そうすけ)。君だけは、何があっても最後まで生き残らないといけない。バーサーカーウィルスへの抗体を持っているのは、君だけだから」

 彼の意見に、和希(かずき)とイデアも頷いた。壮介は少し考え、それから春樹に質問する。

「いざという時は、逃げろってことか?」

「もちろん。そうでないと、この世界の皆が困るからね」

「……わかった。そういうことなら、俺は自分の命を第一に考える」

 壮介は人類にとっての最後の希望だ。例えディカルトを倒しても、抗体が用意できなければ意味はない。

「それじゃ、行こっか」

 イデアはそう言うと、その場にいる全員をテレポートさせた。



 四人が移動した先は、荒廃した街だった。辺りには腐敗した血肉が散らばり、バーサーカーウィルスのもたらした惨状を物語っていた。そして四人の目の前には今、彼らの宿敵の後ろ姿が見える。

「これはこれは皆さんお揃いで」

 ディカルトは大きな伸びをし、背後へと振り向いた。彼に向けられる視線はいずれも、怒りを帯びたものだった。

「ディカルト……キミのしたことが、いかに人道に背くことかわかってる?」

 イデアは訊ねた。ディカルトは己の後ろ髪を掻きむしり、受け答える。

「ジェネス星人であるお前が地球人を庇うということは、連中はさぞ他の生物の命を重んじる生き物なんだろうよぉ。きっと、品種改良も畜産業も、ひいては動物実験もない……それが地球という楽園なんだろう」

 それは紛れもなく、地球人への皮肉を込めた言葉だった。その言葉に、春樹たちは何も言い返すことができなかった。それでも彼らは、決して戦意を喪失しない。春樹は己の手元に剣を生み出し、こう語る。

「そりゃ、地球は楽園なんかじゃないさ。だからこそ命ある者は、どんな手を尽くしてでも世界の理不尽に抗うんだ。僕たちは生きている――――それだけで、君に抗うには十分すぎるよ」

 それが彼の導き出した答えだ。彼の圧倒的なオーラを前にしてもなお、ディカルトは依然として笑っている。

「フハハハハ! 恐れ入ったぞ……春樹。覚悟としては上出来だねぇ。だがいかなる覚悟も、勝算が伴わなければ無謀と同じだ」

「ああ、無謀だとも。生きることは、絶え間ない博打の連続だから」

「博打……かぁ。無力な人間の考えそうなことだねぇ。お前らに何ができるか……見せてみろ!」

 ついにメシア隊は、ディカルトと戦うこととなった。


 春樹たちはいつものように、各々の武器を装備した。イデアは無数の光の塊を上空に生み出し、その全てをディカルトの身に降り注がせた。

「今だ!」

 壮介は彼の身をワイヤーで拘束し、電気を流し込む。続いて、和希はディカルトの前に現れ、何発もの打撃を加えていく。

「行け! 春樹!」

「ああ」

 和希の背後から飛び出してきた春樹は、光を帯びた剣を勢いよく振った。その刀身はディカルトの身に勢いよくぶつかるが、刃が通る気配はない。今のところ、彼らの攻撃はまるで相手に通用していないようだ。春樹たちはめげずに攻撃を繰り返していったが、ディカルトは無抵抗のまま平然と佇んでいる。その余裕はさながら、そよ風を浴びているが如しだった。


 そこでイデアは、春樹たちに指示を出す。

「今から、キミたちの脳内にイメージを送る。ウチらで力を合わせて、それを生み出そう」

 その提案に三人は頷いた。彼らは力を合わせ、上空に巨大な円盤を作り出す。円盤からは眩い光線が放たれ、無人の街を一瞬にして更地に変えた。


 そして砂煙が風にかき消された時、そこには無傷のディカルトの姿があった。

「これが人類の未来を背負う者たちの全力かぁ」

 彼は気怠そうな声で呟いた。

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