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破滅願望

 それから春樹(はるき)たちは、(たくみ)との死闘を繰り広げた。巧の振り回すヌンチャクは、剣やメリケンサック、ワイヤーなどを弾き、辺りに金属音を響かせていった。彼の圧倒的な強さに歯が立たず、メシア隊の三人は半ば一方的に傷を負っていく。このままでは、彼らが戦死するのも時間の問題だ。


 もはやイデアに迷っている暇はない。

「そろそろ、ウチの力に耐えられるかもね」

 彼女はそう呟き、紫色に発光する煙のようなものを春樹たちに注ぎ込んだ。その瞬間、大いなる力を得た彼らは、俊敏な動きで巧を惑わせ始めた。

「なぜ君は、共通の敵の存在を知っていながら、非バーサーカーとの共存を諦めるのかな?」

 そう訊ねつつ、春樹は眼前の強敵の脇腹に切り傷をつけた。続いて、和希(かずき)が巧の背後を取り、拳を前方に突き出す。

「アンタにはもう、守りてぇ奴はいねぇのか?」

 彼の突き出した拳は、相手のこめかみを穿った。巧が身構えたのも束の間、彼のすぐ目の前には真っ白に発光したワイヤーが飛び込んでくる。

「俺も、刀真(とうま)も、ゆかりも……こんな戦いを望んではいない!」

 壮介(そうすけ)が声を張り上げたのと同時に、高圧電流が巧の体に襲い掛かった。


 巧は憤る。その怒りは、死闘による痛みから来るものではない。

「おじさんはかつて、バーサーカーの社会復帰を願い、そのための協会を立ち上げた! しかしこの国は、一所懸命に己の殺人衝動と向き合ってきた同胞たちを皆殺しにした! ああ、こんな戦いは誰も望まない! だからこそ、おじさんが戦う他ないんだ!」

 それは彼の魂の叫びだった。その気迫に圧倒され、春樹たちは息を呑む。巧は己の周囲に銃を持ったロボットの兵隊を作り出し、反撃を開始した。ロボットの軍勢は春樹たちを取り囲み、次々と発砲していく。周囲のロボットを切り倒しつつ、春樹は嘆く。

「ものを壊しても、まるで気持ちよくならない。やはり、命を奪わないと……僕は満たされない」

 例え殺人衝動を抑えていても、彼はバーサーカーだ。命を奪うことに快感を見いだした彼は、もう元には戻れないだろう。無数の銃弾を浴び、全身から血を流してもなお、彼は殺生に飢えていた。その傍ら、壮介は機械の軍勢にワイヤーを巻き付け、それらに内蔵されたコンピューターを高圧電流によって破壊していく。

「この世界を壊した先に、君は何を望むんだ……天寺巧(あまでらたくみ)! それで全てを失うのは、君自身でもあるんだぞ!」

 彼の言い分はもっともだ。無論、巧自身もそのくらいのことは理解している。それでも彼には、後先のことを勘定に入れるような余裕はないのだ。

「それでも! この世界に一矢を報いなければ、安らかに眠ることもままならぬというものだ!」

 そう叫んだ巧は、己の周囲に何機ものドローンを生み出した。それぞれの機体は自律して飛び回り、レーザー光線を連射していく。春樹たちは咄嗟に盾を作り、各々の身を守る。当然、防戦一方では相手を討つことはできない。そこで和希は考える。

「ロボットもドローンも機械だよな? だったら……!」

 彼はその場に、小規模の電波塔のようなものを生み出した。その先端は駅構内の天井に突き刺さっており、今この場所で生み出せる限界の大きさをしていることがうかがえる。直後、ロボットの兵隊とドローンは次々と爆発し、周囲には数多の部品が飛び散った。春樹たちは力を合わせ、巨大な砲台を作り出す。

「終わりだよ……天寺巧」

 春樹の一言を合図に、砲口からは辺り一帯を光に包み込むほどのレーザー光線が発射された。巧は断末魔を上げつつ、眩い光の中で塵と化した。


 メシア隊の勝利だ。

「終わったな……春樹」

「そうだね、和希」

 和希と春樹は、妙に無気力気味なフィストバンプをした。壮介はその場にしゃがみ込み、深いため息をついた。

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