表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/43

戦う理由

 霞海(かすみ)が気づくと、周囲には花園が広がっていた。蝶が舞い、小鳥が歌うその場所で、彼女は辺りを見回した。

(たくみ)は……どこだ……?」

 先ほどまで、彼女は強敵との死闘の最中だったはずだ。そんな彼女の背中を、一人の男が抱きしめる。

「もう頑張らなくても、良いんじゃないか?」

 熊狩刀真だ(くまがりとうま)。その声に耳を疑い、霞海は息を呑んだ。しかしどういうわけか、彼女は今、安堵を覚えている。バーサーカーであるはずの刀真からは、一切の殺気が感じられなかった。

「刀真。アタシ……今すぐ戻らなきゃ。アタシがやらないといけないことがあるんだよ!」

「春樹たちを信じたらどうかな。霞海はもう、十分戦ったよ」

「……少し、歩きながら考えよっか」

 霞海は刀真の腕をほどき、彼の手を握った。彼女はその手を引き、花園を徘徊し始める。その場には彼女たち二人以外、誰もいないようだ。霞海の横顔を見つめつつ、刀真は言う。

「バーサーカーウィルスが流行ってから、色々なことがあったね。人々がいがみ合ったり、争ったりしてきたけど……案外、皆今のようなひと時を取り戻したかっただけなのかも知れないね。もちろん、ボクたちも」

 彼の話に対し、霞海は相槌を打っていく。

「そうだね。平和を信じない人間はいても、平和を望まない人間はいないもんね」

「例え世界がどうなろうと、ボクはキミに救われて欲しい。霞海がなんのために戦ってきたのかはわからないけど、こんな幸せがこの先ずっと続くのなら、もう帰らなくても良いんじゃないかな」

「うん。そうだね。もう少しだけ、ここで羽を休めていこうかな」

 彼女は屈託のない微笑みを浮かべ、刀真の頬に接吻した。



 *



 巧の目の前では今、霞海が倒れている。その全身は酷く負傷しており、彼女が衰弱死するのも時間の問題であった。そんな中、彼女はたった一言だけうわごとを呟く。

「刀真……」

 そんな言葉を残し、彼女はその場で息を引き取った。何やら彼女は、死の間際に夢を見ていたらしい。その死に様を目の前にして、巧は嬉々とした笑みを浮かべる。

「ははは! ついに、ついに積年の恨みを晴らせた! おじさんはずっと、この時を待っていたよ! 愛しき同胞たちよ! 仇は討ったぞ!」

 彼からしてみれば、霞海は最大の宿敵だ。そんな彼女を自らの手で仕留めたことは、彼にとって最大の喜びであった。


 そんな中、彼のもとには三人の男と一人の宇宙人が現れた。

「待たせたね……天寺巧(あまでらたくみ)

「オレたちは、アンタが壊そうとしている世界を守る!」

「俺たちにできないことはない!」

 春樹(はるき)たちだ。彼らに続き、イデアは言う。

「キミがウチらの仲間になってくれないか、密かに期待していたんだけどね。説得なんか通用しないだろうし、春樹にも、和希にも、そして壮介にも頑張ってもらうよ」

 彼女はすぐに体から光を放ち、それを三人に注ぎ込んだ。春樹たちの中で、大きな力が湧き上がってくる。その傍ら、巧は震えながらうつむいていた。彼は険しい表情で、声を張り上げる。

「アンタたちには、おじさんの気持ちはわからないだろうな! おじさんはディカルト様に忠誠を誓った! もはやこの世界を壊すことでしか、おじさんの傷は癒えないんだ!」

 案の定、彼は説得の通用する相手ではなさそうだった。春樹は剣を構え、和希(かずき)はメリケンサックを装備し、壮介(そうすけ)は己の周囲に高圧電流を帯びたワイヤーを生み出す。そして彼らは、各々の想いを口にする。

「君はもう、バーサーカーのために戦ってきた男なんかじゃない。結局は何もかもが、利己的な行いだったんだね」

「アンタはバーサーカーの代弁者を気取って、己の憎しみを正当化してきただけだ!」

「俺たちの――メシア隊の心は、君が思っているものより遥かに高尚だ!」

 三人は、一斉に巧の方へと駆け寄った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ