徒党
それは数日後――――とある空き家でのことである。イデアに看病されていた和希は、無事に無傷の状態にまで回復した。しかし、当のイデアが力尽きるのはもはや時間の問題だ。
「急がねぇとな……イデア」
「そうね」
イデアは限りある力の一部を使い、自身と和希をテレポートさせた。
和希たちはジャッカル隊の基地に到着した。そこで彼らを待っていた者は、霞海だった。
「春樹について、アンタはどう思う?」
彼女は訊ねた。その質問に対し、和希はこう答える。
「アイツ? オレのマブダチだよ。今も昔もな」
命の危機に晒されてもなお、彼は春樹を親友とみなしていた。霞海は呆れたようなため息をつき、忠告する。
「もう春樹と関わるのはやめた方が良い。彼がアンタの知るような男ではなくなるのも、もはや時間の問題だから」
彼女がそう考えるのも無理はない。現に春樹は、和希を殺そうとしたのだ。それでも和希は、彼のことを許さずにはいられなかった。
「そうだとしても、オレは春樹を見捨てない。悪いのはディカルトだ……アイツじゃねぇんだよ」
「そんなことはわかってるよ。だけど、それはアイツを野放しにして良い理由にはならないよ」
「だったら、オレがアイツを見張るよ! もう二度と、アイツが過ちを繰り返さずに済むようにな」
この様子では、和希は何を言われても考えを曲げないだろう。
「話にならないね。アンタはもう、ジャッカル隊には必要ない。せいぜい、他所で春樹に殺されてくるんだね」
ついに説得を諦めた霞海は、彼を基地の外に締め出した。和希はすぐに携帯電話を手に取り、トークアプリを起動する。彼が連絡する相手は、もちろん春樹だ。
「壮介を連れて、美魂公園に来てくれ。オレとイデアも今から向かう」
そんなメッセージを送信し、彼はイデアと共に集合場所へと向かった。
それからしばらくして、美魂公園には四人の人物が集結した。和希はベンチに腰を降ろし、三人に提案する。
「霞海はもはや信用できねぇ。だったらジャッカル隊なんかやめて、オレたちで徒党を組まねぇか?」
もはや彼らには、それしか道が残されていないだろう。春樹は和希に拳を見せ、不敵な笑みを浮かべる。
「賛成。もう霞海のことは放っておいて、僕たちでディカルトを倒そう」
そう宣言した彼の拳に、和希は己の拳を軽く当てた。続いて、壮介とイデアも彼らに同意する。
「俺も賛成だ。元々、あの女のことは気に食わなかったしな」
「ウチらはこれから、メシア隊を名乗っていこっか。皆で戦って、皆で生き残ろうね」
この日、地球の危機を前にして、新たな徒党が結成された。髪を微風になびかせつつ、春樹は今の心境を語る。
「僕がバーサーカーになってから、胸糞の悪いことばかりだった。正直、こんな世界から逃げ出したいと、僕は何度もそう思ったんだ」
「春樹……」
「だけど今は、この世界で生き延びたいと思う。ディカルトの思い通りにさせるものか。最後まで、全力を尽くそう」
今の彼に迷いはない。
「ああ、そうだな!」
「俺にできることなら、なんでも手伝うよ」
春樹の強気な態度を前にして、和希と壮介は頬を綻ばせた。
*
その頃、ビーストファングの基地には、ディカルトが訪ねていた。
「よぉ、おっさん。やはりバーサーカーを殺すのは気が乗らないか?」
それが彼の第一声だ。巧は深いため息をつき、彼と話し始める。
「いや、おじさんは腹を括ったよ。春樹と壮介はバーサーカーだがね……それでも敵だ」
「割り切ってるじゃないか。大人としては上出来だねぇ。そこでお前に、一つ提案がある」
「提案……?」
「お前の望みはなんだ? 俺に忠誠を誓えば、なんだって思いのままになる」
「忠誠を誓う……アンタにか……?」
思わぬ提案に、巧は生唾を呑んだ。




