真実
その日の昼、ディカルトの同胞と思しき女は、ジャッカル隊の基地に赴いた。彼女が敵か味方か――――それは霞海たちにはまだわかり得ないことだ。彼女は来客用の椅子に腰を降ろし、自己紹介をする。
「ウチはジェネス星から来たイデア。キミたちから見たら、宇宙人だね」
どうやら彼女は、少なくともディカルトと同じ地球外生命体らしい。緊迫した空気の中、霞海だけは目を輝かせていた。
「え? 宇宙人? 日本語上手だね! ジェネス星の文明ってどれくらいのレベルなの? 地球に来た理由は? 地球の食べ物で好きなのとかある?」
妙に食い気味だ。とてもではないが、いつもの彼女から想像のつく姿ではない。春樹は少し呆れ、彼女を制止する。
「隊長。あまり宇宙人を困らせるものじゃないよ」
「おっと、すまないね。こう見えてもアタシは、宇宙人やUMA、オーパーツなどの類が大好きなんだ。あ、神や幽霊は信じてないよ? だけど宇宙人やUMAは、その存在を科学では否定しきれないんだ。それになんといっても……」
「静かに。これじゃイデアの話を聞けないよ」
いつになくテンションの高い霞海に、彼は呆れるばかりだった。気を取り直し、イデアは話の本題に入る。
「バーサーカーウィルスは、ジェネス星人が地球を支配するためにばら撒いたものなんだ。もちろんウチは反対したけれど、国の決めたことはウチ一人では覆せなくてね。だけどキミたちと協力すれば、我々が地球人と共存できる可能性があると見たんだ」
「うん、うん。アンタは良いジェネス星人で、悪いジェネス星人たちがアタシたちをこんな目に遭わせたんだね!」
かろうじて聞き手に回っている霞海だが、依然としてその気分は高揚しているままだ。そんな彼女に対し、イデアは過酷な現実を突きつける。
「ヴィクト――――その名前の本当の意味は犠牲者。ヴィクトはバーサーカーウィルスに感染したまま、それを無自覚に体内で培養したり変異させたりするんだ」
その言葉に、霞海の表情は一変した。和希は近くの壁を殴り、怒りを露わにする。
「ふざけんな! オレたちはバーサーカーウィルスと戦っていた一方で、むしろ感染の拡大に利用されてきたってことかよ!」
彼が憤ったのも無理はない。ヒーローに憧れ、決死の覚悟で手術を受けた彼が、実際には凶悪な宇宙人の駒にされていたのだ。重苦しい空気が立ち込める中、イデアは淡々と話を続ける。
「その通り。ウチはこんな悲劇が起こらないよう、必死に母星の連中と戦ってきたんだけどね……『あの男』の手によって異空間に封印されて、今からさかのぼること五年間は自由に動けなかったんだ」
「あの男……?」
「ディカルト――――この星では、天宮優也という男性に擬態しているジェネス星人だね。ディカルトは優也を殺し、自分が優也に成り代わることでこの星に溶け込んでいたんだ。元々、バーサーカーウィルスを撒いて地球を支配するというのも、彼の出した案だった」
「先生が……オレたちの敵だってのか?」
「とにかく、伝えたいことは伝えたよ。ウチはディカルトとの戦いで生命力を消耗しているし、封印も完全に解けたわけじゃない。ウチが寿命を迎えて死ぬ前に、皆でディカルトを止めなければならない!」
人類の敵は、国家でもバーサーカーでもない。今この瞬間、霞海たちは人類共通の敵を見いだした。無論、同じ部屋で拘束されている壮介もまた、彼女たちと同じ気持ちだ。
「なあ、霞海。俺にも戦わせてくれよ。この恨みを晴らすには、そのディカルトって奴を倒すしかないだろ」
そう言い放った彼の瞳は、底知れぬ闘志に満ち溢れていた。
その時だった。
「君たちは……いや、お前たちは、多くを知りすぎた」
突如霞海たちの前に姿を現したのは、優也もといディカルトだった。




