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狂乱の失楽園  作者: やばくない奴
天寺巧
21/43

陽性反応

 霞海(かすみ)たちが病院に着くや否や、そこにいた人々は一斉に殺し合いを始めた。この光景を前にして、霞海は生唾を呑んだ。

「何が……どうなっているの?」

「わからねぇ……とりあえず抗体を打つために、コイツら全員気絶させねぇと!」

「そうね。後ろは任せたよ……和希(かずき)

 互いに背中を預けた二人は、バーサーカーの大群と戦い始める。先ほどの戦いで疲弊していた彼らには、もう充分な体力が残されていない。

「もしかしたら、殺してしまうかも知れないね」

「構うものか! どのみち、コイツらに抗体が効くかどうかもわからねぇんだぞ!」

「アタシもそう思う。この数相手に、麻酔銃では太刀打ちできないね。殺すつもりでかからないと……」

 和希は周囲の標的を殴り飛ばし、霞海は銃を乱射していく。しかしバーサーカーウィルスが流行しているご時世では、病院を訪れる者の数も多い。そこで霞海は、己の手元に手榴弾を生み出した。生み出されたものはすでにピンの抜けており、今にも爆発しそうな有り様だ。

「伏せて……和希!」

「あ、ああ!」

 隊長の指示通り、和希はその場に伏せた。直後、霞海は前方へと手榴弾を投げ、眼前の人だまりを蹴散らした。続いて、彼女は次の手榴弾を二つ作り、左右の敵陣を蹴散らす。最後に彼女は後方へと振り返り、背後から迫っていた敵勢も爆炎で一網打尽にする。


 そんな攻防の末に、彼女は一先ずその場にいる全てのバーサーカーを気絶させた。


「後は抗体を打つだけだね」

 霞海はアタッシュケースを開き、注射器を取り出した。彼女は待合室に倒れているバーサーカーたちに、抗体を注射していった。



 *



 翌日、水成(みずなり)の死は世界中で報道された。同時に、新型バーサーカーウィルスの発生もメディアで報じられ、人々を恐怖と混乱に陥れた。そこで霞海は、和希と話をする。

「新型のウィルスであれば、ヴィクトであるアタシたちにも感染しているかも知れないね。現に、昨日はアタシたちが病院に着くや否や、周囲の人間がバーサーカーと化したわけだもの」

「ふざけんな。一体、オレたちが何をしたって言うんだよ……」

「とにもかくにも、先ずは検査を受けてみよう。アタシたちが陽性かどうかは、現時点では断言できないから」

 今まで、二人は自分たちをバーサーカーウィルスの感染と無縁の存在だと信じてきた。その条理は今、新型バーサーカーウィルスの発生によって覆ろうとしている。

「そうだな。もう一度、病院に行くぞ」

「いや、そんなことをしたら感染を広げてしまうことになる。アタシが検査キットを用意しておいたから、今この場で検査をしよう」

「ほう、準備が良いな。流石、隊長だ」

「そうと決まれば、さっそく検査するよ」

 霞海は棚を漁り、そこから検査キットを取り出した。二人は検査キットの穴に唾液を垂らし、結果が浮かび上がってくるのを待つ。



 それから約十分後――――二つの検査キットは陽性反応を示した。



 霞海は目を疑った。

「アタシたちが……感染者? だけど新型ならすぐに症状が出るはずだし、今殺人衝動に駆られていないのはおかしいはず。まさか……」

「まさか……なんなんだよ」

「アタシたちは旧型のバーサーカーウィルスにも感染していたのかも知れない。症状が出ないだけで、アタシたちも感染を拡大させていたのかも」

 それがもし事実であれば、由々しき事態である。

「ふざけんな……こんなことがあって良いのかよ!」

 絶望と怒りに呑まれ、和希は険しい表情をしていた。



 その頃、とあるビルの屋上には、ディカルトの同胞と思しき怪人が佇んでいた。彼女はスマートフォンを操作し、水成の死や新型バーサーカーウィルスの発生にまつわるニュースを見ていた。

「もうここまで進んでいる……これはまずい」

 彼女はそう呟き、その場から消えた。

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