表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂乱の失楽園  作者: やばくない奴
天寺巧
19/43

二人のバーサーカー

 翌日、優也(ゆうや)はジャッカル隊の基地を訪ねた。

「今この瞬間も、バーサーカーは増加し続けています。ここは一つ、近くの総合病院に抗体を届けませんか?」

 彼は提案した。無論、霞海(かすみ)の答えは決まっている。

「賛成。すぐにでも行こう」

 思い立ったが吉日とはよく言ったものだ。しかし彼女たちは、一つ問題を抱えている。

壮介(そうすけ)の監視は誰に任せるんだ?」

 和希(かずき)は訊ねた。そこで案を出すのは、優也である。

春樹(はるき)さんに監視を任せましょう。彼を病院に連れて行っても、かえって感染が拡大するだけでしょう」

 一見、これは至極真っ当な人選だ。しかし霞海には、一つ心配している点がある。

「バーサーカーを二人も残して、万が一殺し合いに発展したらどうすれば……」

 バーサーカー狩りによって欲求を満たしているとは言え、春樹もまたバーサーカーの一人だ。迂闊に監視の目から遠ざけるのは得策とは言えないだろう。優也もその危険性をよく理解していた。それでも彼がこの提案をしたことには、暦とした理由がある。

「僕は春樹さんを信じます。今まで同じジャッカル隊の隊員として、彼は良い仕事をこなしてくれました。今のところ、彼は標的以外の人間を殺めていません。いかがでしょうか」

 彼は春樹を信じている――――それが理由だ。優也に続き、和希も言う。

「オレも、春樹なら信用しても良いと思う。アイツは標的以外を殺すような奴じゃねぇからな」

 例え春樹がバーサーカーと化しても、和希はその親友だ。霞海は深いため息をつき、隊員たちに指示を出す。

「春樹と優也は壮介を見張って。アタシと和希は抗体を届けに行く。ところで、もう抗体は用意できているの?」

 通例、抗体の精製には数ヶ月の期間を要する。いくら優也が優秀な名医であっても、その常識を破ることは不可能であろう。当然、彼は抗体を用意している。

「実は壮介さんが人体実験に使われていた時、僕は知らず知らずのうちにその一端に関与させられていました。こちらが抗ウィルス薬になります」

 そう言うと彼は、何錠もの錠剤を取り出した。これで準備万端だ。

「行くよ……和希」

「ああ、了解だ」

 霞海は和希を連れ、ジャッカル隊の基地を後にした。



 二人の去った静かな部屋で、全身を拘束された壮介が口を開く。

「なあ、君……」

「……東春樹。春樹で良い」

「春樹もいつか、アイツらに殺されるんじゃないか?」

 春樹からしてみても、それは決して考えの及ばないことではなかった。

「そうかも知れないね。でも、和希と天宮(あまみや)先生は僕の味方をしてくれると思う」

「君は愚かだな。俺からしてみれば、バーサーカー以外の人間を信用する理由なんてないんだけど」

「それでも、和希は親友だし、天宮先生は立派な医者だ。それに、万が一僕が見境なく人を殺すようになったら、その時は殺して欲しいと思う」

 バーサーカーの一人として、春樹はいずれ死ぬことを覚悟していた。壮介は呆れたようなため息をつき、質問を続ける。

「君にこの国を守る意味はあるのか? 自ら望んでバーサーカーになる者なんかいないのに、国はバーサーカーを見つけ次第駆除している。俺たちの同胞も、たくさん殺された。それでもこの国を……世界を尊いと思うのか?」

「それでも、僕は世界を護りたい。かつて僕と和希が思い描いたヒーローなら、同じ境遇に立たされてもそうするだろうから」

「君は狂っているな」

 結局、彼には春樹の言い分が理解できなかった。その横から、優也が口出しをする。

「壮介さん。君は世界を救えるかも知れません。そうなれば、もう二度と君と同じ思いをする被害者は出ないでしょう」

 その言葉に、壮介の表情が変わった。彼は今までの自分やゆかりが受けてきた仕打ちを思い出し、拳を震わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ